A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 534 芸術の神聖さという神話

2017-07-11 05:51:53 | ことば
 芸術を取り巻いて主に(誤って)伝えられる神話は、芸術の神聖さという神話と、芸術を通じて神聖な世界とかかわる可能性の神話である。他の神話や一般的な信念のほとんどは、この芸術の神聖さに由来している。アーティストになるか否かというときには、次の五つの相互に関連した神話が特に誤った方向へと導く。

1 本物の芸術をつくることは永遠に賞賛され続ける。他の報酬がないとしても、アーティストにはたくさんの個人的満足がある。
2 芸術における才能は天賦のもの、あるいは神が与えたものである。
3 芸術における才能はキャリアの終盤にのみ現れる。
4 芸術における成功はもっぱら才能と献身にかかっている。
5 芸術においては誰もが平等なチャンスを持っている。
 こうして、学位免状やOBネットワークなどがものをいう他の分野では考えられないチャンス、そしてアーティストが持っているこの種のチャンスについての神話と思い違いが、アーティストを目指す者たちを騙し続ける。


ハンス・アビング『金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか』山本和弘訳、grambooks、2007年、203頁。

 補足すれば、近年の芸術界も学位免状やOBネットワークが主流にはなっている。それはそれで民主的な要素が失われているとは言えるかもしれない。