昨年の10月31日の午後5時丁度、筆者は相川のホテル万長前の駐車場に愛車を停めた。午後からは雨との予報だったが何とかお天気は持ってくれた。筆者には6階の一室が用意されていた。和室だが、えらく障子の滑りがいい!シャワーを浴びた後に相川の街へと繰り出してみた。日曜日なので天領通りの商店街にある飲食店は軒並み休業だ。頼みの「中庄」さんもお休みで、りき寿司は出前のみの営業らしく、店内に明かりは灯っているものの、暖簾は外に出さずじまい。竹屋もお休みだし、「ちゃらくらげえ」さんも時間が早くてまだ開店していない。そんな中、居酒屋「オルフェ」さんの明かりだけが煌々と灯っていた。筆者は吸い寄せられるように「オルフェ」さんの扉を開けてみた。カウンター席には眼鏡姿のママさんが座っていた。筆者は枝豆、烏賊の一夜干し焼き、焼き茄子、生ビールを注文した。先付けはワラビの湯葉和えだった。先付けを食べ終える頃に地元のおじさん三人組がやってきた。地元の常連さんには茹でさざえの先付けがおまけでサービスされていた。「いいなあ~、私もあれ食べたいなあ~」と羨ましく思った。彼らはどうやら漁師仲間のようで、盛んにテレビ画面が放映する明日の天気予報を気にしてそれに言及していた。おじさんのうちの一人が「明日は曇り後雨から終日雨の予報に変わったかあ~」と嘆息しながらタバコに火を点けた。そして「雨なら仕事は休み」だと続けた。雨で視界が不良となれば漁はできないからだろう。このおじさん、「秋刀魚あるかやあ~」とママに問うと、彼女は「今日はいい秋刀魚が入っとらん」と答えたが、ややあってから「あ、いいのが一匹だけあった」と言った。すかさずおじさんが「刺身にできるくらいの秋刀魚か?」と質すと、ママは「秋刀魚の刺身は命を賭けんと食べられん」と不気味な事を言った。何でも、真野の某飲食店の店主が根っからの秋刀魚の刺身好きで、過去に何度も秋刀魚の刺身に当たった既往があるそうだが、ある日の事、秋刀魚の持つアニサキスとやらの寄生虫に対するアレルギーを発病し、それが原因で死亡したとの事だ。秋刀魚好きが高じた末に秋刀魚に殺されたようなものだから、さぞかし本人も本望だったろう。どこの飲食店かは真野の読者ならば、「ああ、あそこかあ~」と思いつくはずだ。この話を聞いたおじさんは、「命を賭けてまで食べたくないから秋刀魚は焼いてくれ」とママに頼んでいた。筆者の左隣のおじさんはトンカツ定食を御注文になり全量をペロリと完食していた。凄い食欲だなあ~と感心する筆者を尻目に今度は秋刀魚おじさんが牡蠣フライのテークアウトをオーダーしおった。これを「おかず」にして家でライスを食べるのだという。常連さんへのお料理出しに忙しいため、筆者の注文した焼き茄子はほったらかし状態になった。「まだでしょうか?」と催促したら、ママが「今作っていますよ」とのお返事。筆者はおじさん達の健啖ぶりを見てお腹が一杯になり、次第に食欲が失せてきた。歯を磨きにトイレに行き、帰ってきたらテーブルの上に焼き茄子が出来上がっていた。筆者はママさんにお勘定をお願いした。2080円だったが、焼き茄子を食べずにそっくり残したお詫びを兼ねて、三千円をテーブルの上に置き、「お釣りはいらないよ」と言い残してお店を去った。万長へ戻る道すがら、ナイトスポットJ1は営業していたものの、バーチェリーは休業だったのを見とどけた筆者はセーブオンへと取って返し、フルーツカクテルとアサヒスーパードライ、つまみとしてアーモンドとベビーチーズを購入し宿へと戻った。それから、毎朝飲んでいる「明治の美味しい牛乳」も忘れずに購入した。
翌日の朝食はいつものブッフェスタイル(画像)。いつものように美味しく頂いた。完食した証拠写真を撮影し一人悦に入っていたら、それを見た仲居のおねーさんがクスクス笑っていた。一泊朝食付きのお代は15900円だった。
完食した証拠写真