三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

秋田湯沢・両関酒造

2008年04月01日 06時37分55秒 | 古民家シリーズ

写真は秋田県湯沢市の中心部にある蔵元「両関」。
大型の木造建築として、地域を代表するような景観になっている建物。
実際に建っている姿を見ると、その巨大さに圧倒されます。

日本の文化の中で、日本酒の製造業というのは
もっとも始原的な製造業「商品」であって、
だいたい良いお米が取れるか、良いお水が取れるか、
場合によってはその両方が取れるか、というような条件が揃えば、
それこそ日本中、どこでも競って生産されたものだろうと思います。
「地酒」として地域のみなさんに愛されて、
同時に地域を代表する製造業として、産業勃興期には
みんな産地間競争として、企業の大型化を推進した。
しかし、残念ながら、日本酒での「全国制覇」という果実は
どの企業も勝ち取ることが難しく、
また大型化の過程で、そもそも「地域密着」型企業である
「地酒」屋さんという側面がどんどん薄らぎ、
どこの誰が作ったモノか、ワケわかんないお酒になってしまって、
企業価値を大きく落としてしまった、というのが実際のところだったと言えます。
この写真に見られるような大型木造建築って、
たぶん、そうした時期の、
いわば「成長への切迫した願い」が表現されているものなのでしょうか。

建物としてみたら、柱や梁が正しく組み上げられて行っていて、
斜めの構造材というようなものは表に出てこない。
こういうふうな構造架構は、日本人の伝統的な美意識に由来しているそうです。
筋交いのような、あるいは火打ちのような斜めの部材は
なるべく表面には見せないように組み上げるのが
由緒正しい技術としての美意識だということなんですね。
たしかに、内装部材としての「障子」などの
タテ横のまっすぐなラインだけで構成された格子のデザインなど、
日本人は、このような美への感覚がDNA的に刷り込まれている部分があると思います。

この建物はいまも使われているかどうか、
よく調べてはいないのですが、
周囲の街並みの中で、まさにこの地域らしい景観のシンボルにはなっている。
これからもこれを延命させていこうと考えたら、
やはり観光資源としての側面の方が、有用だろうと思います。
秋田県南部地域の米と酒、というような文化の側面を
その存在だけで、実に雄弁に物語ってくれている。
長く存続していって欲しいものだと思いました。
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