ゆきちゃんは「このお店は隠れ家的なお店なんですね」と言った。そうなのだ、意外なそして秘密めいた場所にある店を知る男は、女の目には、未知の楽しみへの扉を開いてくれる頼り甲斐のある大人に映る。女はそういうお店に「トキメキ感」「どきどき感」「ワクワク感」を感じ、もし、出されるお料理が美味しくてサプライズの連続ならば、男への信頼度はぐーんとアップする。佐渡ではそういうお店は両津の「清助」くらいだが、東京には西麻布界隈に、その手のお店は幾らでもある。こういう所謂、「やれる店」を何軒か知っていれば女の2~3人は簡単に落とせる。
コース料理の最初は、「色々野菜の松の実和えと牛蒡のすり流し」で、上品で「繊細な味わいの一品である。次いで、ふぐ尽くしが始まった。まず、白子を二通りの調理法で味わう趣向。一つは、焼き白子を聖護院蕪の磨り流しの上に浮かべた物で、もう一品は、白子のフライである。いずれもクリーミーな白子の風味がチーズさながらで抜群の美味さだ。三品目は、車海老の真蒸。若芽と筍を浮かべてある。このお店では鰹節は客の注文があってから削ると言うこだわりがあるが、これにより、鰹の旨みと風味が一層引き立つ。ゆきちゃん相手にそんな講釈を垂れた後、ダシ汁の塩味の薄さに関し、織田信長のお抱え料理人「石斎」のエピソードを織り交ぜながら再び講釈を垂れた。四品目は「海の幸の盛り合わせ」である。真ん中に、のれそそれ(アナゴの稚魚)とあおり烏賊の耳の部分をヌタで和えた珍味が乗り、向かって左から時計回りに、煽り烏賊、蒸し鮑、ふぐポン酢、サワラの炙りがっこ、ゲソの木の芽和えである。煽り烏賊以外は全て味が付いており、どれも一手間かけたお造りであった。5品目は、ふぐの唐揚げで、衣にほんのりとした塩味が付いていて、美味しい!6品目に、鯨の舌である、所謂「サエズリ」の煮含めが登場!このサエズリ、関西ではおでんタネとして珍重されるが、食べてみたら、スポンジのような弾力で、味がしっかり滲みこんだ噛みごたえのある、豆腐でもない、油揚げでもない、そんな食感の不思議な食材であった。
以上でコースの半分が終了した。店内は、会社帰りらしいサラリーマン風のおじさん集団、似非食通家の業界人や米国女性の一人客など六本木らしい客層ばかりで、ゆきちゃんのような20代女性は皆無であった。ワインでかなりきこし召したおじさん集団の嬌声がやや煩かったものの、愛を語り合うには適度なスペースが確保されており、口説きの店としての条件は全てそろっていた。ただ、同じコースで進行するため、先客への料理内容の説明が漏れ聞こえてくるので、サプライズ感がやや薄まると言う難点もあったが、これはこれで止むをえまい。
コース料理の最初は、「色々野菜の松の実和えと牛蒡のすり流し」で、上品で「繊細な味わいの一品である。次いで、ふぐ尽くしが始まった。まず、白子を二通りの調理法で味わう趣向。一つは、焼き白子を聖護院蕪の磨り流しの上に浮かべた物で、もう一品は、白子のフライである。いずれもクリーミーな白子の風味がチーズさながらで抜群の美味さだ。三品目は、車海老の真蒸。若芽と筍を浮かべてある。このお店では鰹節は客の注文があってから削ると言うこだわりがあるが、これにより、鰹の旨みと風味が一層引き立つ。ゆきちゃん相手にそんな講釈を垂れた後、ダシ汁の塩味の薄さに関し、織田信長のお抱え料理人「石斎」のエピソードを織り交ぜながら再び講釈を垂れた。四品目は「海の幸の盛り合わせ」である。真ん中に、のれそそれ(アナゴの稚魚)とあおり烏賊の耳の部分をヌタで和えた珍味が乗り、向かって左から時計回りに、煽り烏賊、蒸し鮑、ふぐポン酢、サワラの炙りがっこ、ゲソの木の芽和えである。煽り烏賊以外は全て味が付いており、どれも一手間かけたお造りであった。5品目は、ふぐの唐揚げで、衣にほんのりとした塩味が付いていて、美味しい!6品目に、鯨の舌である、所謂「サエズリ」の煮含めが登場!このサエズリ、関西ではおでんタネとして珍重されるが、食べてみたら、スポンジのような弾力で、味がしっかり滲みこんだ噛みごたえのある、豆腐でもない、油揚げでもない、そんな食感の不思議な食材であった。
以上でコースの半分が終了した。店内は、会社帰りらしいサラリーマン風のおじさん集団、似非食通家の業界人や米国女性の一人客など六本木らしい客層ばかりで、ゆきちゃんのような20代女性は皆無であった。ワインでかなりきこし召したおじさん集団の嬌声がやや煩かったものの、愛を語り合うには適度なスペースが確保されており、口説きの店としての条件は全てそろっていた。ただ、同じコースで進行するため、先客への料理内容の説明が漏れ聞こえてくるので、サプライズ感がやや薄まると言う難点もあったが、これはこれで止むをえまい。
前菜
牛蒡の磨り流し
白子のフライ
焼き白子
海老しんじょ
御造り
ふぐのから揚げ
「サエズリ」の煮含め
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