A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記1026 『フラジャイル』

2015-04-26 23:26:07 | 書物
タイトル:フラジャイル 弱さからの出発 (ちくま学芸文庫)
著者:松岡正剛
カバーデザイン:ミルキィ・イソベ
発行:東京 : 筑摩書房
発行日:2005.9
形態:474p ; 15cm
注記:底本: 筑摩書房刊 (1995.7)
    その他のタイトルはジャケットによる
内容:
なぜ、弱さは強さよりも深いのか?
なぜ、われわれは脆くはかないものにこそ惹かれるのか?〈「弱さ」は「強さ」の欠如ではない。「弱さ」というそれ自体の特徴をもった劇的でピアニッシモな現象なのである。部分でしかなく、引きちぎられた断片でしかないようなのに、ときに全体をおびやかし、総体に抵抗する透明な微細力をもっているのである〉という著者が、薄弱・断片・あやうさ・曖昧・境界・異端など、従来かえりみられてこなかったfragileな感覚に様々な側面から光をあて、「弱さ」のもつ新しい意味を探る。

目次
1 ウィーク・ソートで?
2 忘れられた感覚
3 身体から場所へ
4 感性の背景
5 異例の伝説
6 フラジャイルな反撃
あとがき
文庫版あとがき
解説「弱々しさの勧め」高橋睦郎

購入日:2015年4月25日
購入店:紀伊國屋書店 梅田本店
購入理由:
 木野智史展DMテキストのための参考文献として購入。実家にあるかと思いきや家になく、新たに購入した。
 きっかけは木野の作品が陶芸としてはフラジャイルな印象を受けたことが原因である。そこで、タイトルに「フラジャイル」を冠した本書を読んでみようと思い立った。本書を読み始めて、松岡が弱さについて「部分でしかなく、引きちぎられた断片でしかないようなのに、ときに全体をおびやかし、総体に抵抗する透明な微細力をもっているのである」と書くとき、鮮やかな結論を得た気になり、思考は動きだした。その顛末は当該DMでご確認ください。

 本書は博学な松岡正剛らしく、豊富な事例と内容でスピードよく読ませる力がすばらしい。だが、結論めいたものは第1章で語られ、あとは各論が続くという構成であった。そこに、思想・哲学的な方向性は見られず、編集的というか、文献学的な紹介に終始しているのが松岡流なのかもしれない。「フラジャイル」のは、とてもおもしろい概念・着想なのに、思い出話や文献紹介で終わるのが、なんだかもったいない。
 またインテリゲンチャらしく、自分の同級生に誰それがいるとか、作家やアーティストに「友人の」と但し書きをつけるあたりは、80年代的なのか。
 参考文リストもなく、引用文献の頁数や書誌情報もない。著者は研究者ではないし、ターゲットも一般読者を想定しているのだろうから不要なのかもしれないが、これだけ本を取り上げておきながら、書誌情報を欠くとは、それもまたフラジャイルゆえなのだろうか。引用の礼儀というものもあるのではないかと思うのだが。