お井戸庵（佐渡市中興） 投稿者：とある旅人

国道３５０号線を走行し金井の商店街を過ぎると、左手に市役所方面へと向かう三叉路が見えてくる（ガソリンスタンドが目印）。ここを過ぎると道路が右へカーブする。左手に「堀記念金井能楽堂」という能舞台を展示した建物が見える。丁度その真向かいに「お井戸庵」の標識が見えた。一般のドライバーならまず見逃してしまうくらい小さな標識だ。地元民でもこの史跡を知る人は少ないだろう。かくいう私もこの場所にあるという地図を片手に訪れたのだ。

標識のある小道を進んでいくと、突き当たりにお堂が見えた。そしてその右脇を進んでいったら、蓋をした井戸枠のようなものが見えた。蓋を開けて中を覗いたが滾々と湧き出る泉ではなく、新しい感じの井戸であった。このお井戸庵は、市野沢の妙照寺管理だそうだ。その訳は、日蓮がその霊験で掘り当てた井戸であり、ここから湧き出る清水で墨をすり、「勧心本尊抄」を書いたからだそうだ。また日蓮がカエルの鳴き声がうるさいと言って一喝したら、それ以後、この地ではカエルの鳴き声が聞こえなくなったと言い伝えられている。

お堂には「法華堂」と書かれてあった。現在は佐和田中原にある法華山妙経寺がこの地にあり（その後佐和田へ移った）、日蓮に帰依した中興入道がこの寺に住んでいた。それゆえ、このお堂を法華堂というのだろう。このお堂の後方に中興入道の墓と伝えられる板碑があるそうだが見逃してしまった。ちなみにこの井戸の水は眼病に効くとの言い伝えがあり、目を患った人々が今でも参拝に訪れるそうだ。