飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

読書メモ(電気推進ロケット入門)

2007-01-27 23:05:28 | 佐鳥新の教授&社長日記
書 名:電気推進ロケット入門
著 書:栗木恭一  荒川義博
出版社:東京大学出版会

日本で初めての電機推進に関する本格的な教科書である。日本の電気推進の創始者である栗木恭一先生(東京大学名誉教授)ならではの深みのある名著といえる。電機推進の開発現場レベルからみても使える例題が豊富な点が本書の特徴といえる。


第1章 序論
 電機推進の概念と歴史

第2章 電機推進の基礎
 ロケット推進の基礎的考え方と電気推進の性能に関する基本概念の説明


第3章 放電およびプラズマの基礎

 電離気体の基本的な考え方(統計力学的扱い)、もっと密度の高い状態である電磁流体力学的な扱い方、たとえばプラズマ波動などが説明されている。
 電気推進の現象論を扱うに当たって特に重要なプラズマ乱流拡散でもあるボーム拡散に関する解説がある。


第4章 アークジェットスラスタ

 アークジェットスラスタとはアーク放電によりガスを加熱膨張させることで推進力を得る推進器である。電磁流体としての基礎方程式系およびエンジンの性能を決めるファクターがもれなく説明されている。このタイプのエンジンの実用化に向けた推進剤の選び方に関する考察は宇宙業界なれではの興味深い思想が伺える。


第5章 イオンスラスタ
 
 イオンエンジンの原理と基礎についての解説がある。イオンエンジンは土星より遠方の惑星探査のエンジンとして用いるならば絶大な威力を発揮する推進機といえる。
(私が大学院生の時代にはプリンストン大学のジャーン先生の古典的な書籍しかなかったものだが、わかりずらい概念を日本語で説明してくれているので、羨ましい限りである。)


第6章 MPDスラスタ

MPDスラスタとは、電磁プラズマ加速スラスタ(Magneto-Plasma-Dynamic Thruster)のことで、十分な電力を供給できれば燃焼を伴うロケットエンジンを超えた能力を発揮することができる。


第7章 ホールスラスタ

旧ソ連で実用化された歴史ある推進機に関する理論と国内での研究事例が紹介されている。


第8章 パルス型プラズマスラスタ


第9章 その他の推進
 
 レジストジェット、FEEP(フィープ)、太陽熱発電など。
 (8章と9章は業界的な流行の説明といってよいだろう。)


第10章 電機推進ミッション解析

第11章 電機推進ミッションの実例