A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記304 「寝るひと|立つひと|もたれるひと」

2009-08-07 23:20:18 | 書物
タイトル:寝るひと|立つひと|もたれるひと
企画・編集担当:東京国立近代美術館/蔵屋美香
翻訳:山本仁志
デザイン:森大志郎
編集:東京国立近代美術館
印刷:八紘美術
発行:東京国立近代美術館
発行日:2009年
内容:
「寝るひと・立つひと・もたれるひと」蔵屋美香(東京国立近代美術館)
図版8点
出品リスト

入手日:2009年7月24日
入手場所:東京国立近代美術館ギャラリー4
最初から余談ですが、夏の大型企画展<ゴーギャン展>は、もの足りない内容で残念でなりませんでした。会場は冷房がガンガンに効いていて寒く、出品数の半分程は版画作品で、油彩画の点数が少なく、ゴーギャンに関して新しい知見を得られるような構成・展示でもありませんでした。また、目玉の『我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか』(1897-98)の展示室前にプロジェクター2台による映像上映ブースが設けられているのも疑問でした。混雑緩和が目的だと思いますが(実際はそれほど人が入っていません)、実物の作品を見る前に予備知識を入れてから見るようにさせるような構成とは、いかにも「国立」美術館らしい発想かもしれません。さらに指摘すれば、その映像で参考作品として上げられている作品が会場にないのですから、展覧会の意義さえ問わざるを得ません。わざわざゴーギャンの最晩年の大作『我々はどこから来たのか~』を展示しておきながら、その大作を補完するような作品を同時に展示しないとは、研究とは一体何なのでしょうか。国立近代美術館で近年行われた琳派、ゴッホ、藤田嗣治といった大型展では、賛否両論あるにせよ出品数とそれに見あった構成がありました。だが、今展にはそれがなく、一点豪華主義の展覧会という内容でした(なお、ゴーギャンの作品が悪いという意味ではありません)。

しかし、そんな不満もすばらしい常設展で帳消しになりました。とくに常設展会場2階のギャラリー4で開催されているテーマ企画展<寝るひと・立つひと・もたれるひと>は、研究テーマと作品が、的がしぼられていてわかりやすく、新しい視点を提供してくれました。丁寧に作品を分析しながら、最後には絵画の問題へと収斂していく流れはとても清々しいものでした。しばしば思うことですが、常設展は自身の美術館で収蔵している作品であり、日ごろの研究成果が反映されますが、企画展はそうはいきません。自身の美術館で収蔵もしていない作家の展覧会をやる時など特にそうです。その美術館で収蔵している作家と絡めるなり、近代というテーマ設定を設けるなどしないと、この美術館でやる意味が見えてこないでしょう。もちろん、ゴーギャンの有名作品が東京で見られるのはいいことではあるのですが・・。


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