性能とデザイン いい家大研究

こちら 住まいの雑誌・Replan編集長三木奎吾です 
いい家ってなんだろう、を考え続けます

安藤忠雄に聞く~地方の生き残り~

2015年04月18日 06時14分59秒 | Weblog
ここんところ、いろいろな人と会っていまして、
それぞれに真剣に向き合っていると、なかなか骨が折れます。
そんななかですが、建築に関連する人間として
不勉強ですが、安藤忠雄さんというのは一度もお会いしたことも
お話しを聞いたこともない方でした。
コンクリート打ち放しの建築を作っていること、
家の中で移動するのに、雨の日には傘を差してトイレに行くような
そういう家を建てて、世の中を驚かせてきたことなど、
ほぼ断片的な知識・情報しか持ち合わせていませんでした。
ただ、世界的に高名になるにつれて、
氏の姿勢の弊害があちこちで出てきていることについては
一定の情報も持っていたと思いますし、建築としては
トマムの水の教会とか、先日観た秋田県立美術館などの体験があります。
一度はきちんとご意見を聞いてみたいと思っていたら、たまたま今回
札幌で講演会があると言うことでしたので、聞いてきました。
どうしようかと考えたのですが、
地域の住宅メディアとしての取材という申し入れはしませんでした。
そういうことなので、講演について
写真撮影や動画記録などは主催者側から禁止されていて、
そのルールに従って、一般的な講演聴講として聞いてきました。
ただ、個人としてではあれ、取材者として聞いていたので、
記録メモは取りながら、話を聞いていたいと思って
途中までは、詳細にメモを取っていたのですが、
途中、セビリア万博日本館のくだりで、講演写真がストップしたあたりから
アドリブでの安藤さんの話の方が面白くなってしまって
記録は途切れ途切れになってしまいました。

お話しのテーマ自体はたいへんにわかりやすく、
地方が生き延びていくのは、そこに責任を持つ人間の力しかない
という至極、当たり前のことだったように思います。
パッションや、人間の体験力の鈍磨について危機感を持たれ
日本の現状に強い危惧を持たれている様は
まことに共感させられるものでした。
以下に講演でのいくつかのキーワードを上げてみます。
1 日本を知る
2 考える力
3 組織力
4 発想力・持続力
5 総動員する
6 美意識を高めていく

建築家らしく、北海道という地域の生き残りには
この地域が持っている独自の美を、地域の人間が正しく捉え
それを活かして、世界に対して情報発信していく努力を重ねろ、
というようなメッセージが伝わってきたように感じました。
最後に近いあたりで、
いま、真駒内の墓地での仕事についての紹介がありました。
この墓地は、モアイ像が並べられたりしている墓地として
地域では「微妙な」立ち位置にある施設なのですが、
そこにある奈良にある大仏の等身大コピー大仏を
それまで露出させていたものを、
「土をかぶせて埋めましょう」と安藤さんは提案したのだそうです。
たぶん、安藤さんの力はここなんだろうなと思われました。
土で埋めて、アタマだけ地表に出す。
くりぬいた土の山を造作して、仏像部分だけはそのまま空気にさらす。
冬には雪が仏体を埋め込んでしまうかも知れない。
その北海道らしいありようの光景を、山の麓からトンネルを通って
ずっと足下だけを見させようやく仏体にめぐり会ったときには、
下から「仰ぎ見る」ように見上げる。
そういった「体験」を企画立案し、なお、実現できるように
そのプロジェクトが完成できるように、人を集め、知識を集め、
それこそ地域を「総動員」して、地域にパワーを付加していく。・・・
たぶん、安藤さんの「地域」へのメッセージは、
そういったあたりにあるのだろうなと、
面白く、また強い共感を持って聴いておりました。



コメント
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