飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

読書メモ(植物生産における計測・制御・情報)

2007-02-16 22:37:08 | 佐鳥新の教授&社長日記

書 名:植物生産に計測・制御・情報
著 書:(社)計測自動制御学会 編
出版社:コロナ社

1988年に出版された古い本ではあったが、植物の生育計測に関する基本原理や計測器の作り方などが丁寧に書かれており、(私のような)新参者には有用な書籍といえる。

私達は宇宙技術であるハイパースペクトル技術の応用として植物の光合成量を数値化する計測器を開発したのだが、この当時には光合成量の数値化には、①炭酸ガス交換量、②蒸散量、③気孔開度(気孔が何μm開いたかという計測値)の3種類を用いていた。

また、画像計測により葉の障害部を可視化する手法として、正常部と障害部の分広範車両が大きく出る0.67μmの波長(クロロフィルaの吸収帯)を用いていたことは興味深かった。(リモートセンシングに用いられる正規化植生指数(NDVI)はこういう研究背景から生み出されたのかもしれない。)

植物栽培用の光源の比較結果が興味深かったので紹介する。クロロフィルaの吸収帯に最も感度のある高圧ナトリウムランプを使用してサラダ菜を生育した場合、蛍光灯で生育させたものよりも黄色味を帯びて形状品質が劣るという。RGBのバランスが意外に重要だと書かれていた。そういえば植物工場の野菜を目玉商品にしている京都のレストランの経営者も「LEDを使って様々な照明を試したが、結局、蛍光灯が一番良かった」と話していたこととも一致している。こういう微妙なところが農業の難しさでもあるのだろう。



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第1部 総論
第1章 バイオテクノロジー
第2章 システムとしての生物
第3章 植物生産と計測・センサ
第4章 制御
第5章 情報化
第6章 計測機器と信頼性技術
第7章 機械化
第8章 アグリビジネスの将来

第2部 ほ場・施設(従来の農業からのアプローチ)
第1章 総論(1) 栽培の生理と計測・制御
第2章 総論(2) 農業環境調節工学
第3章 作物の栽培
第4章 果樹の栽培
第5章 タバコの栽培
第6章 ウンシュウミカンの加温ハウス栽培
第7章 施設環境における計測・制御
第8章 システム園芸実験施設(高知大学農学部の場合)
第9章 太陽エネルギー有効利用温室
第10章 エキスパートシステムによる作物病害診断
第11章 画像による植物診断
第12章 土壌水分の計測
第13章 放射温度の計測
第14章 微気象的方法による光合成・蒸発散の計測
第15章 農生産の熱物性
第16章 農産物内の物質移動
第17章 機械化(1)
第18章 機械化(2)

第3部 工場(工業的アプローチ)
第1章 総説 植物工場
第2章 植物工場の制御理論
第3章 クローン植物の大量生産
第4章 人工制御環境下での栽培特性
第5章 植物工場内照明
第6章 種苗工場におけるロボット
第7章 植物工場におけるセンサについて
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