長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

3月岡山行の序章!?  劇団ゲキハロ特別公演 『さくらの花束 さくらん少女』

2013年03月26日 21時03分51秒 | すきなひとたち
 いえぇ~いい、ぽんぽぉお~んんっ☆ どうもこんばんは、そうだいでございます。みなさま、今日も一日お疲れさまでございました!!

 いや~、行ってきた行ってきた、岡山!! いやはやなんとも、今回も得がたい素晴らしすぎる経験ばっかりの0泊3日となりましたなぁ~。

 そして、もう脚がボロッボロのガッタガタ……

 実は、前回の備中高松城探訪でもそれなりに足を使って疲れたつもりではいたのですが、いやいやあんなのまだまだヒヨッコでしたわ!
 山はこわいね~! そして、そのこわさ以上に魅力があるんだよねぇ~!!
 そういえば、私の父は山が好きなんだそうですが、なんか、今回の探訪は山の中でヒ~ヒ~言いながらも、「あの父にしてこの子あり、か……」と思わせるクライマーズ・ハイな瞬間がいっぱいありましたよ。
 山登り、いいね……もう私も30半ばが近づいてるんでムリはできないはずなんですが、今回は思いっきり無理しちゃいましたよ! 高速バスの強行軍とはまた違ったムリ、それが山登り! 予想以上の道の傾斜角度、予想以上の歩行距離、そして、まったく予想できない目的地の光景。いや~よかったよかった。ついでに言えば、無事に生きて下山できてほんとによかった……


 さて、そんなこんなで早速、息をもつかせずにここ数日の岡山行のまとめをしたいところなのですが、ここはまず、出発の日となった3月24日日曜日のあれこれから、しっかりと順を追って話を進めていきたいと思います。

 でも、そうなると岡山とはまるで関係のない話から始めることになっちゃうのよね……


 出発の24日、私は夜に東京からバスで出発するまでの時間つぶしとして、東京のどこかでお芝居を観るという計画を思いつきました。
 今となって、岡山での尋常でないカロリー消費ペースのことを振り返ってみれば、出発の日は半日くらい絶対安静で昼寝する必要があったかと思うのですが……そ~と~久しぶりに仕事のない日中だったんもんでねぇ。こういうときにぜいたくに時間を使えない私の貧乏性っぷりが見て取れますねい。

 実はこの時点で、私の中で観たいと思っていたお芝居はいくつかあったのですが、結局、この岡山行直前という重要な局面で私が選択したのは、これでした!


劇団ゲキハロ・特別公演 『さくらの花束』(2013年3月14~24日 池袋シアターグリーンにて)


 アイドルか~! ここでアイドルのお芝居えらんじゃったか~!!

 この『さくらの花束』の主演は、天下の実力派アイドルグループ・℃-ute(きゅーと)のみなさんなんですよ……私が大好きな岡井千聖さんが所属してるんですよ……そして、私が映像でない本物の℃-uteさんを肉眼で確認するのはこれが初めてなんですよ。

 明らかに容量オーバーだろうが……これから体力的にけっこうハードなスケジュールが待ってるっていうのに、その出発前に別の日に独立させてもおかしくないイベントをブチこんでどうするのだ!?
 しかし、『さくらの花束』はこの24日が公演最終日だったのです。これで深夜バスの時間にも間にあう午後からの回があるのですから、これで観に行かないわけにはいかなかったのよねェ。このチャンスを逃がさずして、いったい何が『長岡京エイリアン』かと!!

 とかなんとかいいつつも、当日券が売り切れちゃってたら意味ないよなぁ、などと弱気になりながら、岡山行のためのあれこれを入れたカバンを片手に池袋に向かったのですが、念のために開場時刻よりもちょい早めに行ったのが功を奏したのか、チケットは思いのほか簡単に手に入りました。

 それではここで、「劇団ゲキハロ」と今回の『さくらの花束』についてのうんぬんかんぬんを整理してみましょう。


劇団ゲキハロとは

 演劇界のスタッフと、ハロー!プロジェクトのコラボレーションによる舞台公演。
 Berryz工房と℃-uteとスマイレージのいずれかの主演、もしくは共演による作品になっている。
 現在、第1~12回公演のすべてが DVD商品化されている(第9回の DVDは菅谷梨沙子主演ヴァージョンのみを全編収録しており、その他の主演映像はダイジェスト収録)

第1回公演 2006年11月『江戸から着信!? タイムスリップ to 圏外!』(主演・Berryz工房 会場・池袋シアターグリーン)
                               脚本・前川知大(イキウメ)、演出・岩井秀人(ハイバイ)
第2回公演 2007年6月『寝る子は℃-ute』(主演・℃-ute 会場・池袋サンシャイン劇場)
                   脚本&演出・塩田泰造(劇団大人の麦茶)
第3回公演 2007年11月『リバース! 私の体どこですか?』(主演・Berryz工房 会場・池袋サンシャイン劇場)
                          脚本&演出・伊藤えん魔(ファントマ)
第4回公演 2008年10月『携帯小説家』(主演・℃-ute 会場・池袋サンシャイン劇場)
                 脚本&演出・太田善也(散歩道楽)
第5回公演 2008年11月『Berryz工房 VS Berryz工房』(主演・Berryz工房 会場・池袋東京芸術劇場中ホール)
                        脚本&演出・楠本柊生元帥(劇団第14帝國)
第6回公演 2009年6月『あたるも八卦!?』(主演・℃-ute 会場・ル・テアトル銀座)
                 脚本&演出・川原万季(散歩道楽)
第7回公演 2009年9月『サンクユーベリーベリー』(主演・Berryz工房 会場・池袋サンシャイン劇場)
                   脚本&演出・塩田泰造(劇団大人の麦茶)
第8回公演 2010年8月『おばぁちゃん家のカレーライス スマイルレシピ』(主演・スマイレージ 会場・六本木俳優座劇場)
                                  脚本・坪田文(空間ゼリー)、演出・三原光尋(映画監督)
第9回公演 2010年9~10月『三億円少女 華麗なる七人』(主演・Berryz工房 会場・池袋サンシャイン劇場と大阪の2都市公演)
     脚本&演出・塩田泰造(劇団大人の麦茶) ※ゲキハロ史上初の複数都市公演であるとともに、公演ごとに主演者が変わる(Berryz工房の7人のうちの誰か)という演出の作品だった
第10回公演 2011年6~7月『大正浪漫・ハイカラ探偵王 青いルビー殺人事件』(主演・モーニング娘。の田中れいな 会場・六本木俳優座劇場)
     脚本・加藤淳也(映像脚本家)、演出・小中和哉(映画監督) ※Berryz工房の清水佐紀と須藤茉麻が共演
第11回公演 2011年9~10月『戦国自衛隊 女性自衛官死守セヨ&女性自衛官帰還セヨ』(主演・Berryz工房&℃-ute 会場・池袋サンシャイン劇場と大阪の2都市公演)
     『死守セヨ』脚本&演出・塩田泰造(劇団大人の麦茶)/『帰還セヨ』脚本・林誠人(映像脚本家)、演出・鈴木早苗( TVドラマ演出家) ※この公演は、半村良の SF原作小説の設定をもとにしたオリジナル作品2本が交互に上演されるという形式となっており、Berryz工房と℃-uteのメンバーがシャッフルされてどちらかの作品に出演するというキャスティングになっていた
第12回公演 2012年9~10月『キャッツ♡ アイ』(主演・Berryz工房&℃-ute 会場・池袋サンシャイン劇場と大阪の2都市公演)
     『盗む側にドラマがある。』脚本・太田善也(散歩道楽)、演出・鈴木早苗/『盗まれる側にもドラマがある。』脚本&演出・塩田泰造(劇団大人の麦茶) ※この公演は、北条司の原作をもとにして2つの視点から物語を進行させていくという2パターン交互上演形式となっていた


劇団ゲキハロ特別公演『さくらの花束』(2013年3月14~24日 池袋シアターグリーンの劇場3館にて同時上演)
 主演・℃-ute、脚本・坪田文(空間ゼリー)、演出・大岩美智子(劇団ジュークボックス)
 「シアターグリーン大・中・小劇場内を大移動!! 3つの演劇を同時上演! ℃-uteは全てに出演します。」(チラシより)
『さくらの花束 チルチルサクラ』シアターグリーン大劇場「ビッグツリーシアター」(客席167席)での上演
 ・作品の共通の舞台となる「私立仙緑寺(せんりょくじ)女子高等学校」のある教室で展開される物語
『さくらの花束 桜色に頬染めて』シアターグリーン中劇場「ボックス・イン・ボックスシアター」(客席104席)での上演
 ・仙緑寺女子高の生徒会室で展開される物語
『さくらの花束 さくらん少女』シアターグリーン小劇場「ベースシアター」(客席70席)での上演
 ・仙緑寺女子高の演劇部室で展開される物語



 とまぁ、こんな感じなんですけれどもね。なんか、ここ数年はやけにトリッキーな企画の公演が多いね!

 今回の『さくらの花束』がゲキハロの第13回公演でなくて「特別公演」になっているのは、おそらくこれまでの公演に比べて劇場の観客キャパ数が極端に小規模になっているからなのではないのでしょうか。サンシャイン劇場はキャパ800で、六本木俳優座劇場もキャパ300。それにたいして、今回の『さくらの花束』は最大の劇場でもキャパ160強ですからね。

 だが、そこがいい!! お芝居の会場はやっぱり小さければ小さいほどいいんです! 椅子は座り心地がいいほうがよかったけど。
 いや~、あの℃-uteのみなさんをそんなに近くで観られるとはねぇ。岡山でなにか良からぬことがあるのではないか……と、おのれの珍しい幸せっぷりに不安になりつつも、そんな「距離の近さ」を絶対基準に考える私が選んだのは、迷わずいちばん小さい規模の劇場となるベースシアターでの『さくらん少女』だったのでありました。キャパ70って! 近い、近い~。
 しかも、私がゲットしたのはかなりの前列。いいんですかねぇ~、どうもすみません!

 しかして、私がふらっと思いつきで鑑賞した『さくらん少女』の実態たるや……

 ℃-uteのダンス&演技方面担当・中島早貴さんのほぼオンステージ! ぐわ~、なっきぃい~♡


 この、池袋シアターグリーン内の3館で上演される『さくらの花束』それぞれの作品は、チラシの文章によると、とある地方都市にある仏教系のちょっとダサい中高一貫女子校「私立仙緑寺女子高等学校」での、卒業式が終わってから同級生どうしが町で集まりはしゃぐお別れパーティに行くまでの数時間、同じ学校の中の「3年 A組教室」「生徒会室」「演劇部の部室」で起きる出来事をそれぞれの視点でとらえるという、「ほぼ同時刻進行」の並列した物語になっています。
 つまり、さっきまでビッグツリーシアターの教室にいた生徒が「ちょっと演劇部の部室に行ってくる。」と言って舞台を離れたかと思ったら、今度はその彼女がベースシアターの演劇部室にひょっこり顔を出したり、演劇部室にいる生徒たちが「さっき生徒会室に行ったら○○さんと××さんがいて、あなたのこと探してたけど?」とかいう会話をしたりといったぐあいで、そういった役者の出入りが全編にわたって繰り広げられる展開となっているのです。
 これで、役者さんと同じようなフットワークでお客さんも3劇場を出たり入ったりすることができたら、それはそれでおもしろかったんでしょうが、それだと同じビルの上下階に位置する3劇場なんで、通路の大混乱やおじさん客の足オールパンパン筋肉痛の惨劇は避けることができなかったわけで……いい、いい、お客さんはじっくり腰をすえて、女優のみなさんの奮闘を応援することにいたしましょう。

 さて、結局のところ私がギリギリ観ることができたのは3作のうちのひとつだけ、『さくらん少女』だけでした。
 それに比べて、会場の客層は明らかに「どの公演もちゃんと全部、しかもそれぞれ複数回観ている可能性が特濃な男性ファン」のみなさまで埋め尽くされておりましたので、もしもこの記事をお読みになっているみなさまの中で『さくらの花束』全体のレビューのようなものを確かめたかった方がいらっしゃったのだとしたら、そういった向きには私の以下の感想文はあまり役に立たないものになるかと思われます。完全に『さくらん少女』だけに関しての観劇記になっておりますので。
 っていうか私だって本当に、『さくらん少女』のあとにもし機会があったら、他の2作品も観たかったですよ……最終日だからムリだったんですけど。いい感じに「不完全」な物語になってるんですよね~。3つ観てはじめて完全な絵になると! うまくできとるね~。まぁ、私は足りない部分は妄想で埋めます。

 この『さくらん少女』にも、チラシの文句のとおりに℃-uteのメンバーは全員出演します。
 ただし! はっきり言わせていただければ「主演・℃-ute」という言い方は、ことこの『さくらん少女』にかんしては看板に偽りありですな。

 なぜならばァ! 『さくらん少女』の主演は、中島早貴ただひとり!! ただひとりの娘が、小さい身体を引っぱりまわして70人のお客さんを相手におよそ80分間ものあいだ闘っていた……


「失敗というのは……いいかよく聞けッ! 真の失敗とはッ! 開拓の心を忘れ! 困難に挑戦することに無縁のところにいる者たちのことをいうのだッ!
 このレースに失敗なんか存在しないッ! 存在するのは、冒険者だけだッ!」


 この超有名な至言をつつしんで、『さくらん少女』の中島さんにさしあげたいです。もう、うまいヘタの次元の話じゃなくなってるの。


 この『さくらん少女』の舞台となっている仙緑寺女子校の演劇部室の中では、上演開始からず~っと、卒業生であるのにもかかわらず卒業式出席をボイコットした演劇部長の朝倉かのこ(演・中島早貴)がひとり悦にいってぶつぶつ独り言をくっちゃべっており、

「演劇部で作・演出・主演などをつとめた華やかな経験を持つ私が卒業式をボイコットしたんだから、そりゃ~もう会場は大変なことになってるに違いない。でも、私はそんなしもじもの友だちの大混乱を尻目に、意気揚々と新しい世界に飛び出していくのよ! 大人たちがその才能に思わずこぞって目をうばわれてしまう、天才的大女優としてねェ~♪」

 などといった主旨の、野望と妄想とが実に青春的な配合を見せる発言をとめどなくその口から飛びたたせていきます。こういったあたりと、朝倉部長がことあるごとに吹いて遊んでいるシャボン玉のイメージとのオーバーラップが実に心憎いですよね。

 余談ですが、上演中に中島さんが吹いたシャボン玉は薬剤の濃度が高かったためかそうとう長時間にわたって会場内にふ~わふ~わ浮かんでいたものが多く、私の座席の頭上にまで割れずに飛んできたものもいくつかありました。
 ……まぁ、一瞬頭の中に、そのシャボン玉を「パクッといただく」選択肢も浮かんだのですが、それをやったら正真正銘鉄筋コンクリート造りの「人でなし」に見事ホールインすると思いましたので、それはとどまりました。さすがに、そんなことするお客さんは誰もいなかったですよね。でも、私とおんなじことを考えた方はいたよね、よね!?

 話を戻しまして、こういった朝倉部長の現実世界の重力を完全に無視したむちゃくちゃな飛躍発言の数々は、別に彼女を探しに来たわけでもないのに、不幸にもふらっと部室に寄ってきてしまったために彼女のワンマンステージに付きあわされることになってしまった演劇部後輩の椎名(演・一岡伶奈)と出口(演・野村みな美)の2人が来てもしずまることはなかったかに見えたのですが、彼女たちの「え……部長が卒業式にいなかったなんて、ぜんぜん気がつかなかったです。」「誰も騒いでなかったよね……」といったクールな証言によって次第に雲行きがあやしくなっていき、朝倉のクラスメイトである佐伯みちる(演・鈴木愛理)が現れたあたりから、完全に冷水をぶっかけられたようなスピードダウンにおちいってしまいます。

 誰も気にしてない。親友だと思っていた相手もそんなに親しくない。演劇の世界にひたっている自分の姿を見て周囲の人間の大半は気持ち悪がる。ヤンキーっぽい生徒・金子(演・萩原舞)にいいように使いまわされている。挙句の果てには、卒業式の後のお別れパーティに誘われていなかった……

 物語が進み、部室にさまざまな人間が顔を出していくにつれて、朝倉には驚くほどのつるべ打ちで、自分の思い描いているイメージとはまるで正反対の、現実の世界での卑小な実態をあばきだす発言がぶつけられていきます。上にあげたことのほかにも、朝倉の威勢をくじくあまりにも冷徹な事実は次々と提示されていくのですが、朝倉は演劇部の後輩として自分を慕っているはずだと一方的に思い込んでいる椎名と出口の前でこれらの現実を認めることだけは自分のプライドが決してゆるさないと、まったくフォローできていない状況の中でも必死に取り繕って虚勢を張り続けようとします。しかし、この部長のあまりにもぶざまな右往左往ぶりに振りまわされ、しかも彼女の無責任な助言によって大いに心を傷つけられる経験を味わってしまった2人の後輩は、ついに……

 だいたい、『さくらん少女』はこんな感じのお話になっていたのですが、あらためて見てみると、タイトルの「さくらん」に込められている意味の恐ろしさが身に迫ってきますよね。まさしく、本人の望むと望まざるとにかかわらず、ひとりの夢を見すぎた少女の「狂い咲き」のていがいやおうなく展開されていくのが、この『さくらん少女』の残酷すぎる見どころなのでした。

 この『さくらん少女』には、中盤の退場はあるものの、ほぼ出ずっぱりで独り舞台をつとめあげる中島さんと、その他の℃-uteメンバー4名、そして先ほど名前の挙がった演劇部後輩の2名の計7名が出演するのですが、出番の多さで言うのならば、中島さんに2人の後輩がついてきて、その後ろに鈴木愛理さんと萩原舞さんがついてくるかといったあんばいで、重要な発言はするものの、他のメンバーである岡井さんと矢島リーダーはちょっとだけの登場にとどまっていました。
 調べてみると、どうやら他の2作品にはハロー!プロジェクトとは直接の関係のない3名の女優さんが出演していたらしく、実際に彼女たちの演じていた女生徒の名前はしょっちゅうセリフの中に出てきていたのですが、この『さくらん少女』には彼女たち本人は姿を見せていません。

 そして、重要なのは中島さんをささえる2人の後輩が、ハロプロ研修生(旧称・ハロプロエッグ)の野村みな美さん(13歳)と一岡伶奈さん(14歳)だってことなんですね。つまり、『さくらん少女』は℃-uteとほぼ同年代の女優さんの共演がまったく入っていない、100%「アイドルだけのお芝居」になっている、ということなんです。100%アイドルというこの濃密さは、他のゲキハロ作品でもいまだかつてまったくなかった奇跡の数値のはずです。


 私の感じた印象を正直に言ってしまいますと、『さくらん少女』において出番の少なかった中島さん以外の℃-uteメンバー4名は、短時間と少ないセリフの中で、うまく自分たちのキャラクターを「できあがらせる」ことに成功していました(特に萩原さんのヤンキーっぷりは水を得た魚のようでしたね!)が、出番もセリフも膨大だった中島さんと2人の後輩は、ところどころで「息切れ」を感じてしまうような局面もあったように見受けました。セリフにつまってしまう、自分のセリフを言うまでにヘンな時間のあきができてしまう、早口すぎて聞き取りにくい部分がある、うんぬんかんぬん……特に、さすがに公演最終日だし午前の部を上演した後の回でもあったのでこなれたものはあったのですが、開演直後の中島さんの妄想全開の独り舞台にはところどころでエンジンのかかりを待つようなたどたどしさがあり、「イタいコ」になりきれない中島さんの正直さが見え隠れしていたような気はしました。そのへんに、「本業・女優」ではないウソのつけなさのようなものはあったわけです。野村さんと一岡さんもお芝居は初舞台だったらしいし! アフタートークでも触れられていたけど、2人はほんとに中高生には見えない外見の幼さだったなぁ~。

 だが、しかし。
 後半残り20分ぐらいからの中島さんのスパート具合を見て、これに感動しない者が果たしているのだろうか。

 自分の望んだ世界が現実にはまるで存在していないという事実に、そして自分の理想に賛同してくれる状況がひとつもないという事実に直面してしまった朝倉はクライマックスで、序盤の「ワンマン舞台」とはまったく本質の違う「ほんとうのひとり」としてのうそいつわりのない魂の告白を涙ながらに吐露するのですが、ここでの渾身のさけびを前にして観客は思わず息をのみ、ここまで作中の「朝倉かのこ」というキャラクターに血肉をあたえた中島早貴という人物のとてつもなさに直面してしまうのです。
 つまり、中島さんは自分の演じる人物の「大事なところをしっかりおさえている」と。ここさえできていたのならば、少々の技術のあ~だこ~だなんてファッキンどうでもいいことなのです。序盤のおぼつかなさだって、それが朝倉という人の「味わい」になるんですからね。

 そんな中島さんもさることながら、中島さんの演じる朝倉部長に最終的な決定的致命傷を与える役割をになった2人の後輩の根性のすわり方にも大きな拍手を送りたいです! 中盤まで単なる調子のいいツッコミキャラでしかなかった2人は、後半のある出来事がきっかけで猛然と朝倉部長に食いかかっていき、朝倉のプライドのかろうじて残されていた最後のひとかけらを突き崩すことに。このときの、観客さえもが凍りつくやりとりのものすごさは、演技では出しきれない、ほんとの事務所の先輩後輩ならではの息のつまり方があったと思います。そこをもって、キャスティングのいやらしさを指摘するつもりは毛頭ありません。だって、そのおかげで並大抵の女優さん同士ではなかなか観ることができない「一触即発の空気」が見事にできあがっていたんですからね! 当然、これは中島さんと2人の後輩、そしてこの3名がつむぎだした約1時間の細心の積み重ねがあったからこそ生み出された仕事なのです。

 あと、これはさすがに昨年にデビューした野村&一岡ペアと中島さんとの間には見られなかったのですが、やはり「アイドルやって10年間。」という、『プライベートライアン』のような死線をかいくぐった中にしか生まれない絆というべきなのか、どんなキャラクターを演じているのだとしても、℃-uteのメンバー同士のやりとりにはなんとも言えない「間の絶妙さ」というか、見ていて思わずホッと安心してしまう息のピッタリ感があるんですよね、誰が誰とからんでも! 今回の『さくらん少女』の場合は、うざったそうにする鈴木愛理さんに勝手に親友だと思い込んでいる中島さんがまとわりつく一連のやりとりが特に素晴らしかった!! 思わず『ドリフ大爆笑』の志村・加藤コントを観ているのかと見違えてしまうジャストフィット感がありましたね。

 いや~、すごいなアイドル。いやいや、その道をきわめた℃-uteがすごいんですね。

 もうね、現在の℃-uteくらいの域に達すると、「アイドル芝居」という言葉に対するイメージが180°逆転するものにおがめてしまうわけなんですね。
 つまり、「プロの女優」とはまったく違う道をたどってエンタテインメントの世界に生き残り続けてきた彼女たちである以上、そのお芝居はふつうの演劇の範疇からはちょっとはずれた、毛色の異なるものにはなります。
 異なるものにはなるんですが、アプローチの仕方は違ってもやっぱり、「観る人を感動させる」という最終目的地には必ず狙いあやまたずたどり着くものになるんですよね。そこがプロなんですよ、うん!

 でも、他の2作品での℃-uteメンバーの活躍っぷりは確認できなかったのですが、少なくとも今回の『さくらの花束』公演における中島さんのエネルギー消費量は絶対にとんでもないことになってますよ!? 心身ともに。
 それは、別にセリフが多いとか主演だとか毎回泣く演技が必要だとか、そういうふうに簡単に割り切れることではなくて、アイドルとしての番組収録とかコンサートイベントのお仕事もしっかりとはさみながら、10日間の日程の中で4日も「1日3回公演」のスケジュールをかかえながら、しっかりと毎公演で血のかよった「自分でない別人」を生み出しては送り出していくという、全体的な「生きるエネルギー」のものすごさなんですよね。ちょっと母性までも感じさせるような、壮絶な命の輝きですよ。

 中島早貴、いまだ未成年の19歳!! とんでもねェ~娘ッコだよコリャ。


 今回の『さくらの花束』は「特別公演」だったわけなのですが、劇団ゲキハロ……これは次回もチェックしなければなりませんな。
 キャパ800人クラスの劇場になったら、また作品の印象も変わってくるんでしょうけどね、とにかく今回の『さくらん少女』は大当たりだったな~。

 中島さんの演じた朝倉かのこというキャラクターは極端な例ではありましたが、人は誰でも、程度の差こそあれ若い時分に「根拠のないエネルギー」の放出に身をまかせる時期があり、朝倉かのこほどの急激さではないにしても、次第にその「根拠のなさ」と「現実の生み出す根拠」との差を知るようになり、その軋轢にきしむ我が身を鍛えて成長していくのだと思います。

 果たして、この卒業の日を迎えたあとに朝倉かのこがどんな女性になっていくのか。
 興味は尽きませんが、女優の道を目指し続けるのだとしても、あの日を境に憑き物が落ちたように別の生き方を選ぶのだとしても、どちらにしろ彼女が、ある通過儀礼をくぐり抜けた「より強い人間」になったことは間違いないでしょう。それはひとえに、ラストシーンで仙緑寺女子校の校歌を朗らかに唄う中島さんの笑顔が力強く証明しています。

 私はこの作品を観て思わず、大好きな辻村深月先生の短編『チハラトーコの物語』(講談社『光待つ場所へ』に収録)の主人公を連想してしまいました。それにくらべれば、『さくらん少女』のほうがだいぶ甘口で可能性にも満ちたお話になるわけなのですが、それでも、自分の理想を常におびやかす現実から時に逃げ、時に勇気をもってぶちあたる人物像には大いに通じるものがあったと思います。こういう、人間のしたたかさと愛おしさですよね。こういうのって、女性にしか描けない世界なのだろうか? いやいや、んなこたぁねぇだろ!


 「根拠のないエネルギー」。

 これね、ちょっとおぼえといてください。なぜならば、奇しくも私が『さくらん少女』の翌日に岡山で観たお芝居のほうでも、大いにそこらへんを突く内容になっていた!! ……と、私が勝手に思い込んでいるからなのであります。こっちも感動、したよね~!!


 っつう~ことでま、『さくらん少女』観劇でかなり幸先のいいスタートになった3月のひとり岡山ツアー、過酷さと孤独さと心強さとがぐっちゃぐちゃまぜごはん状態になった0泊3日の全貌は、また次回のココロだ~い。


 ……いつになったら終わるかな……っていうか、1月の備中高松城のほうは!?

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