A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 572 どこに行き着くのか

2017-10-16 20:45:09 | ことば
どこに行き着くのかは本人にもよくわかっていない。じゃあ、なんの確信でその造形に向かうのかというと、先人たちの工夫の歴史に確信して、それを引き継いでいるからです。それは美術史に限らず、精神分析の歴史や思想史もそうだろうけど、そういう歴史の確信を担保にして何かを作ることができる。目的地は見えないけれど向かう方向は見える、ぐらいの確信でやるものなんじゃないか。それがはたして美的に重要なものなのかとか、美術史として重要なものなのかとか、洗練された造形性とは何かとか、実はそこではあまり問題ではない気がする。僕を後押しする確信は過去にあり、不明瞭な未来を見てみたいというのが先に進む原動力なんだと思う。

田中功起、田中功起×遠藤水城×藤田直哉「「地域アート」のその先の美術——美術の公共性とは何か」、藤田直哉編・著『地域アート 美学/制度/日本』堀之内出版、2016年、183頁。

「目的地は見えないけれど向かう方向は見える」という感覚はよくわかる。逆に、はっきり見通せている方がおかしい気がする。
しかし、日本のアーティストで「先人たちの工夫の歴史に確信して、それを引き継いでいる」人はほとんどいないのではないか。美術館もギャラリーもほとんど行かない見ない、本も読まないアーティストばかりでは、美術の歴史は途絶える。


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