A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記415 「カイガのカイキ」

2010-06-13 21:31:44 | 書物
タイトル:カイガのカイキ
編集:篠原誠司(足利市立美術館)
デザイン:本郷かおる
印刷:日野台印刷株式会社
発行:足利市立美術館
発行日:2010年4月10日
内容:
栃木・足利市立美術館にて開催された「カイガのカイキ」展(2010年4月10日~6月13日)カタログ。
A4判、88頁

ごあいさつ
「回帰する絵画」篠原誠司
本田和博
 テキスト:篠原誠司
 interview
 図版
上野慶一
 テキスト:篠原誠司
 interview
 図版
安井敏也
 テキスト:江尻潔
 interview
 図版
黒須信雄
 テキスト:江尻潔
 interview
 図版
平原辰夫
 テキスト:篠原誠司
 interview
 図版
岡田真宏
 テキスト:篠原誠司
 interview
 図版
内海聖史
 テキスト:篠原誠司
 interview
 図版
作家略歴
作品リスト
謝辞

頂いた日:2010年5月31日
出品作家の方より頂いた1冊。どうもありがとうございます。
 「カイガのカイキ」とは絵画の原点への回帰を意味するという(本書p.5)。あまりに壮大な大きな問いに驚くが、それゆえに近年稀に見る現代絵画の展覧会となっている。それは出品作家7名の名前を見ればわかるだろう。それなりに展覧会を見ていると思っていた私でも知らない作家が多いのである。ただただ無知を恥じるばかりだが、現代美術における絵画の原点への回帰というテーマを検証するにあたって、すでにポピュラーな作家の作品によって検証するより、(一般的に)知られざる現代作家を取り上げることはその無名性(神秘性?)ゆえに検討の価値があろうというものである。抽象的なテーマだが、わかりやすく要約してしまえば現代において絵画を制作するとはどういうことなのか、という意味だろうか。
 もちろん本展出品作家たちは、実力も技術もある作家たちである。実際のところ、「無名」と言うのは「一般的に」という意味であって、美術界においてはよく知られている方たちである。そのストイックかつ神秘的、超越的な世界観は、知られざる絵画の光景を見せてくれる。

 ところで、このような抽象的なコンセプトの展覧会においては、カタログや解説テキストなどが展覧会を見る際のサブテキストとして重要な位置を占めるように思う。その点で、本展カタログは配慮が行き届いているカタログである。各作家へのインタビューも採録され、制作へのモチベーション、制作行為と作品発表との関係を伺う知ることができる貴重な資料となっているからだ。
とはいえ、ひと通り読んでも、なぜこの7名の作家が選ばれたのか、依然として判然としない。また、イリュージョンの問題を作家個人の内的な世界観に還元している点はもう少し詳細な議論が必要な箇所かと思う。もちろんエルンスト・ゴンブリッチの『芸術と幻影』を始め大量の先行研究があり、カタログの小論で検討できる問題ではないことは事実ではあるが。
 ぜひ、数年後には「カイガのカイキ」パート2を開催して頂きたい。


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