くらげのごとく…

好きなことを考えてふわふわ漂ってるような
時間が心地良かったりする。
たとえ時間の無駄遣いだったとしても…。

すれ違う想い…

2008年07月06日 | 藤原竜也
“役に入り込むあまり、暴走する藤原竜也”なんて評されてしまったけど、東京公演も中日を過ぎて何かが変わってきた。竜也くんの熱さは普遍なのだが、まわりがかなり熱くなった気がする。トリゴーリンってあんなにはじけていたっけ?鹿賀さん、お茶目な3枚目路線を確立してた。竜也くんから放出されるエネルギーに触発されたのかな?重厚な演劇人たちは、発火するにも時間がかかるのね。役者陣のバランスがとてもよくなって、栗山さんが目指す、不調和の中の調和というものがやっと見えてきたんじゃないかな。さすが、熟練者たちだわ~。

この群像劇、登場人物は好き勝手に自分の想いを主張するだけで見事に相手には届かない。それで、自分は不幸だ~って嘆いている。そして、そんな愚かさを笑えない自分にふと気づく。逆に恐くなってしまう。これって、自分に自信がないからかな…。

アルカージナは息子を愛しているのに、息子の本当の気持ちを理解しようとしない。トレープレフは母に、トリゴーリンと同じように自分の作品を読んで認めて欲しいのに。トリゴーリンは流行作家としての地位を確立しており、一見、幸せそうに見えるけど、アルカージナに翻弄され、自分の意志で行動できない。釣りをするのがゆういつの楽しみという冴えない中年だ。マーシャは、トレープレフが好きなのに振り向いてもらえず、タイプでもないメドヴェジェンコとの結婚に逃げるが、それでも幸せを見いだせない。なんか最悪~って感じだ。マーシャの母、ポリーナも医師ドルンに人生最後の恋心を抱くもあっさりふられる。ニーナはトレープレフをふってトリゴーリンに走り、子どもを設けるがその子にも死なれてしまう。やがてトリゴーリンにも捨てられたあげく女優としても大成できずにいる。

そして…、
トレープレフは母にも認められずニーナにも去られ人生に絶望する。結局、生きる術を見いだせずに自殺してしまうのだ。

全く、どいつもこいもしょうがないやつだ。何故か、妻にも舅にも姑からも邪剣に扱われながらもマーシャを思い続ける、ますおさん状態のメドヴェジェンコがとっても哀れに思えてしまった。我がままな女たちに振り回される男たち。それでもたくましく生き続けるのは女なのよね…。

熱くなった「かもめ」、カテコも4回に増えていた。きっと観客にも伝わったものがあったのよね。なんとなく拍手をやめられなかったもの。

帰りにウィークリーぴあを購入、藤原竜也への100の質問が面白い。竜也くんにとって、ライバル的存在になってきているのは、小栗君でも、勘太郎君でもなくて、蜷川さんなのね。もちろん、蜷川さんに対する、絶対的信頼と尊敬はゆるぎないし、蜷川さんの前では“いい子”らしいけど、仕事をする上で挑んでいく姿勢が出来てきたんだね。身毒丸の最終稽古で蜷川さんが竜也くんに「勝ったな」と言ったというエピソードを思い出す。弟子がこんなに頼もしくなってくれて、師として嬉しいだろうね。蜷川さんは、「かもめ」は観ないのかな。蜷川さんだったらどんな演出をするのか、ちょっとばかり気になってしまった。