昨日の東京新聞・本音のコラム欄には、「防衛と防災」と題して、斉藤美奈子氏が書いていたが、私は見逃していた。今日のコラムの担当者、青山学院大学長・三木義一氏がベタ褒めであったので、読んで見た。やはり、素晴らしい内容であったので紹介したい。
防衛と防災
斉藤美奈子
大勢の人の命がいっぺんに奪われ、生活が破壊される事態といえば、戦争と自然災害だ。
戦後70年、ひとまず日本は(国内での)戦争は経験しないできた。その一方でこの国は、ほぼ毎年、なんらかの大災害に遭遇している。2011年の東日本大震災以降だけでも、激甚災害に指定された災害は30件に近い。その大部分は梅雨前線や台風による暴風雨や豪雨である。
国の最大の責務が「国民の生命と財産を守ること」であるなら、他国からの攻撃よりも南の海から列島めがけてやってくる台風への備えが重要なはずである。しかるに予算配分はどうか。19年度の防衛予算は過去最高の5兆2千6百億円。防災・減災・国土強靱化予算は1兆3千5百億円。前年度の補正予算をあわせても2兆4千億円だ。防衛予算のたった半分。
九月の台風15号に続いて東日本一帯を直撃した台風19号は「想定外」の「今まで経験したことのない」といった形容がもう通用しないことを示した。戦争は外交の努力で回避もできるが、自然災害は避けられない。
災害大国を思えば、自衛隊を災害救助中心の隊に再編したっていいくらいである。国際貢献も災害支援に特化させれば、それが最大の安全保障になるのに。
(文芸評論家)
防衛と防災
斉藤美奈子
大勢の人の命がいっぺんに奪われ、生活が破壊される事態といえば、戦争と自然災害だ。
戦後70年、ひとまず日本は(国内での)戦争は経験しないできた。その一方でこの国は、ほぼ毎年、なんらかの大災害に遭遇している。2011年の東日本大震災以降だけでも、激甚災害に指定された災害は30件に近い。その大部分は梅雨前線や台風による暴風雨や豪雨である。
国の最大の責務が「国民の生命と財産を守ること」であるなら、他国からの攻撃よりも南の海から列島めがけてやってくる台風への備えが重要なはずである。しかるに予算配分はどうか。19年度の防衛予算は過去最高の5兆2千6百億円。防災・減災・国土強靱化予算は1兆3千5百億円。前年度の補正予算をあわせても2兆4千億円だ。防衛予算のたった半分。
九月の台風15号に続いて東日本一帯を直撃した台風19号は「想定外」の「今まで経験したことのない」といった形容がもう通用しないことを示した。戦争は外交の努力で回避もできるが、自然災害は避けられない。
災害大国を思えば、自衛隊を災害救助中心の隊に再編したっていいくらいである。国際貢献も災害支援に特化させれば、それが最大の安全保障になるのに。
(文芸評論家)