A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記615 『齋鹿逸郎展』

2012-06-10 23:36:56 | 書物
タイトル:齋鹿逸郎展 : 白と純白とのあひだ
別書名:Itsuro Saika : united continuous files 1960-1994
編集:米子市美術館
発行:米子 : 米子市美術館
発行日:1995.6
形態:149p ; 30cm
注記:展覧会カタログ
   会場・会期: 米子市美術館 , 1995.6.25-7.23
   年譜: p146-147. 文献: p148-149
目次:
あいさつ
「齋鹿逸郎の仕事」三好徹
作品(図版)
「白と純白とのあひだ―その後」齋鹿逸郎
「自作について(作品解説)」齋鹿逸郎
出品作品目録
年譜
主要参考文献

頂いた日:2012年6月10日
場所:Gallery ジ・アース
 ギャラリーの方より頂いた1冊。どうもありがとうございます。
齋鹿逸郎は、目黒区美術館で2007年に開催された「線の迷宮(ラビリンス)Ⅱ」で作品を見て衝撃を受けた覚えがある。鉛筆だけにより描かれる抽象性、精神性の高い絵画空間には、他作家と比較できない独自の境地に到達している。もっと展示が見られることを望む。


memorandum 074 矛盾

2012-06-08 23:26:08 | ことば
 精神がぶちあたるさまざまな矛盾、矛盾だけが現実のすがたであり、現実性の基準だ。想像上のものの中には矛盾はない。矛盾は、必然であるかどうかをみるためのものである。
シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵―シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄 (ちくま学芸文庫)』田辺保訳、筑摩書房、1995年、p.166.

矛盾を生きる。

memorandum 073 生

2012-06-06 23:58:20 | ことば
 わたしたちの生は、不可能であり、不条理である。わたしたちがねがい求めるものはどれをとっても、それぞれと関連した条件や結果と矛盾するし、わたしたちが提案する命題は、どれをとっても反対の命題を含んでおり、私たちの感情にはすべて、その反対の感情が入りまじっている。というのは、わたしたちが被造物であって神であり、しかも神とは限りなくことなる者であって、ただ矛盾そのものだからである。
シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵―シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄 (ちくま学芸文庫)』田辺保訳、筑摩書房、1995年、p.161.

わたしはわたしやあなたの矛盾、世界の不条理を否定しない。

未読日記614 『HANARART』

2012-06-04 23:15:08 | 書物
タイトル:奈良・町家の芸術祭HANARARTはならぁと ドキュメントブック2011
編集:奈良・町家の芸術祭HANARART実行委員会
発行:奈良県土木部まちづくり推進局地域デザイン推進課
発行日:2012.1
形態:80p: 21cm
注記:会期・会場:2011年10月8日(土)‐10月30日(日)今井(橿原市)、八木(橿原市)、五條新町(五條市)、三輪(桜井市)、宇陀松山(宇陀市)、郡山城下町(大和郡山市)、ならまち(奈良市)
内容・目次:
ごあいさつ
Schedule & Area
Art & Event
 今井
 八木
 五條新町
 三輪
 宇陀松山
 郡山城下町
 ならまち
 高取土佐
 初瀬
 田原本

頂いた日:2012年6月3日
場所:奈良県某所
 HANARART実行委員会の方より頂いた1冊。どうもありがとうございます。
美術館やギャラリー以外の場所で開催されるアートプロジェクトは、カタログを残さないと記録に残りにくい。作品は会期中のみ展示され、後にその場所に展示されることはほぼないからだ。と同時に、ドキュメントブックとしてプロジェクトの全体像が見えるような本の存在も求められるだろう。作品図版が中心となるカタログとは異なり、こちらは展覧会の裏側が伝わるような編集内容がふさわしい。今回頂いた本書は後者にあたる。
 本書は、昨年秋に奈良県の各地にある町家を会場として開催された「奈良・町家の芸術祭HANARART」のドキュメントブックである。膨大な展示やイベントの記録がこれまた膨大な写真とともに掲載され、情報量の多さに驚かされる。

未読日記613 『DAILY HOPE』

2012-06-03 23:41:22 | 書物
タイトル:DAILY HOPE MAKOTO MORIMURA:森村誠作品リーフレット
発行:Gallery OUT of PLACE
発行日:2012.6
形態:1枚 : 挿図 ; 26cm (二つ折り)
注記:展覧会カタログ
   会期・会場:2012年5月3日‐6月3日、TOKIO OUT of PLACE
         2012年7月13日‐8月12日、Gallery OUT of PLACE
   助成:平成24年度(第20期)公益信託大木記念美術作家助成基金
内容:
artist profile(English)
図版
森村誠の「HOPE/希望」を疑う:山中俊広(インディペンデント・キュレーター)

頂いた日:2012年6月3日
場所:奈良県某所
 執筆者の方より頂いた1冊。どうもありがとうございます。主に修正液を素材とした作品を制作する森村誠の「DAILY HOPE」展の展覧会リーフレット。

 今展では、英字新聞を素材に、H,O,P,Eの4文字以外の全ての文字を修正液で消去している。圧巻なのは展示形式である。約55枚の見開き新聞を床一面に敷き詰め、透明アクリル板で覆い、鑑賞者はその上を歩いて鑑賞することになるのである。
 今展でもある特定の文字を修正液で消去していく森村のおなじみの手法は継承されているが、選ばれた素材が英字新聞であることと床に敷き詰めて展示をしたことが、これまでとは異なる展開・意味を開示していた。
 森村のこれまでの作品では、地図や雑誌、書籍が文字を消去する対象として選ばれ、壁面に展示されることが多かった。そこでは、修正液で消されなかった文字が鑑賞者にとって読解/発見されるような展示手法であったように思われる。ネガポジのように、修正液で消された白い箇所が黒の印字を際立たせる効果があったためだろうか。

 対して、今展では床面に作品が敷き詰められ、その上を鑑賞者が歩くことになる。これにより、文字そのものよりも修正液の白の方が視覚において強く感じるのである。誌面には「H,O,P,E」だけが残されているにも関わらず、消された修正液の白の方が強いということ。そう、「H,O,P,E」とは目に見えにくいものなのである。
 事実、作品の上を何度も歩き、しゃがみ、見つめて目が移るのは、写真や広告ページのグラフィカルさである。被災地の被害を伝える写真、サッカーや野球、テニスなどのスポーツ、政治家や経営者の顔、天気図、クロスワード、広告など、どれもH,O,P,Eをかき消すかのように強い。つまり、写真やイラスト、広告は修正液をもってしても消去できないのである。
 圧倒的な文字の量を修正/消去することはできても、新聞紙面を賑わす写真や画像を前にしては修正液は無力である。消せない記憶や現実があるのが人生だ。森村は英字新聞を素材にその政治的、現実的な事実を突き付ける。鑑賞者は情報があふれるノイジーな誌面の上を歩きながら、「H,O,P,E」を探すだろう。少し見つけにくいが、「H,O,P,E」は私たちの足もとにあるのだから。

memorandum 072 パトス

2012-06-02 21:40:28 | ことば
 苦しむこと、教えられること、変化すること。入門者にとって必要なことは、何かを学び知ることではなく、自分の中にある変化が生じて、教えを受けるにふさわしい状態とされることである。
 パトスとは同時に、苦しみ(とくに、死にいたるまでの苦しむ)と変容(とくに、不死の存在へと変えられること)とを意味する。

シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵―シモーヌ・ヴェイユ『カイエ』抄 (ちくま学芸文庫)』田辺保訳、筑摩書房、1995年、p.140.

いつでも教えを受けるにふさわしい状態でいたい。

未読日記612 『放課後の展覧会』

2012-06-01 21:05:53 | 書物
タイトル:放課後の展覧会 : After school
編集・デザイン:片山和彦
キャラクターイラスト:辻井タカヒロ
翻訳:ダニエル・サストレ・デ・ラ・ベガ、エディー・チャン
発行:[出版地不明] : 「After school・放課後の展覧会」実行委員会
発行日:2010.5
形態:27p(おもに図版) ; 21×30cm
注記:展覧会カタログ
   会期・会場: 元立誠小学校 2009.05.23. - 2009.05.31.
   主催:「After school・放課後の展覧会」実行委員会
   出品作家:天野萌、碓井ゆい、木内貴志、木藤純子、佐川好弘、笹倉洋平、花岡伸宏、宮永甲太郎、ムラギしマナヴ、森田麻祐子、山口和也 
内容:
「ごあいさつ」木内貴志(「After school・放課後の展覧会」実行委員会 代表)
「アートの場としての不在なる学校」竹中悠美
[図版]
 天野萌 text 鹿島萌子
 碓井ゆい text 古川誠
 木内貴志 text 下門史幸
 木藤純子 text 酒井千穂
 佐川好弘 text 小吹隆文
 笹倉洋平 text 酒井千穂
 花岡伸宏 text 古川誠
 宮永甲太郎 text 右田湖南
 ムラギしマナヴ text 古川誠
 森田麻祐子 text 鹿島萌子
 山口和也 text 小吹隆文
略歴
 ARTISTS/TEXSTS/TRANSRATIONS
EVENT
「放課後の展覧会」 詩/菅樹誠 豊
謝辞

購入日:2012年6月1日
購入店:新風館2F「KUNSTARZT preview」展会場
購入理由:
 まだ私が東京にいた頃、たまたま京都に来ていたにもかかわらず、日程の都合で泣く泣く見れなかった展覧会。フライヤーを手にしたとき、これは見ねばと思ったのだが、その直感は当っていた。当時はほとんど知らない作家さんばかりだったが、いまではほとんどの方が大活躍されている。関西屈指の実力ある作家を集めた展覧会として、伝説的かつ金字塔とも言えるような展覧会である。
 会期後にカタログが完成し、いつくつかギャラリーなどで販売しているのは知っていたが、お値段が少し手を出しにくい価格で、なんとなく買いそびれていた。
 今回、たまたま今秋にオープン予定のKUNSTARZTのpreview展で本書が破格の価格で販売されており、ようやっと購入。日英バイリンガル、図版、テキスト、略歴とインディペンデントな企画ながら、カタログの完成度がとてつもなく高い。

 それにしても、京都移住後、本書に関わっているほとんどの方とお会いすることになるとは思いもしなかった。ご縁に感謝。