くらげのごとく…

好きなことを考えてふわふわ漂ってるような
時間が心地良かったりする。
たとえ時間の無駄遣いだったとしても…。

闇の子供たち

2008年08月13日 | 映画

闇の子供たち (幻冬舎文庫)
梁 石日
幻冬舎

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もし、世界が100人の村ならば…

高等教育を受け
パソコンを所有し…

親戚が戦死するとがなく
奴隷であったこともなく
拷問にあっておらず

冷蔵庫には食べ物があり
クローゼットには着る服があり
頭の上には屋根があり
寝るところがある

そのうえ銀行預金があり
両親が健在なら・・・

世界の最も裕福な上位8人の中に入る…

このあたり前の日常を、当たり前と享受してはいないだろうか。世界には残り92人の現実がある。しかし、飢餓で、貧困で、病気で、今この瞬間にも命を落とす子どもたちがいるということを聞いてはいてもどこか遠くの出来事のようにしか感じられない。

映画「闇の中の子供たち」を観た。人身売買、児童売買春、臓器密売…、児童の人権侵害や虐待の暗部が、平和ボケしている日本から地図でたった“20㎝”の場所で起こっている事実として淡々と描かれる。

臓器密売を追う新聞記者
理想に燃えNGO活動に身を投じる女性
現実逃避気味なフリーカメラマン

登場する日本人の三者三様の視点から、この現実を受け止めさせる。心臓病のため大金を払って臓器移植を受ける日本の子ども、親に売られ、生きたまま臓器提供者となるタイの子ども、この二人の命の重さは変わらないはずなのに何故このような矛盾が起こってしまうのか。貧困ゆえに子どもを捨てざるを得ない親たち、その弱味につけこんで性的快楽にふける、モラルのかけらもない病んだ先進国のおやじども。ブローカーをするタイの青年も、幼いころ性的虐待を受けたというトラウマを持つ。どうにもならない奇奇怪怪な世の中が浮き彫りなっていく。事実は事実として伝える。それ以上は何もできないとクールに言い放つ記者だったが、事実を知れば知るほど、ジレンマに陥り、ついには自ら命を断つ。漠然と、自分も同じ状況にあったら、きっと狂ってしまいそうだなあと思った。死にさらされたこともなく、温い世の中で育ってきた人間にとって、子どもたちの命が大人の都合で物のように売買されることはあまりにも衝撃的で悲しいことだ。

彼らは、自分の意志など関係なく、預かりどころも知れないところで、突然、命が絶たれてしまう。普通に生きていれば、天寿を全うできるということが、どれだけ稀有なことなのか、そんなことも考えさせられた。



“光はやみの中に輝いている。やみはこれに打ち勝たなかった。”



この映画、感想を書くのが難しい。一昔前は、“まびき”とか“姥捨て”など、日本でも似たようなことは行われていた。貧しさが引き起こす様々な問題に、人間のエゴが結びついていく…。人間は化け物にもなり得るんだな。

さて、坂本監督、「カメレオン」で興味を持ったがさすが社会派と言われるだけあって硬派な作品だった。これはお涙ちょうだいなんかでは絶対まとめられない、人類の課題ともいうべきテーマだもんね。途中、監督も発狂しそうになったとあるが、まんざら嘘でもなさそうだ。よく映画にできたものだと思う。

日本俳優陣も検討していたが、ブローカーのチット役を演じた、プラパドン・スワンバンというタイの俳優さんがとっても良かった。影のある、悪役がハマっていた。阪本監督、好きそうなタイプだな。あと、わすれちゃいけないのが豊原さん。カメレオンのボスとは違って、普通のエリート役が似合っていた。今度、蜷川さんのお芝居にも出演されるから、ちょっと注目だわ~。

 


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