井上さんの戯曲自体が良いし、初日から完成度が高かったから、ものすごい進化はなかった気がする。ただ、抜群のチームワークというか、あうんの呼吸が心地良く、いつ見ても感動させられた。
そこで、独断で役者編をつらつらと…
おとらばあさん&おみつさんの熊谷真実さん。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/cf/7c64d9ced5ee9155ce141317a07d7e4c.jpg)
私にとっては、「マー姉ちゃん」のイメージが強烈で、明るく元気な女優さんという印象だ。今回の二役は素晴らしい。特に、ガラは悪いが心根がいいおとらばあさんは女五郎蔵だね。このばあさんが手塩にかけて育てた孫娘がおみつだというのがとても納得できる。おみつは、清楚でたおやかで、人の痛みがわかる女性だ。おとら亡き後、株仲間を陰ながら支えていく。そんな汚れ役と娘役の対比を見事にこなしていた。
バラエティーなどでも活躍している真実さんだけど、デビューはつかさんなんだね。そして、つかさんの元奥さんでもある。井上さんの追悼公演中につかさんも逝ってしまわれた。すごい演劇人と関わってきた女優さん、これからも舞台で輝いてほしい。
河竹新七こと、しんちゃんの吉田鋼太郎さんは、常に安定していた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/8d/55f756a78129cd53f021013358332ad6.jpg)
きぜわものとして、世を写せるずんぐりむっくりの役者というのは吉田さんのことじゃないのかなあ。井上さんの遺志の全てを伝えてくれた。品のいい新七として、控え目に、だけど時に熱く語る説得力ある存在感が圧巻だ。ときどき、おからをぼろっとこぼしちゃのうのが、鋼太郎さんらしかったけど。
円八師匠の大鷹明良さん、いぶし銀な脇役タイプで、役柄としっくり合っていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/ec/30ab5d0b1efb2eb89c5fdec7323f4e27.jpg)
身投げや久治の、松田洋治さんは言わずと知れた元天才子役だ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/45/14250350e44125fe3c9a983943f56d06.jpg)
昔、よくドラマで見ていた。小さいのに上手いなあって。そんな彼も40歳を超えたんだね。見かけは相変わらず若いし、小さい頃の面影も残っている。地道に舞台でキャリアを積んでいい役者として生き残ったんだね。
ヒロインのおせんは内田慈さん。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/61/152575e688e13f127301f9aaf54c5948.jpg)
初め、内田滋くんと勘違いしてた。だって、シェイクスピアで女役やってたし。しゃべり方が舌足らずで、「アイ~ン」な感じがしたけど、おじさんたちのかわいいアイドルな感じが良くでていた。でも、おせんはかわいいだけじゃなくって、賢いし、時代の先端をいく女性。成長後のおせんはとても難しいと思う。この大役を演じたことは、彼女の転機になるだろう。欲を言えば、歌をもうちょっとがんばって欲しかったなあ。
及川孝之進の北村有希哉くん、天然ボケの旗本役がハマっている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/3e/300c27fe7b5ce5194e5a51c603945b28.jpg)
吉田&藤原ともバランスが良くで、この三人の信頼関係は熱いんだなあって思った。オレステスの時よりも、全然違和感がなかったもの。彼も、偉大な父の遺志を継いで成長し続けている。舞台映えもするし、声もいいし、間も絶妙、天性のものが感じられた。
最後は、五郎蔵の藤原竜也くん。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/92/da18d700bb1f1424a257443a8c1ce2ec.jpg)
滑舌もいいし、声もよくでているし、セリフ回しも自在で、活き活きとしていた。ここまで、出来てしまうのはお見事。やはり才能なんだろうね。だけど、この役は器用にこなせるだけのもんじゃないと思う。あれだけ、深い戯曲を書く、井上さんが望んだということは…、もっともっと乗り越えるべき高いハードルが託されている気がする。それが、今公演で、見つけられれば、再演につながっていくことだろう。
さて、千秋楽といえば、カテコだが、と~ってもあっさりしていた。栗山さんの千秋楽はだいたい、いつもこんなもんだが、みんな、余韻に浸って穏やかに拍手を送っているという感じだった。どちらかと言えば、初日の方が盛り上がった。
で、竜也くん、さっさと衣装を脱いじゃったみたいで、3回目のカテコに出てこない。んな、早く脱がんでもいいんでないかい?だって、他の出演者はそのまま出てきてくれたんだよ。君のことを待っている多くの“御見物衆”がいることを自覚して~。鳴りやまない拍手に応えて、や~っとのことで、ジャージを履いて出てきてくれたけど、バツが悪そうだったな。鋼太郎さんにつっこまれてたしね。演技者として、このところ落ち着いて大人の俳優になりつつあるんだから、人間としても、もうちょっと落ち着いてみたら?っておばさんは思ってしまったよ。もう28歳なんだからさ。別に、観客にこびなくてもいいんだけどね~。