A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記20 生誕100年 靉光展

2007-05-06 10:34:07 | 書物
タイトル:生誕100年 靉光展
編集:大谷省吾、松本透、有川幾夫、和田浩一、藤崎綾、角田新
出版社:毎日新聞社
発行日:2007年3月30日
内容:*同名展の図録。
 昭和の戦前・戦中期に、きわめて個性的な作品を描き、近代日本美術史上に大きな足跡を残した画家、靉光(あいみつ)。このたび彼の生誕100年を記念する回顧展を開催します。

 靉光(本名:石村日郎、1907-1946)は広島県に生まれました。1924(大正13)年に上京し、「池袋モンパルナス」と呼ばれた界隈で仲間たちと切磋琢磨しながら、自らの画風を模索していきます。その探究の果てに生み出された《眼のある風景》(1938年)や、細密で幻想的な一連の作品は、シュルレアリスムの影響を思わせつつも、けっしてその一言では片付けられない独自性と“謎”に満ちています。描く対象に鋭く迫り、写実を突き詰め、そして突き抜けた先に生み出された幻想。この類まれな境地に達した彼ですが、戦争によってその画業は途絶しました。召集を受けた彼は、終戦後まもなく上海で、わずか 38歳で戦病死したのです。

 現存する彼の作品は、必ずしも多くはありません。しかし、描く対象の本質をえぐり出すようなその作品の評価は、今日ますます高まっています。本展では、幻想的な作品をはじめ、応召前に残した3点の自画像など代表作を網羅し、約130点の作品を時代・傾向別に4つの章に分け、靉光の見つめたものを検証します。
(東京国立近代美術館ホームページより)

購入日:2007年5月2日
購入店:東京国立近代美術館ミュージアムショップ
購入理由:
現存作品が多くなく、東京での回顧展としては9年ぶり。以前、よく見ていた「眼のある風景」が代表作だが、それだけではなかった。よくある近代日本画家の展覧会かと高を括っていた私がまずかった。今回の展覧会を見進めるうちにそう感じた。まず、「父の像」というデッサンが始めに展示されているのだが、靉光10歳の頃の作品だという。ものすごい技術力である。最初の1点からぐいぐい引き込まれる。頭の中に作品が染み込んでくる。その後の版画かと思える超絶テクニックな墨画など、見ごたえのある作品が続く。「眼のある風景」の前後は須田国太郎を思わせ、ヒリヒリするような表現を見せてくれる。晩年の油彩画も絶句するほど、自立し、そこに「存在」している。
カタログも充実の出来である。近年発見された新資料を含めた資料も充実しているし、企画者大谷省吾氏の挑発するような論考は、議論を呼ぶかもしれないがあらためて作品を見ることの重要さを伝えてくれる。断言しよう。今年最重要な展覧会である。前期展示に見に行かれなかったことが悔やまれる。


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