A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記447 「「写真絵はがき」の中の朝鮮民俗」

2010-11-08 23:34:04 | 美術
タイトル:「写真絵はがき」の中の朝鮮民俗
編集:財団法人高麗美術館
デザイン:パルアート株式会社
写真:中川忠明
印刷:株式会社サンエムカラー
発行:財団法人高麗美術館
発行日:2010年8月
価格:1,500円
内容:
A4変型版、カラ―、54ページ

ごあいさつ「100年の時空、リアルに浮かぶ朝鮮の民族」上田正昭(高麗美術館館長)
開催趣旨「写真が記録した100年前の朝鮮を見る。」山本俊介(高麗美術館研究員)
寄稿「日本人は朝鮮の絵はがきに何を見たか」水野直樹(京都大学教授、朝鮮近代史)
Ⅰ 「絵はがき」誕生。「郵便」事情
Ⅱ 日韓併合、植民地の風景
Ⅲ 「写真絵はがき」コレクター、ネットワーク
Ⅳ 吉田初三郎、朝鮮を俯瞰する
Ⅴ 1929朝鮮博覧会
Ⅵ 文化人が書き送った「写真絵はがき」
Ⅶ 市井の人々の「写真絵はがき」
Ⅷ 欧米人が見た近代の朝鮮
寄稿「20世紀、絵葉書の夜明けから落日まで」生田誠(絵葉書研究家)
「絵はがき」関連年表
謝辞・参考文献

購入日:2010年10月7日
購入店:高麗美術館
購入理由:
目下の研究課題である鳥瞰図絵師・吉田初三郎の地図が出品されていると知り、見に出かけた展覧会。初三郎作品の出品数は少ないものの朝鮮まで地図にしているとは驚きである。観光地図とはいえ、戦時中に地図を制作することができるということは、政治的にも力があったのか・・。初三郎、何者なのだろうか。
 とはいえ、展覧会のメインは「絵はがき」である。かくいう私も絵はがき・郵便愛好者の1人である。ちなみに、「ポストカード」ではなく、「絵はがき」である。ポストカードなどという小洒落た横文字ではなく、「絵はがき」でなければならない。これまでポスターや書籍の展覧会はたびたび開催されているが、絵はがきの展覧会となると、なかなかない。サイズが小さいゆえか、研究対象として認識されていないのか、まともな展覧会はほとんどなかった。そのため今展は絵はがき好きにとって大変貴重な展覧会である。
 しかし、今展は地方の私立美術館による絵はがき展という特殊さのため、地味な印象を与えるかもしれない。だが、その内容たるや絵はがき好きでなくとも充実した鑑賞経験を与えてくれる展覧会であった。
 まず内容として「絵はがきの中の朝鮮」というテーマ設定をしたことが内容を多様にしている。目次を見ればわかるように、日韓との関わりや当時の人々による絵はがきの受発信を通して朝鮮民俗や文化受容が浮かび上がる構成はテーマ設定の成功による所が大きい。しかし、内容そのものは政治的なわけではない。絵はがきという個人的な私信メディアのため、時代の雰囲気や送り手・受け手の人物像が思い浮かぶような親密な展覧会なのだ。これは絵はがきというメディアならではだろう。
見終わって、誰かに絵はがきを送りたくなった。