A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 519 土の下の見えない部分

2017-06-19 23:10:06 | ことば
企業も、学校も、部活や暴力団から政党や官僚組織に至るまで、わが国の集団は、多かれ少なかれ、土の下の見えない部分に、パワーハラスメントを含んだ人間関係を介在させており、そのパワーハラスメントがもたらす同調圧力を根っことして、上部構造を形成している。

小田嶋隆『ポエムに万歳!』新潮社(新潮文庫)、2016年、180頁。

日本の集団、組織で生きるということは、もれなくパワハラがついてくることだ。私はいまだに集団が馴染めない。




memorandum 518 分数

2017-06-18 05:53:52 | ことば
僕たちは決められた正しさや、スタンダードに向かっています。4分の1+4分の1の数式を解けるのは普通ですが、赤い大きなリンゴ4分の1と青い小さなリンゴ4分の1をどう足せるのかと、具体的に疑問をもった人は数学の世界から外れます。例外をのぞけばアーティストは皆、分数で立ち止まってしまった人たちです。しかし私はその方向に可能性を感じています。

北川フラム『アートの地殻変動』美術出版社、2013年、325頁。

わたしも分数で立ち止まってしまった・・・。
決められた正しさやスタンダードに懐疑的になってしまう。

【ご案内】写真( )

2017-06-16 12:42:16 | お知らせ
この度、大阪・The Third Gallery Ayaでに「写真(的)瞬間-吉田初三郎の鳥瞰図から映像メディアまで-」と題して、お話をさせて頂きます。
開催中の笹岡啓子展「PARK CITY」と合わせてお楽しみ頂けると幸いです。


第7回 
写真(的)瞬間
-吉田初三郎の鳥瞰図から映像メディアまで-
http://824ttga.tumblr.com/
日 時|2017年6月24日(土) 18:00–19:30
講 師|平田剛志 ( 美術批評)
場 所|The Third Gallery Aya
会 費|700円(1ドリンク付き/税込)
予約先|tamaki(at)thethirdgalleryaya.com / 06 6445 3557

The Third Gallery Aya 若手支援プロジェクト「824」のメンバー藤安淳、宇山聡範、福田真知は、「写真( )」というタイトルのもと、作家、評論家、キュレーターなど、写真にまつわる活動をしている方々を主にお招きし、定期的にトーク/レクチャーイベントを行っています。
第7 回目は、美術批評家である平田剛志氏をお招きし「写真( 的)瞬間 -吉田初三郎の鳥瞰図から映像メディアまで-」を開催いたします。
人はこれまでに「出来事」を様々な方法を用い、いつの時代も次世代へ残そうとしてきました。それは、記号、図、伝承、文字、地図、絵画、詩、写真、映像など時代によって変化しています。近代になり写真や映像というメディアがその役割を担い、一瞬の出来事=瞬間を記録するようになりました。平田氏の専門である鳥瞰図もその「出来事」を伝える方法の一つです。今回のレクチャーでは、鳥瞰図や写真、絵画、映像などを切り口にお話を伺いたいと思います。
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写真と鳥瞰図は似ている。どちらも「それはかつてあった」決定的瞬間(The Decisive Moment )であり、写された、描かれたプンクトゥム( 細部)へと注視させるからです。なかでも大正から昭和初期にかけて活躍した吉田初三郎(1884-1955)の鳥瞰図は「写真的瞬間」を感じさせます。初三郎の鳥瞰図には観光地や都市、鉄道の変遷が大胆かつ緻密に描かれ、近代日本の風景が記録されているからです。また、初三郎は関東大震災や広島への原子爆弾投下など、歴史的=決定的瞬間も描いています。本講では、吉田初三郎の原爆鳥瞰図を中心に、その制作意図や刊行目的、絵画や映像における「写真的瞬間」や記録性とは何かについて考えます。(平田剛志)

お問い合わせ先
The Third Gallery Aya 
大阪市西区江戸堀1-8-24若狭ビル2F
TEL/FAX:06-6445-3557
www.thethirdgalleryaya.com
824ttga.tumblr.com

追記

「爆心地の鳥瞰図――吉田初三郎の『HIROSHIMA』」
平田剛志

写真は原爆投下の瞬間を記録できなった。1945年8月6日、アメリカ軍は広島に世界で初めて原子爆弾を投下した際、カラーフィルムで撮影していた。だが、そのフィルムは現像に失敗し、記録は失われた。私たちがよく知る原爆投下後のキノコ雲の映像や写真は、別の爆撃機に同乗していた物理学者・ハロルド・アグニューが8ミリフィルムで記録していた映像であり、原爆投下の瞬間ではない。つまり、写真は歴史的瞬間を記録できなかった。

対して、原爆投下の瞬間を描いた鳥瞰図がある。鳥瞰図とは、鳥のような視点で斜め上空から立体的に描かれる地図の一種である。観光案内図や社寺、テーマパークの案内図で見覚えがあるかもしれない。凄惨な出来事とは無縁の観光地や都市がパノラマに描かれる鳥瞰図に原爆投下の瞬間が描かれたとは驚きである。描いたのは大正から昭和初期にかけて日本全国の鳥瞰図を1600点以上描いたとされる画家・吉田初三郎である。これまで目に触れる機会が少なかった作品だが、『photographers’ gallery press』(2014年、photographers’ gallery)での特集「爆心地の写真 1945-1952」に復刻掲載され、椹木野衣氏(美術評論家)が寄稿するなど、その記録性と表現性に再評価が高まっている。

初三郎の描く鳥瞰図は、ただの「地図」ではない。見えるはずのない地点まで描く大胆な構図と緻密な描写、色鮮やかな色彩と季節や遠近感を逸脱した独創的な鳥瞰図だからだ。その個性的な作風が着目され、近年では「鳥の目から世界を見る」(ボーダレス・アートミュージアムNO-MA、2015年)、「種差——よみがえれ浜の記憶」(青森県立美術館、2013年、笹岡啓子も出品)、「ラブラブショー」(十和田市現代美術館、2009年、吉田初三郎×秋山さやかとのコラボレーション)などの展覧会に出品され、鳥瞰図(地図)を越えた創造性が、観客を魅了している。

本レクチャーでは、1949(昭和24)年に広島図書が出版した英文のグラフ誌『HIROSHIMA』に掲載された吉田初三郎の挿絵・原爆鳥瞰図を取り上げ、「写真的瞬間」が描画された鳥瞰図の記録性について考察する。合わせて、同書の制作経緯や目的、初三郎がなぜ挿絵を描いたのかについて整理し、初三郎が描いた鳥瞰図・挿絵9点について分析を行なう。また、発行元である広島図書がなぜ同書を刊行したのか、刊行時の時代状況も踏まえて、制作意図や目的を検証する。
そもそも写真と鳥瞰図は、ともに固有の場所を撮影ないしは描画することである。だが、8月6日の原子爆弾投下の歴史的瞬間においては、写真は「瞬間」の記録に失敗した。歴史的瞬間を描いた鳥瞰図を考察することで、「写真(的)瞬間」とは何なのか。「広島」を撮るとは何かについて考え、原爆表象だけでなく、歴史的事件や瞬間、出来事を記録、表現することの可能性と不可能性について考える機会としたい。


memorandum 516 「寝返りをうつ」

2017-06-15 12:14:46 | ことば
僕は、自由を求めて何かをするのではなく、不自由から逃げようとして何かをするタイプなんです。いつも自分のやっていることを「寝返りをうつ」ことに例えるのですが、人はずっと動かないで寝ていると床ずれを起こす。寝ていても、それを避けるためにもぞもぞ動いている。それっていいな、と思う。「みんな、向こうに行ったらユートピアがあるよ」という発想より、「じっとしているのが辛くてしょうがないから動く」ということの方に、自分の行動原理がある気がします。

糸井重里、北川フラム『アートの地殻変動』美術出版社、2013年、161頁。

今日もじっとしていられなくて、ギャラリーを回ってしまう。


未読日記1314 『〈もの派〉の起源』

2017-06-14 11:52:20 | 書物
タイトル:〈もの派〉の起源 : 石子順造・李禹煥・グループ〈幻触〉がはたした役割
タイトル別名:Mono-Ha: ISHIKO Junzo / Lee U-Fan / group "Genshoku"
シリーズ名:水声文庫
著者:本阿弥清
装幀:宗利淳一
発行:東京 : 水声社
発行日:2016.11
形態:265p, 図版 [32] p ; 20cm
注記:カバーに「水声文庫」の表示あり
   主要参考文献: p249-251
内容:
斎藤義重や高松次郎の影響で誕生したとされる〈もの派〉。だがそこには、美術批評家の石子順造とともに静岡で活動するグループ〈幻触〉の存在があった。〈もの派〉以上に〈もの派〉的な、独自の作品を作っていた〈幻触〉の活動を詳らかにし、〈もの派〉の真実に迫る!60年代美術史の真実。

目次

1 〈もの派〉とその起源
2 一九六八年春から一九六九年春の出来事
3 《位相‐大地》について
4 石子順造とその仲間たち
5 グループ〈幻触〉の存在
6 〈もの派〉と〈幻触〉の作品
7 現代美術の批評精神
8 石子順造と「丸石」


[付録]
李禹煥氏は答える——三つの疑問点をめぐる対話から
トリックス&ヴィジョン展と石子順造のこと 李禹煥×中原佑介
石子順造の思い出 鈴木慶則×李美那

主要参考文献
グループ〈幻触〉資料

「あとがき」に代えて

購入日:2017年6月14日
購入店:Amazon.co.jp
購入理由:
 Gallery PARC Art Competition 2017 #01「近藤 洋平:whereabouts」のレビューテキストのための参考文献として購入。
 以前に近藤氏とお話させて頂いた際、国立国際美術館で開催された「もの派—再考」展に影響をうけたという話を聞いたので、もの派について復習しようと考えた。残念ながら、日本ではいまだに「もの派」について入手可能な研究書がない状況だが、本書は一般で入手可能な数少ないもの派関連本である。なぜ関連本かというと、本書はタイトルに「もの派」とついているが、もの派につながる前進的活動をしたグループ〈幻触〉についての本であり、「もの派」の本ではない。くれぐれもご注意あれ。


未読日記1313 『物語の構造分析』

2017-06-13 21:17:55 | 書物
タイトル:物語の構造分析
タイトル別名:Introduction à l'analyse structurale des récits
著者:ロラン・バルト
訳者:花輪光
発行:東京 : みすず書房
発行日:2016.4第27刷(1979.11第1刷)
形態:219p; 20cm
注記:著者が指定した15編のテクストのうち8編を選んで収めたもの
   他の7編は沢崎浩平訳『旧修辞学』 (みすず書房既刊) 及び同じ訳者によるみすず書房から刊行予定の図書に収録
   [Selection 1]: 標題紙裏
   原注: p171-186
   訳注: p187-195
   裏ジャケットに著者の写真あり
内容:
「物語はまさに人類の歴史とともに始まるのだ。物語をもたない民族はどこにも存在せず、また決して存在しなかった。あらゆる社会階級、あらゆる人間集団がそれぞれの物語をもち、しかもそれらの物語はたいていの場合、異質の文化、いやさらに相反する文化の人々によってさえ等しく賞味されてきた。物語は、良い文学も悪い文学も差別しない。物語は人生と同じように、民族を越え、歴史を越え、文化を越えて存在する」

フランスにおける〈物語の構造分析〉は事実上、「コミュニカシヨン」誌、八号の物語の構造分析特集に始まると云ってよかろう。その巻頭を飾った、バルトの「物語の構造分析序説」は今や〈古典〉として名高い。この論文は現在においても、依然としてその重要性を失っていない。本書は、この記念碑的な労作をはじめ、批評家バルトの基調を示す「作者の死」「作品からテクストへ」、さらに、バルト的神話学ないし記号学の新しい方向を示す「対象そのものを変えること」等、八篇を収める。つねに変貌してゆくバルトの、60年代から70年代にかけての軌跡を明らかにする評論集。

目次
物語の構造分析序説
天使との格闘――「創世記」32章32-33節のテクスト分析
作者の死
作品からテクストへ
現代における食品摂取の社会心理学のために
エクリチュールの教え
逸脱
対象そのものを変えること

原註
訳註
訳者解題

購入日:2017年6月13日
購入店:丸善 京都本店
購入理由:
 京都・瑞雲庵にて開催された「アンキャッチャブル・ストーリー」レビューのための参考文献として購入。
「uncatchable(捕まえられない=わからない)」物語(story)というタイトルで思い出したのが本書だった。物語論は奥が深すぎて勉強している時間はないが、ひとまず本書でなにかヒントを得ることにしよう。


memorandum 515 プレイボール!

2017-06-12 14:41:36 | ことば
「場」ができると、そこで行われることは「遊び」なんですね。その「遊び」を「Play」と訳せるかは分かりませんが、野球を始めるときの「プレイボール!」っていう言葉の響きがとても好きなんです。「戦え!」と言っているわけではなく、何かが始まるワクワク感、人間の好奇心とかが、全て含まれているじゃないですか。
糸井重里、北川フラム『アートの地殻変動』美術出版社、2013年、158-159頁。

美術に「プレイボール!」のワクワク感、好奇心はあるだろうか。

未読日記1312 『風立ちぬ・美しい村』

2017-06-11 14:18:40 | 書物
タイトル:風立ちぬ・美しい村
シリーズ名:新潮文庫, 140, ほ-1-2
著者:堀辰雄
カバー装画:最上さちこ
発行:東京 : 新潮社
発行日:2013.6第118刷(2011.10第115刷改版、1951.1第1刷)
形態:233p ; 16cm
注記:年譜: p227-233
内容:
風のように去ってゆく時の流れの裡に、人間の実体を捉えた『風立ちぬ』は、生きることよりは死ぬことの意味を問い、同時に死を越えて生きることの意味をも問うている。バッハの遁走曲に思いついたという『美しい村』は、軽井沢でひとり暮しをしながら物語を構想中の若い小説家の見聞と、彼が出会った少女の面影を、音楽的に構成した傑作。ともに、堀辰雄の中期を代表する作品である。

美しい村
 序曲
 美しい村
 夏
 暗い道
風立ちぬ
 序曲
 春
 風立ちぬ
 冬
 死のかげの谷
注解 谷田昌平
堀辰雄 人と作品 中村真一郎
『風立ちぬ・美しい村』について 丸岡 明
年譜

購入日:2017年6月11日
購入店:大垣書店 本店
購入理由:
 むらたちひろ作品のレビューテキストのための参考文献として購入。
 むらたの旗や舟型の作品が「風」で動くものであることから、風について調べる。風といえばの思いつきで、大瀧詠一の「風立ちぬ」を聴き、その後に本書を思い出して、手にとってみた。