A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記198 「新世代への視点2008」

2008-08-05 23:59:12 | 書物
タイトル:画廊からの発言-新世代への視点2008
編集・デザイン:宇治晶、上田雄三(ギャラリーQ)
発行:東京現代美術画廊会議
発行日:2008年7月28日
内容:
東京・京橋、銀座の10の現代美術画廊にて2008年7月28日-8月9日まで開催された<-画廊からの発言-新世代への視点2008>の展覧会カタログ。

ギャラリーなつか-斉藤里香
コバヤシ画廊-ロー・セファン
ギャラリイK-菅野泰史
ギャラリー現-飯田真人
ギャラリー山口-水村綾子
ギャルリー東京ユマニテ-時松はるな
藍画廊-鈴木敦子
ギャラリー21+葉-諏訪未知
なびす画廊-利部志穂
ギャラリーQ-山内幾郎

各作家コメント、図版10点、作家略歴、記録・新世代への視点2006

入手日:2008年8月2日
入手場所:なびす画廊

10軒の画廊がそれぞれ40歳以下の作家を選抜し個展を開催する<新世代への視点>展の9回目。キュレーターがいるわけではなく、各画廊が選出を行なうので取扱い作家が異なり、10人の参加作家に共通性はないが、各画廊ごとの個性がでていると言えよう。
今回、10展見た上で印象に残ったのはなびす画廊の利部志穂だろう。ものが立つ/立たせるという彫刻の原理を現象化しえている充実した展示であった。使われている素材は日頃目にするような日常品だが、それら大量生産品がまとっている固有の特徴は解体・分割・断片化され、ものへと還元されたかたちで使用される。鑑賞者は空間をめぐり歩き、見ることが発見へと接続する出会いと創造の場がここにはある。
作家によると自身の作品は「知恵のようなもの」だと語っていたのが興味深い。ドアを開けておくために、なにかのものを置くとか、本を置くのにこれを置いたら倒れないとか、日常の中で遭遇するものを固定、設置するためのささやかな名もない試み。その場の空間にしか適用できない「もの」が求める空間との接続を「出会い」と仮に呼ぶとするなら、利部の仕事はまぎれもなくインスタレーションではなく彫刻である。
このような利部の空間の断片化・再構成の究極は家であろう。もちろん家そのものは展示できない。家そのものはないが、家が持っていた空気、雰囲気、ものに付加された名詞を剥ぎ取った上でなお成立する「家」を在りしめること。残念ながら写真でしか見ていないが、昨年、自身の住居所、表参道画廊、和光大学構内にて発表された「家を持ち替える」では、「家」そのものがテーマとなり、もうひとつの「家」を作り出していた。


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