くらげのごとく…

好きなことを考えてふわふわ漂ってるような
時間が心地良かったりする。
たとえ時間の無駄遣いだったとしても…。

黄金のチェリータルト

2013年04月20日 | 観劇

新年度も3週間が過ぎ、来週を乗り切ればゴールデンウィークだぞ~。
今日は午前中、保育説明会に参加し午後から一路新宿経由で初台へ向かった。

がんばったご褒美に、たっか~いパン屋さんのカフェでチェリータルトを食す。



豪華に金粉がかかっている~!チェリーにリキュールが効いていてバッチリ私好み。タルト生地も絶妙で切っても粉々にならないの。久々にヒットなスイーツが食べれて幸せだった。

初台と言えば新国立劇場どす。堤真一&宮沢りえの「今ひとたびの修羅」を観に行ったのだ~。



これ、シレンとラギの任侠バージョンといった感じ。オープニングから歌から演出からシレラギとイメージ被りまくっていた。恋愛物に目覚めたのかしら、いのうえさん。今度は禁断の愛ではなくこてこての三角関係ね。三角ふたつがシンクロするの。せつない人、幸せになる人、はかなく散ってしまう人といのうえワールド全開で劇画チックだった。

宮沢りえちゃんはいかにもっていう役柄なんだけど、私は下谷万年町のおひょうの方が好きだなあ。夏の盲導犬でまた化けてくれそうだ。堤さんは役柄的にもかっこよかった。それにも増して、風間杜夫さんの存在感がありすぎ~。風間さんの役もかっこよかったなあ。唯一人報われずに死んでしまう岡本健一くんもかっこいい。かっこいいずくしの贅沢なお芝居だった。

返りはJRが乱れてまくっていて東京に出るはめになった。大回りをしたから時間がかかっちゃった。最終バスは行ってしまったからミスドで時間をつぶして深夜バスに乗る。満員のバスの中は心なしかアルコールの匂いがした。椅子に座るなりがくっと眠りこけている人もいる。それぞれの新年度、お疲れ様だね。


祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~

2013年01月27日 | 観劇



ケラさんの戯曲で、本家ケラさん演出と蜷川さん演出が年をまたいてコクーンで上演された。どちらも1回づつ観にいった。美術とキャスティングはケラさんの方が好きかなって思った。作った本人が演出だからそつがなくて当たり前、映像や音楽も現代的でスマートでおしゃれだった。蜷川さんの方はしっかり演劇になっていて、和洋折衷で敢えて一貫性がないように見えてひとひねりふたひねりしてある感じだ。自分よりもはるかに若いケラさんの挑戦をストレートで受け、多彩な変化球で返しているようだ。井上ひさしさんの時のように台詞やト書きが字幕で出る。戯曲に忠実であろうとする蜷川さんらしい。ケラさんの描こうとした世界、情景を正直に観客に届けようとしているし、なんだかわからないようなこと、たとえばパイプのような電話などをわかりやすくしていた。

4時間の大作で、途中何度か記憶がとんだ。根幹はギリシャ悲劇だが、チェーホフやらガルシアマルケスやらいろんなモチーフが見え隠れする。ケラさんはいろいろ勉強しているんだなあ。演劇界においてめきめき力を発揮しつつある。有頂天のバンドマンだったなんて遠い昔のことだね。ねるとん紅鯨団の主題歌だっけ???記憶がさだかじゃないけど単なるコミックバンドだと思っていたよ。そんなケラさんに敬意を表してか、蜷川バージョンではケラさんが歌う「心の旅」のレコードが劇中で何度か流された。和装コロスのラップも、ばっちりハマっているわけではなかったけど斬新だった。コロスメンバー、下谷万年町臭かったなあ。ケラバージョンのコロスの方が蜷川チックだったのが面白い。その他、ケラバージョンでは怪物は子どもを亡くした夫婦の前にあらわれる幻影のことかと思ったけど、蜷川バージョンでは怪物はまさに人間を呑み込み滅亡へと導く欲望だった。

以下、独断の役者比べ。失礼があったらごめんちゃい。

ドン・ガラス
生瀬勝久VS勝村政信  
ほぼ互角、双方エネルギッシュだった。70代という原作の年齢としての役作りは肉襦袢をつけて頑張っていた勝村さんの勝ちかな。ケラバージョンでは主役だったからか生瀬さんはかっこよすぎた。

トビーアス
森田剛VS小出恵介
蜷川バージョンでは主役だから森田くんの印象が強い。ケラバージョンの小出くんもぴったりだった。小出くん最近舞台づいているなあ。

長女
原田美枝子VS久世星佳
個人的に久世さんの方がひと癖あって面白かった。原田さんは映像ではいいけど舞台では線が細くてきれいすぎる。

二女
緒川たまきVS中島朋子
奥様にやらせるくらいだから重要な役。たまきさん輝いていた。朋子さんもギリシャ悲劇経験者として遜色なし。

三女
安倍なつみVS宮本裕子
なっちは舞台づいている。なかなか頑張っているよね。男性ファンがカテコでなっちコールをしていた。モー娘の力もまだまだ衰えずで恐れ入った。宮本裕子さんはあまり知らなかったけど実力派で大役を演じきっていた。

パキオテ
大倉幸二VS三宅弘城
実はこの役が一番気になっていた。子どもを亡くした夫婦に見える亡霊を呼んだのが白痴のパキオテ。大倉さん独特のボケ味があってこそのキャラだったから蜷川バージョンで誰になるのかと思ったら三宅マンだった。何気に安心。やっぱりあの味はナイロン100℃しか出せない。蜷川さん、三宅マンをよくぞ押さえたよ。道化のパキオテ、お二方ともぴったりだった。

メメさん
犬山イヌコVS伊藤蘭
私は、てっきり蘭ちゃんが長女だと思ったんだよね。そしたらメメさんだった。これは、まるっきり正反対の持ち味で全然違った。犬山さんは本家だもんね。たたみかけるような台詞まわしが上手い。蘭ちゃんは正統派として凛とした魅力が出ていた。

アリスト
マギーVS大石継太
マギーさんの方がやさぐれ感が強かったかな。大石さんは真面目さがにじみ出。蘭ちゃんとのバランスも良かった。

ジャムジャムジャーラ&ドンドンダーラ
この老婦人、魔女の宅急便に出てきた魔女みたいだ~。かたや、若者に殺されて心臓を取られ、かたや生き残って化け物になる。
三田和代VS木野花
迫力があるのは木野花さんかな。三田さんは貴婦人ジャムジャムの方がハマっていた。とても品があるのよね。雨ジュリを思い出す。DVDにもならないし、TV放映もない。雨ジュリがまた見たいよう。(注:雨ジュリとは雨の夜三十人のジュリエットが帰ってきたのこと)

同じ戯曲でもこうも違う作品になるのが演劇の醍醐味だね。この企画、なかなか楽しい。観る人によって様々な感じ方や捉え方もあるだろうしね。



こんなチラシをもらったよ。蜷川さん、また唐さんをやるんだ。唐さん、体の具合は大丈夫なのかな。盲導犬は知る人ぞ知るキムタクの初舞台作品だよね。木村君、もう何年かしたらまた舞台をやるんじゃないかなあって勝手に思っている。そして、滝の白糸ですぞ。蜷川さんが「蛇にピアス」に出演した竜也くんに「銀メガネだね」って言っていた作品だよ。くるかな~銀メガネ。寺島しのぶさんとやってほしかったけど出産だから無理かな。とにもかくもキャスト発表が楽しみ~。         


日の浦姫物語~大阪大千秋楽~

2012年12月24日 | 観劇

大楽は完成されていた。井上さんの戯曲をかみ砕いて理解して観客へと確実に届けてくれる熟練なキャスト陣が素晴らしいよね。余力さえ感じられる。井上さんもっと凄いのお願いしますよって。井上さん、天国で苦笑いしていそうだ。そして、また新作を書いていそうだ。「木の上の軍隊」はどうなるのかな。井上さんはあくまで原案。井上さんにはかなうわけがない。だから若い力でまた一味違ったものを見せて欲しいね。コクーンと銀河、両方先行を申し込んだ。今回は地味なキャストでなおかつ二人芝居だから興業的には厳しいかもね。ということはファンにとっては案外チケット取りやすいと見込んでいる。地味ながらもいい舞台になって欲しいな。

ということで、日の浦姫はもう何も言うことがない。是非、演劇賞を取って欲しいね。敢えて言うならば、竜也君の声はとても独特だってことかな。しのぶさんも、木場さんも、立石さんも至ってクリアで美しい声だよね。淀みなく不安もなく流れて行く。竜也くんの声は一瞬、危うそうで実はとても強い。そして奥行きがある。なんていうのかな、バイオリンでいうのならばストラディバリの名器の様で、あのうっす~い身体から共鳴してくるんだよね。白石さんが体の深いところから声が出ると評してらしたけどそれを実感した。コクーンに2階でも広いブラバの後方でも同様に七色の響きが聞こえてきた。ハスキーのようでただのかすれ声ではない不思議な音色がとても心地良かったし、稲若と魚名に合っていた。

いい時期にいい役に巡り合って良かったね。蜷川さんは本当によくわかっていらっしゃる。来年、映画は敢えて3番手、今まであまりなかた脇に回る。ようし、この勢いで主役を食ってしまえ~。これから役者を続けていく上でとても大事なポジションだと思うのでこれからもいろいろチャレンジして大人の俳優へと脱皮をして欲しいね。

さて、次の蜷川さんとのタッグは何になるのだろう。シェイクスピアとかギリシャ悲劇ではなさそうな気がするんだよね。
また、意表を突いてきて下さいよ~。


日の浦姫物語~東京千秋楽~

2012年12月02日 | 観劇

こまつ座さんの先行でかろうじて取れた千秋楽のお席は…、2階の超はじっこだった。それでもS席だからと座ってみたら、上手側が見事に見切れではないの。あの素晴らしい、木場&立石コンビがほとんど見えない。じ~っと声だけを聞くしかないというと~っても残念な場所だった。竜也くんの出番は幸い下手側が多かったので、「この島をでなくてはいけなくなりました」ってゴザに隠れるシーン以外は見れたかな。でもS席で見切れなんてありえない。先週のX某列と同じ金額なんてさらにありえない。まだ初日の中二階席の方が良かった。見切れがある場所は、せめてA席にしてくれよ~

ほい、以上愚痴でございます。

オペラグラスを覗いても、柵やら前のでかい人やらがじゃまになる。途中から観念して、1階席では見えない舞台裏ウォッチングをした。日の浦姫が兄との子どもを手離す、小舟のシーン、舟を動かす“青子”さんは、最初から波と同化して横たわっていらっしゃる。息も止めているくらい静かに。そして木場さんが、舟に乗って影になると、おもむろに舟を動かし始める。本当に波間を行くように…。もう、“青子”さんに目が釘付け。この裏方に徹した姿に、プロフェッショナルを感じたわ。月夜の海を行く舟がとてもきれい。1幕の終わりはこの“青子“さんあってのことだ。名も知らぬ“青子”さんに大拍手だよ。

三羽のカラスの矢、下で観ていた時はわからなかったけど、竜也君、後ろに落としてた。あたかも射るように見せる技なんだね。同じく、毛むくじゃらの金勢資永くんも、魚名に射られたようで自分の矢を刺さったように見せていた。何気に「ほほ~っ」と感心してしまう。これぞ、舞台の見せ方なんだってね。

客席にセルマさんを発見したよ。やっぱり、英国公演、見込んでいるんじゃなかろうか。大人になった竜也くん、セルマさんのお眼鏡に叶ったかな。15歳の稲若が良かったな~。僧侶姿の奇跡の場面も泣かせてくれた。

膨大な台詞量の、しのぶさんと木場さんがこなれたのか、上演時間が5分程、短くなった。全てがテンポよくするすると流れていった。笑って、泣かせて、落して、やっぱり井上さんの戯曲が素晴らしい。キャスト力も加わって久しぶりに調和の取れた作品を観た気がする。こんなに評判がいいのもめずらしいよね。

カテコも静かで穏やか~だった。おせんべいまきも紙テープもないし(笑)、リベラもかからずいつもとあまり大差ない感じ。2回めで蜷川さんがしのぶさんと竜也君に呼ばれて登場したけどね。蜷川さんも嬉しそうだった。今回はやりやすかったんじゃないかな。3回目は、幕が上がった時に竜也くんが木場さんとハグしていたようで、あせって立ち位置にもどりまじめにお辞儀をしていたのが面白かったな。せっかちな竜也くん、ちゃんと幕が下がるまでしっかり頭を下げていた。木場さんはいい声をしているなあ。ほれてまうやろだね。

大楽は、早番+指定休を確保して大阪逃避行だ~。ほい、年休はあっても使いませぬ。夜の羽田からひとっ飛び。某ホテルでのんびりするのだ~。だって、ホテル代混みで新幹線代より安いんだもん。その頃には、発表会も終わってるしボーナスも出ている筈。これを励みにお仕事、頑張るぞ。

最近はホリプロさんにあまり釣られないように、プログラムもグッズも我慢している。ましてや、某舞台のスペシャルカーテンコールなんて、ファンをばかにしちゃいけませぬ。なんていいながらも買ってもうた卓上カレンダー。たぶん、自分で作ったら数百円で出来そうなちゃちさなのに、1000円札が飛んで行った~。



カレンダーなら来年確実に使えるからいいよね。


たどろもどろ…

2012年11月25日 | 観劇

井上ひさしと蜷川幸雄が初タッグを組んだ「天保十二年のシェイクスピア」は演劇史に残るお祭りの様な作品だった。ひょっこりひょうたん島以外の戯曲家井上ひさしを知ったのもこれがきっかけで、アマゾンでお高い原作本を買って予習をしたもんだ。



この本の中に、「日の浦姫物語」がちゃんと入っていた。「たいこどんどん」も「雨」もあった。で、改めて「日の浦」をぱらぱらと読んでみたら、見事に、本当に寸分もたがわないくらい見事に、戯曲と舞台が一致しているのがわかって驚いた。井上さんの細かいト書きのすみずみまで蜷川さんは再現したんだね。そして、役者陣も一言も台詞を違えることなく演じている。

「鯉!」「ス…鯉!」
「鰓、鰓、鰓ィ!」なのだ~。

さて、初日から早くも三週目に突入だ~!今回、唯一の良席X某席のセンターで、竜也くんとしのぶさんとガン見してきたぞ。前髪の15歳がかわいい~。バカ兄弟のいちゃつきぶり、しのぶさんもとばすとばす。その間で叔父役のたかお鷹さんのすっとぼけぶりがなんともおかしい。

それにしても、物語を語る説教聖夫婦の木場勝己さんと立石涼子さんは何度見ても圧巻だ。主演二人とのバランスも良く日の“裏”と“表”を回転させる。木場さんの台詞量は半端ない。それを自在に操り観客を物語の世界に誘ってしまう。木場さんは井上さんのメッセンジャーだとつくづく思った。井上さんの言葉を正確に伝えられる貴重な存在だね。リズム感もいいし歌も上手い。何気に三拍子そろった凄い人なのだ。

立石さんも役柄によってがらっと雰囲気が変わる。その昔、ロミジュリでは高貴なジュリママで、古畑では音弥くんお叔母様で、かと思えば娼婦っぽい役も見たきがするし、今回も三味線を弾いたり、歌ったり、日の浦姫の侍女になったりと大活躍だ。日の当らない熟年夫婦(兄弟)が、なお一層、夢の世界を生きる日の浦と稲若&魚名を輝かせている気がした。

暗転して幕が上がると、まず井上ひさしさんのお写真が掲げられている。素晴らしい戯曲をありがとうって素直に拍手できた。このエネルギーに負けない人間になりたい。たどろもどろ…と歩みつつね。


観劇の秋

2012年09月23日 | 観劇

暑くて長かった夏が、バッサリ斬られたように終わった…。今日の関東は10月並みの気温で、思わず長袖のカーディガンを引っ張りだした。“暑さ寒さも彼岸まで”は異常気象の今年も変わらない様だ。

この週末、好対照の芝居を連ちゃんで観た。どちらも3部構成という長さで言葉の洪水に溺れた…。



「ロックミュージカル騒音歌舞伎~ボクの四谷怪談~」」
作:橋本治
演出:蜷川幸雄
出演:佐藤隆太、小出恵介、勝地涼、栗山千明、麻実れい、勝村政信 他
シアターコクーン

四谷怪談の伊右衛門様と言えば、その昔、17歳の藤原竜也くんが演じた大正四谷怪談の印象が強い。極悪で狂っていた。ところが、こちらの“海猿”伊右衛門は、どっこも悪いところがない。爽やかで結構誠実、人から恨まれ、まして妻に化けて出られる理由もない。これは四谷怪談が下地にあるものの原作者橋本治氏の全くのオリジナル戯曲なのだ。36年前、作者が28歳の時に一夜で書き上げたそうだ。作家の道を歩み始めるきっかけになった作品だけあって、突き動かされるようなものすごいパワーがあった。こういう瞬発力って、才能ある人は出せるんだね。

ロックミュージカルと言えども、昭和歌謡のオンパレードで私には懐かしさも感じられた。どうして、お岩が化けて出るのかわけがわからない伊右衛門は悩み苦しんだあげく、実は自分自身と向き合っていることに気付く。生と死の境目の曖昧さ、亡霊は誰の隣にもいるのかもしれないね。

♪僕らはみんな死んでいる、死んでいるから楽しいんだ
 僕らはみんな生きて行く、生きて行くから死ねるんだ♪

生きて行くから、死ねるのね。だから生きていかなきゃいかんのねって励まされた気がした。

今をときめく出演陣は確かに輝いているのだけど、彼らの回りを通り過ぎる老人達が気になって仕方なかった。今の時代を象徴している。だって、日中のスーパーなんか元気なお年寄りでいっぱいだものね。惚れた腫れた遣られたなんざ、長い年月を生きてきた老人にとってはみんな通り過ぎてきたもので“幻”の様なのかもしれない。

やっぱり勝村さん麻実さんは貫録がある。余裕の暴走ぶりが楽しい。小出くんはここのところすっかりヤクザキャラがハマっているし、勝地くんの与茂七もぴったりだった。初めて見たけど、三浦涼介くん、ダンスも歌も上手いなあと思ったら、三浦浩一さんと純アリスさんの息子さんなのね。言われてみればアリスさんにそっくりだ。演劇界にも続々と二世が進出しているんだね。




「浮標」
作:三好十郎
演出:長塚圭史
出演:田中哲司、松雪泰子、佐藤直子、平岳大、大和田美帆、木村了
世田谷パブリックシアター

四谷怪談が“動”だとすれば、こちらはひたすら静かな作品だった。浜辺を連想させるような敷きつめられた砂の上で淡々と物語が進む。病気の妻を献身的に看護する画家の夫、子をもたなかった女、妻の家族、出生する友と身ごもるその妻、それぞれの生きざまや思いが交錯していきながら、やがて“生”というテーマが浮き彫りになっていく。

「死んだらそれっきりだと思ふからこそ此の世は楽しく、悲しく、せつない位のもったい無い場所なんだよ」

図らずも、四谷怪談と繋がっている気がした。この対照的な二つの舞台のテーマは偶然にも「生と死」だったのだ。映画「I’M FLASH」のテーマもだ!!あの震災以来、みんな死を身近に感じ、生きる意味を問いただしている気がする。私も、ぼんやりと自分の老後について、その先の死について考える年になってきた。どのような幕切れが訪れるのかはわからない。だけど、その時がくるまでの一日一日を、時にがむしゃらに、時に怠惰に、時にひたむきに…、兎に角、呼吸していくのよね。



ルドルフ ~The Last Kiss~

2012年07月22日 | 観劇



割引チケットが手に入ったので、井上芳雄ファンのお友達と観に行った。久しぶりの帝劇だ~。割引だから微妙な席だけど、前列の方がたまたまいなくて見晴らしは良かったよ~

これ、再演かと思っていたら、全くの新作だった。30歳を過ぎた芳雄くんに合わせて、ルドルフもすご~く成長して落ち着いている。私は前作より好みだった。妻との冷えた夫婦関係も、不倫の恋に燃えるのも、父との確執も、タバコをふかしたり酒屋で飲んだくれるのも年相応で説得力がある。もちろん、ミュージカルだからファンタジーな場面もあって、ロミジュリを彷彿させるベッドシーンもあった。不倫に純愛のロミジュリのをかぶせるなんて、悲劇がさらに際立っていた。

デヴィッド・ルボォー氏の演出は繊細で隙がない。回り舞台やカーテンを駆使してまるで一枚の絵画のように場面が切り取られていく。それが美しいし、はかなくあっけないルドルフの一生が走馬灯の様に通り過ぎて行く。るくる回る(ほんとによく回る)ウィンナーワルツや豪華な螺旋階段がヨーロッパ宮廷の雰囲気を醸し出していてきれいだった。

印象的だったのは、ルドルフが自分の言葉で民衆に演説するところ。王族でありながらも身分制度について批判し、皆平等に生きるべきだと説く。民衆に担がれながら、スローモーションで消えて行くところは一瞬の煌めきの残像のようで哀しかった。

世界史には全くうといので、本当のルドルフはどんな人だったか、Wikiを見てみたら…、母に愛されず、養育方針が二転三転する中で育てられた様だ。女好きでもあり、本当に好きだったのは劇中の男爵令嬢ではなく娼婦の方だったみたいね。死後、心中は暗殺だったなんて説もあるらしく、現実は血なまぐさくて一気に破滅してしまった様だ。第一次大戦に向かっていく時代にも翻弄され巻き込まれていったのだろう。しかし、ハプスブルグ家って悲劇の家系だね…。

終わってから、一瞬、竜也くんの「ムサシ~ロンドンバージョン~」を思い出した。同じ題目、脚本、キャストでも、全く違う切り口があるんだなって。役者の成長によって新たな作品が生み出せる。演劇って深い世界だな。


シレンとラギ 東京公演

2012年05月27日 | 観劇

大阪楽から10日後、東京公演が始まった。若干、演出が変わって、流れもよくなり上演時間が短くなった気がした。なんか、もうそつがないというか、完成度が高いというかこれから一カ月、どこが進化するのかしらっていう感じがする。

竜也くんは、イメージ通りのあて書き。今までの作品のあんなとこ、こんなとこだけでなく、これからの仕事のことまで彷彿させてくれる。ビジュアルも衣装も最高にかっこよくてファンとしては大満足。もしも、次回があるなら、蜷川色を払拭したものにしてほしいなあなんて我がままに思ってしまうくらいだ。「遺恨あり」が映像の集大成だとしたら、この作品も舞台の集大成的な要素があるけど、それは表面的なだけ。竜也くんの舞台の歴史は深いからなあ…。

永作さんは、井上ひさしさんの「雨」の時の方が恐い母性があった気がする。うん、でも殺陣もかっこよくて、力強く孤高に生きる女性を好演している。やっぱり力がある女優さんだね。

今回、一番おいしいのが高橋克実さんだよね。今まで多かった温厚な役柄とのギャップで大絶賛を浴びている。個人的には、経歴からしても経験からしても、克実さんがこの位出来るってことは予想の範囲内だったけどね。巻き舌のべらんめえ調が迫力あるのよね。これからやくざの親分役なんてのも増えるんじゃないかな?

デスノートでは松山くん、カイジでは香川さん、伊勢谷さん、啄木では一恵ちゃん、万年町では西島くん、そして、今回は克実さんと、ここのところお株を取られてばかりの竜也くんだなあ。いずれも主役としての強さやぶれない存在感も発しているし負けているわけではないのだけど、印象深い役柄ってあるもんだよね。竜也君自身にも、+αがそろそろ生まれて来て欲しいな。

渋谷の喧噪からちょっと離れた青山はいいところだなあ。青山劇場がある「子ども城」は出来た当時、子どもを連れて何回か遠足に行ったもんだ。音楽リズムや造形のプログラムなんかをやってくれるんだよ。お子様にはとてもお勧めのスポットです。

路地裏の喫茶店でランチ~♪



アボガドとサーモンのネギトロ丼。うわっ、カロリー高そうだよね。アボガドがごっそりでボリュームがあっておいしかったよ。


異質なものの融合

2012年02月26日 | 観劇

2012年 蒼白の少年少女たちによる「ハムレット」
作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:蜷川幸雄
出演:さいたまネクストシアター



異質なものとは、世代の差からくるものなのかな。人間は生きてきた時代背景とか経験とか年月によってこうも醸し出す空気とかまとっているものが違うのかって思う。

“蒼白な少年少女”である若いネクストシアターの役者さんたちによって演じられるハムレットは、一幕終わりまでは普通に淡々と進んでいたが、有名な、「尼寺へ行け!」という場面で、突如、こまどり姉妹が歌いながら登場した。想像するだけでも違和感ありありでしょ?厚化粧で派手な着物を着たおばさんのド演歌に下を向いて笑っている若い子もいた。たぶん、こまどり姉妹を知らない世代なんだろうね。私だって、タイムリーにはよく知らない。かしまし娘とかぶる。双子の歌手といえばザ・ピーナッツの方が馴染みがある。こまどり姉妹はその先駆け的存在なんだよね。戦後の復興から高度成長期、昭和の代表的歌手なのだ。流しからのスタートしてその生きざまもかなり華々しく波乱万丈だ。そんな中身がぎっしりつまった70代のお二方の存在感はものすごく、しばし見入ってしまった。マイクを持つ手が震えていたけど、声量は衰えておらず圧倒された。その間、ハムレットとオフィーリアは床に突っ伏して歌に負けじと号泣し続ける。そして姉妹が去ると何事もなかったかのように芝居は続いていく。気付けばシェイクスピアの世界に普通に引き戻されていた。このなんとも不思議なミスマッチの中にある融合が面白かった。

ハムレット自体は限りなく藤原版に近い。あの場面もあの場面も同じような演出。まさか、最後、フォーティンブラスはしないだろうと注目していたら…、あらら~しっかりやってたわ~。

演劇エリートなネクストの面々はみんな達者である。生まれた時からTVやビデオに囲まれて育ってきた世代にとって演じることはとても自然なんだろうな。下谷万年町の西島くんも器用だなあって思った。だけど、それだけじゃ心は動かせないんだよね。ネクストに比べてゴールドの方がいつも心にずしんとくるものね。

蜷川さんがパンフレットの冒頭で洋ちゃんの意志を継ごうとキティが文ちゃんに言った台詞を述べている。
「転がってくるもの。果てしなく、いつも、こうして、転がってくる・・・・・・・。なりゆきとか、ゆきずりとか、手垢にまみれた、下々の、様々なこれらを、おまえは、これからもずっとつかんで行けんのか?」

若者たちよ「つかんで行け!」と託しているような気がした。愛と激励と叱咤、そんな演劇に対する想い全ての象徴がこまどり姉妹だったのかなって。蒼白なままだとフォーティンプラスに撃たれちゃうものね。なんか印象に残る舞台だったな。下谷万年町と並行して稽古をしていた作品なのかと思うと、蜷川さんの心情も偲ばれる。

久々の与野本町は、お店が少し様変わりしていた。ヴィドフランスが出来ていて軽食も取れるようになっていた。だけど、私は与野フーズのメープルメロンパンの方が好きだ。しかし神奈川からだと遠いなあ。帰りは新宿ラインで爆睡…


シレンとラギ始動

2012年02月18日 | 観劇

大阪公演からスタートする劇団新感線の春公演に藤原竜也君が主演する。大阪で制作発表があって、ちょろっとメディアにも登場している。ミヤネヤを録画しておいたら、ほんの数分の生出演。はい、待ちに待った古田さんとのツーショットが見れた。思ってたより、この二人ふっつう~で馴染んでる。勘太郎さんの襲名パーティーの時にすでに二人でべろんべろんだったらしいから、かなり親しい仲なのかな?小栗くんが取り持ったのかしら~?おっさん(古田さん)とプチおじさん(竜也くん)といった落ち着いたなごやか~な雰囲気だった。

ブログで発表されたビジュアルは最高にかっこいい。シレンとラギなんて名前からして劇画ちっくじゃないの。CGも音楽もギンギンに駆使されたド派手な舞台になるんだろうな~。殺陣、踊り、歌なんかもあるのかなあ。あるよね、きっと。小劇場から叩き上げられた新感線のこゆ~い面々に、是非、カテコの在り方も含めたエンターテイメントについて学んで、人間的にもひとまわり大きくなって30代を迎えて欲しいね。

駄目元で申し込んだら、大阪楽が取れた!もちろん、遠征するよ~。500円玉貯金も再開した。問題は、うま~い具合にお休みが取れるかどうか。にやっ、絶対に休んでやる~。