A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 292 幸福にならねばならない

2016-05-19 20:51:52 | ことば
幸福になるのは、いつだってむずかしいことなのだ。多くの出来事を乗り越えねばならない。大勢の敵と戦わねばならない。負けることだってある。乗り越えることのできない出来事や、ストア派の弟子などの手におえない不幸が絶対ある。しかし力いっぱい戦ったあとでなければ負けたと言うな。これはおそらく至上命令である。幸福になろうと欲しなければ、絶対幸福になれない。これは、何にもまして明白なことだと、ぼくは思う。したがって、自分の幸福を欲しなければならない。自分の幸福をつくり出さねばならない。
 幸福になることはまた、他人に対する義務でもあるのだ。これはあまり人の気づいていないことである。人から愛されるのは幸福な人間だけである。とはいみじくも喝破したものだ。しかし、こういう報酬は正当なものであり、受けるに値するものだということが忘れられている。なぜなら、不幸や退屈さや絶望はわれわれみんなが吸っている空気のなかにあるのだから。(・・・)だから、愛のなかで絶対幸福になるという誓い以上に強い意味は何もないのだ。愛する人たちの退屈、悲しみ、不幸以上に乗り越えがたいものがあるだろうか。人はだれも、男も女も、幸福は、僕の言うのは自分のためにかちとる幸福だが、それはもっとも美しい捧げ物であり、もっとも恵み深いものであることを、たえず考えねばならないであろう。

アラン『幸福論 (岩波文庫)』神谷幹夫訳、岩波書店、1998、312-313頁.


幸福は義務である。「不幸や退屈さや絶望」の空気を吐き出し、幸福を欲しよう。


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