A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記206 「flower vase」

2008-10-14 23:12:40 | 書物
タイトル:WITHOUT THOUGHT Vol.9 flower vase
編集・ブックデザイン:NAOTO FUKASAWA DESIGN
発行:ダイヤモンド社
発行日:2008年9月4日
内容:
東京・六本木のGallery le bainにて開催された<WITHOUT THOUGHT Vol.9 "flower vase" NAOTO FUKASAWA + DMN DESIGN WORKSHOP EXHIBITION 2008>(2008年9月2日-9月19日)の展覧会カタログ。

テキスト:深沢直人(プロダクトデザイナー)
「without thoughtの楽しみ方」河嶋隆司(DMNディレクター)
図版37点

入手日:2008年10月6日
さまざまな企業のデザイナーを集めて行なわれる深沢直人によるワークショップの成果を発表する展覧会のカタログ。今回のテーマは「花器 flower vase」。
普段は企業、産業のためにデザインをするデザイナーたちがこのワークショップでは自由なデザインを繰りひろげている。without thought=「考えない」というだけに、直感的なデザインには遊び心が溢れている。例えば、ビニールテープ花器、水滴の花器、土のような鉢など思わぬ材質、形状があり、日常の中に花器をどのように見るのかデザイナーの視点が感じられて各品ともそのアイデアに感心してしまうことだろう。

現実的に見ると難点もある。まず、花器=器とはなんだろうか。それは水がはいることだ。当たり前だが、いくらきれいな花でも水がなければ枯れてしまうだろう。つまり、花器のデザインとは水をどのように器に満たすかに現実的な問題点があるということだ。そういった点を考慮して、あらためてこのカタログを見直してみるとなかなか水が入りそうもないものがいくつかあるのだ。
 では、なぜそのような花器が生まれるのかを考えてみよう。それは自戒を込めて言えば、身の回りに花・植物がないということだろう。もちろんなかにはガーデニングをしたり、ベランダーとして、鉢植えで植物を育てている人もいるかもしれない。だが、鉢と花器は用途が違うわけで一緒にはできない。花・植物を自宅・仕事場で飾ることがなければ、花器のデザインをwithout thought「考えない」でデザインすることはできないだろう。身体で習慣になっていないものをデザインとしてかたちにすることは難しい。その思考の飛躍と現実に物質として存在させることの難しさを考えさせられる機会としてはよき展覧会であった。

なお、カタログは展覧会に出かけたとき、頂いた案内状にカタログを頂けるとのことで要望したところ、後日に郵送されたもの。感謝。