A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記394 「ルノワール 伝統と革新」

2010-05-09 23:52:17 | 書物
タイトル:ルノワール 伝統と革新
編集:国立国際美術館国立新美術館ポーラ美術館読売新聞大阪本社文化事業部
翻訳:スタンリー・N.アンダソン、マーサ・マクリントク、シェリル・シルバーマン
翻訳協力:西山哲(株式会社インターパブリカ
デザイン:高岡健太郎(株式会社エヌ・シー・ピー)
印刷:日本写真印刷株式会社
発行:読売新聞大阪本社
発行日:2010年1月
内容:
「画家ルノワールの芸術的資質―ボヘミアン主義、ファンテジー、東方趣味、ロココ復興、田園牧歌と印象主義について」新屋鋪 透(財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館館長)

カタログ Catalogue
第Ⅰ章 ルノワールへの旅 The Journey to Renoir
第Ⅱ章 身体表現 Expressions of the Body
第Ⅲ章 花と装飾画 Flowers and Decorative Paintings
第Ⅳ章 ファッションとロココの伝統 Fashion and the Rococo Tradition

「伝統と革新のはざまに―光学調査で探るルノワールの絵画技法」内呂博之(財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館学芸員)
「ルノワールと日本人画家たち 言葉でたどる巨匠の面影」安來正博(国立国際美術館主任研究員)
「ルノワールの装飾画をめぐって」西野華子(国立新美術館主任研究員)
「ルノワールの少女たち ≪野原で花を摘む娘たち≫を中心に」岩崎余帆子(財団法人ポーラ美術振興財団 ポーラ美術館学芸課長)

ルノワール関連年譜
ルノワール関連地図
参考文献 Bibliography
作品リスト List of Exhibits

Renoir’s Creative Sprit: An Exploration of Bohemianism, Fantasy, Orientalism, Rococo Revival, Pastoralism and Impressionism, Toru Arayashiki
Renoir and Japanese Painters: A Master’s Visage in Words, Masahiro Yasugi
Renoir’s Decorative Paintings, Hanako Nishino
Renoir’s Girls, with a Focus on Girls Picking Flowers in a Meadow, Yoko Iwasaki
Between Tradition and Innovation: An Optical Study of Renoir’s Painting Techniques, Hiroyuki Uchiro
(本書目次より)

頂いた日:2010年4月16日
頂いた場所:国立国際美術館
プレスプレビューにて頂いた1冊。どうもありがとうございます。これまでの数少ない内覧会経験で初めてカタログを頂けた。この後、東京に行く用事があるにも関わらず、カタログをもらえたことがうれしくて、本の重さは気にならなかった。
ところで、頂いておいて失礼な話だが、お金を払ってまで買おうとは思わない展覧会だけに私にとっては貴重な1冊である。つまり、現代美術を中心に見ている人の本棚にルノワールの画集やカタログが並んでいることが想像しにくいようなものであろうか。それだけに一家に1冊ルノワールがあると格が上がるというものである。すべての掲載論文が英訳されるのもルノワール展だからこそ成せる気がする。

内容についてだが、ルノワールの装飾性に焦点にしぼり、光学調査のセクションを設けるなど、ただの時代順に展示される回顧展とは異なる構成が思いのほか功を奏している。売り絵の画家ではあるが、ヘタな現代美術などよりルノワールの方が見どころが多かったりするから古典というのは恐るべしである。当たり前だが、好きか嫌いかは別にして見ておいて損はしない。つまり、ルノワールのしたたかさや能天気な画風に呆れるにせよ、つまらない現代美術展を見るよりは、鑑賞後に言葉や感情が出てくる展覧会だという意味である。

ところで、現代においてルノワールが好きだと言う若者がもしいれば、たちまち失笑に付される雰囲気がある。それだけ現代では「ルノワール」と発することが喫茶店の名前ぐらいに軽くなってしまった。だが、久しぶりにルノワールの絵画を大量に見て、ネガティヴなイメージがついてしまったルノワール作品の「明るさ」に私は今さらながら怖さを感じてしまう。モネやマネ、セザンヌと異なり、ルノワールの絵画史における存在感は薄い気がするものの、この変わり映えのしない「明るさ」は堅牢で安定していると感じるのである。今の時代に必要なのはルノワールのような絵画なのかもしれない。


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