長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

え、これ、池谷先生の遺作!?  ~実写映画版『銀魂』~

2017年08月02日 22時59分49秒 | 花咲ける「るろうに銀魂」ロード
 どうも、みなさまご無沙汰しております~。そうだいでございます。
 いや~、当ったり前のようにあっちいっすね。今年の夏も暑い暑い! でも、なんだかんだいってもう8月に入りましたか。実は、私の職場まわりで暑さでぶっ倒れた方がもう2名もいらっしゃるんですが、わたくしも本当に気をつけて日々あくせく働いておる次第でございます。この前なんか、週1のペースで2回も山形名物の山寺に登ってきてしまいました。1035段の石段でしたっけ。もちのろんで、どっちも見事な炎天下でしたねぇ。でもね、山寺自体は木陰もあってとっても涼しいところなんですよね。汗はそりゃまぁとめどないんですけれども。

 相も変わらず失敗、失敗で七転八倒しつつも毎日バタバタ生きておるんですが、やっぱり少しずつ仕事上の経験値は増えてきたようでして、精神的な余裕もできてきたようです。最近は大仕事の終わった時には山形県内の温泉地に泊まりに行く計画も立てられるようになりまして。
 先月は、月山の温泉に泊まりに行ってきまして、そのついでに前々から行ってみたかった「スタジオセディック 庄内オープンセット」(鶴岡市)にも行きました。日本でも有数の敷地面積を誇る時代劇撮影セットということで、戦国城郭の大手門に農村、宿場町などなど色々なオープンセットが常設されている場所でした。
 なかなかね、私が行った時は何の撮影もされていなかったのでただほっつき歩いて建物を見ていくだけだったのですが、ケチって買わなかったセット内バス乗車券も必要ですし、半日つぶすくらいのプランにしないと全部のセットは回れなかったですね。時代劇ファンにはたまらないんですが、できればもう毎日どこかで撮影やってるってくらいに繁盛して欲しいですよね……ちょっと山奥の土地ということもあって、当然お客さんはある程度いたんですが、どことなくさびれた感じはしておりました。可もなく不可もないいかにも観光地な味わいのご飯が大いに考えさせられるものがありました。不思議な場所だった……また行くかどうかは、わかんない!

 さて、今回は映画を観に行ったというお話なんですが、観たのはそりゃもう、どうにもこうにも避けて通るわけにはいかなかった、この作品!


実写映画版『銀魂』(2017年7月14日公開 131分 ワーナー・ブラザース)
 主要なストーリーは「カブト狩り(第83訓・84訓、第10巻)」のエピソードから「紅桜篇(第89訓~97訓、第11-12巻)」がベースとなっている。原作の主要登場人物のうち、お登勢や長谷川泰三などは本作に登場していない。

主なキャスティング
坂田 銀時    …… 小栗 旬(34歳)
志村 新八    …… 菅田 将暉(24歳)
神楽       …… 橋本 環奈(18歳)
桂 小太郎    …… 岡田 将生(27歳)
高杉 晋助    …… 堂本 剛(38歳)
武市 変平太   …… 佐藤 二朗(48歳)
来島 また子   …… 菜々緒(28歳)
岡田 似蔵    …… 新井 浩文(38歳)
近藤 勲     …… 六世 中村 勘九郎(35歳)
土方 十四郎   …… 柳楽 優弥(27歳)
沖田 総悟    …… 吉沢 亮(23歳)
村田 鉄子    …… 早見 あかり(22歳)
村田 鉄矢    …… 安田 顕(43歳)
平賀 源外    …… ムロ ツヨシ(41歳)
志村 妙     …… 長澤 まさみ(30歳)
結野 クリステル …… 古畑 星夏(21歳)
でに~ず店長   …… やべ きょうすけ(43歳)
青き衣の人    …… 清水 くるみ(23歳)
吉田 松陽(声) …… 山寺 宏一(56歳)

主なスタッフ
監督・脚本 …… 福田 雄一(49歳)
音楽    …… 瀬川 英史(52歳)
美術監督  …… 池谷 仙克(76歳 本作公開前の2016年10月に死去)
配給    …… ワーナー・ブラザース映画


 ……えぇ、特に前置きは抜きにして、さっそく本題に入りましょうかね、はい。

 もうね~、いつでしたっけ? 共に日本マンガ史上に燦然と輝く大傑作である、剣劇アクション時代劇『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』(1994~99年連載、2012年以降いくつかの番外編あり、2017年9月より続編連載予定)と、今まさに壮大な大団円を迎えつつあるという SF人情なんちゃって時代劇コメディー『銀魂』(2004年~連載中)とを、「明治維新という史実を基に自由に展開したフィクション作品」という共通項から比較していこうというくわだてをブチ上げたのって!?

 あの頃はヒマだった……「やりません」とは絶対に言いませんが、少なくともそんな時間は、今の私には無いのでありまして。でも、ほんとにやってみたいのよね、これ。

 原作マンガのことはさておきましても、両作はどちらも TVや劇場版という形でアニメ作品としても様々な展開をしており(これは2作品の共通項というわけではなく『ジャンプ』のヒットマンガ全ての常道ですが)、特に『るろうに剣心』は、連載終了後実に10年以上という時と世紀をまたいで2012年と2014年に大友啓史監督・佐藤健主演で実写版映画3部作が公開され、いずれも興行収入30億円超え、しめて約120億円というもんのすんごい大ヒットを記録しました。

 そしてついに今年2017年! すでにアニメ劇場版2作(2010、13年)を公開していた『銀魂』が実写映画版という禁断の扉を開けてしまう! さらに監督は、あの福田雄一監督!! ということで、これをスクリーンで観ないわけにはいかないわたくしなのでありました。いや、誰も絶対見ろとは言ってないんですけど、なんとなく、ねぇ。

 思えば、丸1年前の夏は、なにはなくとも『シン・ゴジラ』で熱狂していたわけでありまして、さぁ今年の夏映画はどんなフィーバーを提供してくれるのでありましょうかっと!


「おもしろかった! いろいろあったけどおもしろかった!」


 と、いうあたりでしょうかね、はい。

 おもしろかったよねぇ! うん、おもしろかった。私の他に観てる人も若い高校生くらいの人が多かったけど、声あげて笑ってるシーンもあったしねぇ。友達と一緒に見るにはもってこいの作品なんじゃないでしょうか。デートに向いてるかっていうと、そりゃけっこうな趣味の親和性がないと気まずくなっちゃうかもしれないけど……

 実は、個人的に「福田雄一監督」という部分でかなり気構えているところがありまして、前に観たあれのように「金かえせ」というところまでいっちゃったら哀しいなぁという思いを抱きながら劇場に足を運んだのですが、いや、ぜんぜん大丈夫! 終始にこにこと穏やかな表情で観終えることができました。


 今回の実写映画版の良かった点は、やはり「本気でバカなことをやっている俳優さんが多かった」という点と、「原作マンガのテンポに極めて近いスピーディなカット割りが随所にあった」という点。この2つに尽きると思います。

 俳優さんがたに関しては申すまでもありません。主人公・坂田銀時役の小栗旬さんの疲れた演技は「カッコいいのに確かに中年にさしかかっている男」という絶妙なラインを突いており、カブト狩りのシーンや村田兄妹、平賀源外との会話シーンを見てもわかる通り、実は作品の中でいちばんツッコミの引き出しが多いキャラクターであるという銀時の本質を的確に掴んだ八面六臂の大活躍をしております。今を時めく大スターである小栗さんであることもあってか、主人公でありつつも実は全編出ずっぱりというわけではなく、ちょいちょいしばらく出てこないこともある銀時なのですが、出ればちゃんと画面を引き締めてくれるので、存在感が薄れるという印象は全くありません。
 ほんと、小栗旬というお人はものすんごい役者さんだぞ……そりゃルパン三世も織田信長もやれるわ。軽い演技で魅せるって、天性の魅力とそうとうな努力のどっちも必要なんですよね。

 ゲ……ヒロイン・神楽役の橋本環奈さんの、この作品に賭ける「観る人全員をすべからく心配にさせる」入魂の演技も最高でした。これはね……「全てのキャリアを賭ける」とは、こういうことなのでしょうか。一体何が彼女をそうさせたのでしょうか。「実は戦闘民族」という、アクション面でまったく言い訳のきかない部分もかなり良かったですよね。来島また子との戦闘シーンのあのくるくる! 超余裕で敵をもてあそんでいるという無邪気さが実に見事でした。でも、橋本さんはアニメ版を礼儀正しく踏襲していながらも、しっかりと「ハスキー」というオリジナルな要素を神楽に加えていたのが素晴らしかった。単なるアニメ版の実写変換で終わらせない新たな神楽像の誕生をみましたね。

 あとは、あの屈指の名エピソード「カブト狩り」を映像化しただけあって、真選組の面々というか、近藤・土方・沖田の3人揃い踏みが実写化されたのはうれしかったですね。沖田は多少「どS」という要素を発揮するシーンが少ないとは感じましたが、土方は「いるだけでものすごく安心できるナンバー2」という存在感をいかんなく放ちつつも、ヘビースモーカー(当時)で尋常でないマヨラー、しかもあの近藤のおもり役という重責など様々な生活習慣から推察するに、確かにそのくらい疲れた感じでにごった目つきにはなるかなという説得力たっぷりの外見になっていました。さすがはヤギラさんです。
 そしてもう、橋本さんとゆうにタメをはるくらいに身体を張った演技をしてくれた六代目ときたら、もう……お父様に勝るとも劣らない役者馬鹿ぶりを拝見した思いで、目頭が熱くなってしまいました。モザイクかけてても、「あ、この人、ほんとにはいてない。」ってわかるもんなのね。私も男ですが、ちょっとひいてしまいました。

 この実写映画版の中核ストーリーをなす「紅桜篇」は、村田兄妹の作刀にかける情熱と岡田の攘夷志士たちへのゆがんだ愛憎が事件の引き金となっている長編エピソードなので、そのあたりに力が入ることは当然なのですが、やはりその中でも、単なるイロモノのようで実はそうではないという刀匠・村田鉄矢を演じた安田さんは、さすがという演技力の高さを見せてくれたと思います。
 セリフ全部を大声でしゃべるって、そう設定した原作の空知先生は、もしかしてそうとうな演劇マニアなんじゃないかってくらいに俳優さんにとって難しい負荷の掛け方で、言い方の小細工がまったくきかなくなるハードルなんですよね。それを重々承知した安田さんは、目の演技で見事にこの難題を乗り越えてくれたと思います。
 それにしても、今回この作品を観ていちばんびっくりしたのは、そういった安田さんの「目とアゴの開閉を異様にオーバーにする演技」が、ちょうど『仮面ライダー』であの稀代の名キャラクター「死神博士」を演じておられた頃の天本英世さんにそっくりだったってことでした!! そうか、天本さんの演技メソッドって、そういうことだったのか! どういうこと!?
 いや、死神博士はあんな大声でしゃべらないんだけど、顔の筋肉の動きがそっくりなんだよなぁ。天本さんはそんなに己に負荷をかけながら演じていたんだなぁ……いや、ただ単に下の歯が無かったからしゃべりにくかったってだけなのかもしんないけど。

 「スピーディなカット割り」っていうのはもう、「カブト狩り」の真選組3段ボケの展開とか、来島の「ほんとに吐いたー!!」の切り返しとかですよね。そりゃもう、観て確かめてもらうしかないっていう、ギャグマンガの見事な映像変換でした。実写化する時には、やりすぎかってくらいにカット割りを素早く細かくしないとマンガに追いつかないんですね。マンガにっていうか、人間の脳の理解スピードに追いつかないんだろうなぁ。ただ、そればっかりやってて2時間ちょいは、作る側も観る側も苦行でしかないわけで、そういった技法を要所要所にどう配置するかという構成力が肝要になってくるのでしょう。その点、今作は原作のいいところを巧妙に拾い上げてある程度の成功をおさめていたかと思いました。


 さぁ、まぁそんなこんなで「実写映画版『銀魂』、すっごくおもしろかったヨ! 『銀魂』サイコー♡」と穏便にしめたいところなのですが、そうは問屋がおろさねぇのがこの『長岡京エイリアン』と申しますか……わたくしのカルマっちゅうかなんちゅうか本中華。

 いや、とにかく今回は「おもしろかった!」という大前提の上で、「でも、ちょっぴり気になった点がある。」という視点に立脚して数点挙げさせていただきますので、決してわたくしめが目くじら立てて「ふざけんな!」「つまんねぇ!」と怒っているわけでは決してありません。
 っていうか、数年前のあれだって、そんなに怒ってたわけじゃないんですよ……でも、「良かった点」と「良くないと思った点」をきっちり2つの記事に分けちゃったのは確かに失策でしたでしょうか。片方の記事だけ読むと私がむっちゃくちゃ怒ってるようにしか感じられないんだもんなぁ。いやー、若かった、そしてヒマだったな、当時の私。自転車こいでちょっと遠くの映画館か。自転車自体、もう全然乗ってないなぁ。


 気になった点はね、実は良かったと思う点と表裏一体なんですよ。やっぱり、「一部の役者さんの扱い方」と「カット割り演出」なんです。いや、ただし今回は役者さんの資質に責任があるというのではなく、キャスティングと各自への演出に問題を感じた気がしました。

 「一部の役者さん」ていうか……私が気になったのは2人だけなんですけれどもね。
 そのうちの1人は、まぁ、やっぱり堂本剛さんの高杉晋助なんだよなぁ。

 わーぁたっ、いやいや、ちょっと待って! 話せばわかる!! 私は別に堂本さんがダメだとか言うつもりは毛頭ないんです!! そんな巨大なコンツェルンパワーを相手にどうのこうの申し上げるほど私もタイトロープダンサーではない!

 最初に「高杉に堂本さん」という報に触れた時、私は原作マンガの高杉というキャラクターの内、確かに「チャーミングな部分」もあることから、そこをオリジナルに膨らませた新しい高杉像を実写版で立ち上げるために堂本さんをキャスティングしたのだろうとみて、他のどのキャスティングよりも冒険的な采配になると予想して勝手に楽しみにしていたのです。

 ところがふたを開けてみれば、実写版の高杉像はいかにもアニメ版のトレースもいいところ。特に何のアレンジも無く、原作マンガかアニメ版における描写のまんま実写化という印象しか受けないシーンの羅列で終わっちゃったという感じなのです。
 最後の銀時との対決シーンは、確かに殺陣としては小柄な堂本さんの体型を巧みに取り入れた説得力のある戦闘スタイルではあったのですが、う~ん、小栗さん演じる銀時と互角に戦っているとはちょっと見えない戦力差を感じました。だいたい、着流し姿の素手で自分よりも大柄な人物と戦おうとすること自体が最初っからちとキビしい。
 『銀魂』や『るろうに剣心』にかぎらず、少年マンガに登場する悪役って、なんだかんだいっても結局は肉体的に主人公と渡り合える「マッチョさ」を持ってないといけないっていう縛りがありますよね。それで原作マンガの高杉も宇宙人のフリーザみたいな別次元の強さを持った生物と互角に戦わなきゃいけないみたいなハメに陥っているわけなのですが、そこは堂本さんが新しい世界を切り開いて、「強さに頼らない強敵」にして欲しかった……でもそれって難しいですよね。あのジョーカーさんだってちょいちょい筋肉モリモリになっちゃう時代だからなぁ。

 わっかんねぇんだよなぁ。確かにネームバリューや小栗さんの対極という意味で堂本さんの起用は非常に良かったと思うのですが、あの堂本さんをして、あの平凡もいい所の悪役演出。キャスティングした人は、あの堂本さんのどうにもこうにもぬぐいがたい「チャーミングさ」をどのくらい重大に捉えていたのでしょうか。しかもパンフレットの堂本さんご本人のコメントを参照すると、堂本さんは製作スタッフから「すね毛を剃ってくれ」という指示を受けていたようなのです。
 すね毛を剃れ……? それで、作中みたいなクールな悪役になれって? 一体どういうことなんだろう……かわいい外見と中身のギャップを見せたかったのか? いや、どうしたって外見のかわいさしか前に立たないだろう。ちょっと悪ぶったファッションにこりだしたゲゲゲの鬼太郎にしか見えないんですけど……
 だいたい、はっきりと顔を見せないまま中盤まで引っ張りに引っ張って、その上で満を持して神楽にその顔を見せるシーンからして、かなり安っぽい CGで堂本さんの瞳をヘンなピンクか紫かで光らせてたでしょ。なんだよ、それ! そういう CG処理の仕方って、ハナっから堂本さんの表情の演技に期待してないってことなんじゃないですか? 日本一の奈良県民・堂本さんに対して失礼だぞコノヤロー!!

 CG ね。私の偏見なのですが、どうも福田監督は、自作におけるCG 処理に関してちょっと甘いんじゃなかろうかと思えるフシがあります。今回は岡田が妖刀・紅桜に浸食された状態でのメカメカしいコード類の描写が残念で仕方なかったような気がしました。まるごと安っぽい CG頼みみたいな。そんなん、エリザベスの着ぐるみの撮影シーンひとつひとつにちまちま CG処理してる場合じゃないですって! もっと他にやるべきことがあるんじゃなかろうかと。

 う~ん……一言でいえば「堂本さんの無駄づかい」ということなんでしょうか。堂本さんを起用するんだったら、それなりに『るろうに剣心』で志々雄真実を藤原竜也さんが演じたようなアプローチとはまったく違う悪役像を創出するべきだし、堂本さんは間違いなくそれができる貴重な人材であると思ったのですが。どだい、かわいらしい人が魔人・子安武人とおんなじことをしたところでなんにもならないのです。

 さて、堂本さんの他にもうお1人、「これはどうか……」と思った役者さんというのは……もう、いっか、触れないようにしましょうかね。えぇ、えぇ、あのお人でございますよ。
 わかんない……福田監督も空知先生も、なんであの方をあれほど高評価しているのかがさっぱりわかんない。これはもう、私の感性が合わないんだろうなと判断いたしまして、正面きって「あの人やっぱりつまんない!」とは申しません。ご本人も、パンフレットで「全責任は福田が取りますので、私には優しくしてください。」とおっしゃっておられますし。
 前に見た時みたいに「誰かの物まね」という感じは無かったのですが、あれ、長回しにして全部使うほどおもしろいやり取りなのだろうか。少なくとも、私が見た回の客席から笑い声は上がらなかった。

 演出が、いい部分もいいと思わない部分も、やっぱり TV的なんですよねぇ。私がいいと思ったのはコントや TVCMで見られるような計算されつくした繊細なカット割り演出で、良くないと思ったのは、とりあえず芸人さんに何かやらせてそれをだらだらとカメラを回して撮り続けるようなバラエティ番組的手法なんです。そのどっちもが混在しているところに、福田監督の手法の惜しげもないオンパレードと同時に、その限界もはっきり見えているような気もするのですが、いかがでしょうか。

 さっきは CGに甘いと言いましたが、福田監督は俳優さんにも甘いような気がしました。ある俳優さんはパンフレットで「演出と言えるかも疑わしい」と語っていますが、和気あいあいとした撮影現場の空気が、シャープな演出や映像の編集を拒んでいるというか。小栗さんのアントニオ猪木の物まねとか源外の工房での赤い彗星ネタとか、やけに時間をたっぷりとって作中に出てきましたが、それなんなんだろうと。どうにも来てもらった役者さんの顔を立てるためだけにノーカットで使ってるとしか思えない時間があるんですよね。
 むろんのこと、そういうひどい脱線は原作マンガでもよく見られる風景ではあるのですが、原作マンガはたいてい無理矢理ともいえる手法で本筋につなげてくる異常な「筋の通しっぷり」があり、またそこが『銀魂』の『銀魂』たるゆえんであるわけです。

 そして、私が何よりも気になったのは、その「どれが本筋でどれが末節なのかがさっぱり読めてこないマングローブ感」が実写映画にあんまりなかったこと。それに尽きるのでした。本筋はひたすらに単純で、意味の無いシーンはひたすら意味が無いという徹底した空虚化。
 でも、これを空知先生以外の誰かに要求するのはどだい無理な話なのでしょうか。ましてや、決まった予算や製作スケジュールの中で起承転結を2時間前後におさめなければいけないし、アニメ劇場版の『新訳紅桜篇』のように無尽蔵にキャラクターを総登場させるわけにもいかないし。

 でも……少なくとも私は、お登勢さんもさっちゃんも長谷川さんも出てこない『銀魂』はちょっと……こざっぱりしすぎてるかな、という気はしました。あ、あと山崎さんも。


 ただ、これはもう「福田監督がそこをチョイスしたのだからしょうがない」と受けとめて、空知先生の語るように「福田さんの銀さん像なんだな」と見るべきなのです。何よりも、とかくやたらとマンガ作品の実写映像化が粗製乱造される昨今において、あの『銀魂』をここまで見事に実写化しおおせた剛腕を無条件に讃えるべきなのではないでしょうか。
 いや、無理矢理いい感じにまとめようとしてるんじゃなくて、本気でものすごい仕事だったと思うんですよ! だって、あんなにかわいい女の子が鼻ほじるわ〇〇吐くわ、歌舞伎界のサラブレッドが全裸になるわの乱痴気騒ぎなんですよ!?

 あ、最後に申し訳程度に実写映画版『るろうに剣心』との比較をちらっとやっときますが、この作品は志村姉弟の「あんまり流行ってない剣術道場経営」という要素を、ものの見事に「セリフ処理」だけで済ませて道場のセットを1ミリたりとも映像化しなかったところと、両作を比較する上での超重要参考人である「河上万斉」の存在を完膚なきまでカットしていたところに、かなり神経質に共通項になりそうな部分を回避しようとした意図を感じました。
 よく考えてみりゃ、どっちもワーナー映画なんですもんね。そりゃかぶらせて得なこたぁねぇか。だいたい、万斉の鋼鉄三味線みたいな攻撃するひと、『るろうに剣心』に出てましたよね。あれ、でも実写映画版ではそんなにその戦い方を前面に押し出してはいなかったっけな? 綾野さん。もう設定がこんがらがってわけわかりません。


 この夏、「最初で最後の実写化!」という啖呵を切った本作が30億円の大台に届こうかというスマッシュヒットとなり、仰々しくタイトルのおしりに『第1章』とかいう余計な文言を加えた作品がシケた花火になりそうという逆転現象も起きているわけですが、もしこの実写版『銀魂』に続編があるのならば、そしてそれに福田監督が引き続き登板するのであるのならば、それはぜひとも『ミツバ篇』のようにショートドラマシリーズの形式をとった方がいいのではなかろうかという気がしました。そっちのほうホーム戦っぽいですよね。

 まぁそんなこんなで、実写版『銀魂』、非常におもしろうございました。ありがとうございます!


 ……んで、「るろうに銀魂」企画はいつ始めるんでしょうか? まぁ……気楽に筆霊が降りるのを待ちましょ。荒俣先生はいい言葉考えつくなぁ!

 荒俣先生といえば、1988年の『帝都物語』では、池谷先生は特殊美術をやってらっしゃってたなぁ。『銀魂』の江戸は「帝都」ではないようなんですが、最後の仕事も江戸でしたねぇ。
 実相寺監督もユーモアを大いに解する方のようでしたから、お元気だったら絶対に『銀魂』の実写化に名乗りを上げてたと思います! でも、それがおもしろいかどうかは……黙祷!!

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