飛耳長目 「一灯照隅」「行雲流水」

「一隅を照らすもので 私はありたい」
「雲が行くが如く、水が流れる如く」

試験の意味

2021年02月18日 18時15分00秒 | 人生論
ある本の一節より。

新しい場所に属するためには必ず試験をクリアしなければなりません。
人間は、小さい頃からの経験でそのことを知っています。
知っているはずなんですが、気づかないふりをします。
別の言い方をすると、試験なんか受けないですんなり一つ上の階段の仲間入りをさせてくれないかなあ、って考えてしまうんです。
でも、それはダメです。
なぜならその試験に合格しないで、一つ上の段階へ入った時に苦しむのは、その人本人だからです。

例えば、人間が全く新しい飛行機を作り出しとします。
その時必要なのがテスト飛行。
この時にテストがうまくいくことを願う気持ちは誰にでもあることでしょうが、でも、同時にダメなところはトコトン結果として出て来て欲しいと願うはずです。
だから、全てうまくいくことを確認するためにテストがあるのではなく、どういうところに不具合が生じやすのかを見つけ出す出すために何度も何度もテストを繰り返すのです。

この時テストする側が一番恐れていることは、テストでいい結果が得られないことではありません。
テストで生じなかった不具合が、実際に実用化されたあとで生じてしまうことです。
それが一番、不幸なことなのです。
すべてのテストは同じ目的のために行われます。

つまり「合格(パス)」を手にするのがテストの目的ではなく、「いざ、実際に使い始めたときに、困った事が起こらないかどうか試す」ために行うのであり、そういう不具合が現れた場合は速やかに直す。
不具合が出ないですんなり次の段階に進めることを望むより、むしろダメなところがないかシラミつぶしに調べて見つけようとすることにその目的があるのです。
これが試験の意味です。

自分なりに考えてみると、新しい飛行機とは、次のステップや環境の変化を指すのではないだろうか。
進級、進学、就職などもそれにあたる。
そのたびに新しい飛行機に乗ることになる。
その飛行機の安全性や性能は、前段階でどれだけ失敗をどれだけ改善に生かしたかである。
ミスを進歩につなげる作業を繰り返す時により安全性が確保されるようになる。

同じ間違いを繰り返したり、進歩のない経験を積み重ねても、安全性は向上しない。
そんな安全ではない飛行機で新しい環境の中を飛行できるだろうか。
飛行中は、着陸もできず、悪天候を乗りきり、機材トラブルにも現有の道具で対応が迫られる。
その時、以前の準備と改善策が生きてくるのである。

誰もトラブルに対応ができない飛行機に命を預けることはしないだろう。
より安全、トラブルを回避し、乗り越えられる飛行機に乗りたいと願うだろう。
その過程に必要なことが試験なのである。
試験は現在ためでなく、未来のために必要なのである。

Saitani

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