A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記292 「新国誠一 works 1952-1977」

2009-07-11 23:09:18 | 書物
タイトル:新国誠一 works 1952-1977
編集:国立国際美術館
編集協力:武蔵野美術大学美術資料図書館
構成:金澤一志
CD構成:松井茂
造本デザイン:山口信博+佐久間年春+大野あかり
発行日:2008年12月6日
発行:株式会社思潮社
印刷:三報社印刷株式会社
製本:誠製本株式会社
内容:
視るための詩・聴くための詩
1960年代の国際前衛詩運動<コンクリート・ポエトリー>の最前線で日本を主導した極北の詩人・新国誠一の全貌をあきらかにし、詩の可能性そのものを問い直す。幻の詩集『0音』の全篇を収録する決定版作品集。音声詩14篇を収めたCD付属。

「それは頁なのか、あるいは一枚のプレートなのか。新国誠一の視覚詩を前にして、私たちはそう問わざるをえない。もし頁であるとすれば、当然ながらそれは書物・頁・文字というセリーのなかに位置づけられることになるだろう。一枚のプレートであるならば、自立した白い矩形のフィールドそのものが直接的に対象化されなければなるまい。
 おそらくこの問いに対する確たる答えはない。むしろ彼の作品は頁であり、かつ矩形のフィールドでもあるというアンビバレントな両義性を宿しているというべきなのである」―建畠晢=本書解説より
(本書帯より)

仙台時代 1952-1962
詩集『0音』 1963
東京時代 1963-1977
空間主義東京宣言書:1968
ASA宣言書:1973
資料・解説
NOTE草稿/アルバム/著作一覧/年譜/関連文献一覧
付属CDについて
「矩形の聖域 新国誠一試論」建畠晢
「「雨」のおもむき」向井周太郎
「空間主義・音声詩・ことばのオブジェ」松井茂
「新国誠一の《具体詩》」金澤一志
収録詩一覧
(本書目次より)

購入日:2009年6月19日
購入店:リブロ 渋谷店
購入理由:
 昨年12月から本年3月まで大阪の国立国際美術館にて<新国誠一の《具体詩》―詩と美術のあいだに>展が開催された。チラシを見て、このような詩における果敢な試みはぜひ見てみたいと思ったが、遠方のため泣く泣くあきらめざるを得なかった。しかし、6月に武蔵野美術大学美術資料図書館に巡回されるということを知り、行きづらい武蔵美まで行ってきた。期待通り実に見応え十分な展示内容に、行った甲斐があった。
 とかく、「具体詩」「視覚詩」と言うと、前衛や実験性が強調されてしまう嫌いがある。だが、新国誠一の詩は見ておもしろく、かつ美しい。フォントや選択された文字(漢字)の造形性、余白のとり方を見ると、一般的な詩とそれほど変わらないことがわかる。そう、新国のベースにあるのは確実に「詩」なのだ。加えて、新国の視覚詩はドライな印象を与えるが、よくよく見れば(聞けば)ユーモアが漂い、清々しい印象さえ与えられる。言葉の、音の、シラブルのひとつひとつを慈しむように丁寧に扱っているからだろうか。その優しさが、温かさが「詩音」として伝わってくる。
 造本についても述べておきたい。本書はCDが付属されているのだが、その造本がすばらしい形態によって納まっている。CDの収納をどうするのか。CDブックと言われるものには必ずついて回るデザイン上の問題点である。CDケースを付属させれば、CDの収納は確保できるものの、購入者は本とCDを別々に置く可能性がある。かといって、CDを不織布ケースに入れて、本のどこかに糊付けで添付するというケースもある。しかし、これだと本を読む時にCD盤面の堅さがページをめくりにくくしたり、糊付けが弱くて不織布ケースが落ちてしまったり、と格好が悪い。このCD+本のデザイン上の難しさを本書はすばらしいデザインで解決している。その成果は本書を見て頂くしかないが、手にとって損はない。


最新の画像もっと見る

post a comment