長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

意外となにもなかった世紀末 『1999年の夏休み』

2010年10月03日 10時28分00秒 | ふつうじゃない映画
 おはようございます、そうだいです。雨が降るとか言われていたんですが、今のところはさわやかな秋空が広がっている晴天ですね。今日は東京やらなんやらいろんなところに行く用事があるので、私としてはなるべく天気は悪くなってほしくない……この前、新宿の韮沢靖さんのイベントに行った時はかなりキッツい大雨だったからね!
 話は変わるんですが、最近、映画を観てないなぁ。先月の『帰ってきたウルトラマン』オールナイトは別として、現在公開中の映画となると、『東京島』以来1ヶ月ほどごぶさたでしょうか。今月はねぇ……興味のあるものはあるんですけど、なかなか映画館まで行って1800円を払って観るかっちゅうとなかなか難しい。『大奥』はたぶん観るんでしょうがそんなに急ぐつもりもないし、最近なぜか多いゾンビ物もなんかちょっと。『ハナミズキ』『君に届け』なんか、映画は1人で観たい私にとってなんの楽しみもありゃしません。『食べて祈って恋をして』……あのぉ、観てないのに言うのもナンなんですが、制作する時代が違うのでは? 今の日本、そんな映画がヒットするほど景気よくないんじゃないの?
 いろいろあるんですが、『悪人』もなかなか話題になっていますね。主演のお2人の評判がよろしいようで。
 ほんとにおきれいな深津絵里さんなんですが、実は私自身は、あんまり関心がありません。これはたぶん、『踊る大捜査線』や『西遊記』などの深津さんの活躍したTVドラマをまったく観ていないからなのだと思います。「きれいな女優さん」ってだけの印象しかなくて、どんな演技をするお人なのか全然知らないんですね。
 このように深津絵里さんの出演作はまったく観ていない私なんですが、水原里絵さんの出演作は1本だけ観たことがあります。1988年に公開された映画『1999年の夏休み』です。この映画はもう何っ回も観たね! こりゃもう、とてつもない作品ですよ。
 はいそうなんです。深津絵里さんがまだ15歳だった時に、「水原里絵」という芸名で出演したのが『1999年の夏休み』なんですねぇ、ハイ。
 この映画は不思議な映画です。いろんなものが、推理小説のトリックのように幾重にも入り組んでいるような構造になってるんですね。
 最初に、この『1999年の夏休み』には原作があります。1974年に発表された少女マンガの金字塔『トーマの心臓』(原作・萩尾望都)です。とはいえ、『トーマの心臓』は「1999年」を舞台にした物語でもないし、季節も「夏休み」じゃありません。寒い冬のドイツの物語なんです。要するに、主要登場人物の関係と物語の骨組みだけをいただいて別のパッケージに入れた映画なんですね。監督は、のちに『平成ガメラシリーズ』を大ヒットさせ、『デスノート2部作』などの話題のエンタテインメント大作を立て続けに手がけることになる、金子修介。当時はまだ映画監督デビュー4年目という時期でした。
 金子監督は『トーマの心臓』原作の萩尾先生の許可を得た上で、あくまで「翻案」という形にこだわったために原作のクレジットはおこなっていません。しかし、季節などの設定はまったく違っているものの、脚本を担当した劇作家の岸田理生による言葉の数々は、原作のやりとりを丁寧に拾い上げてつむぎ出された、時に美しくまた時には謎に満ちたものになっています。
 少女マンガの伝説的名作という、わりかしガッチリした背景を持っていながら、この映画はひたすらにオリジナリティにあふれています。
 まず、舞台が近未来の1999年。確かに映画の制作された1988年当時から見れば近未来ですけど……今、2010年ですからね。日本のどこか、さわやかなシラカバに囲まれた山奥の避暑地にある全寮制の学校が舞台ということで、いかにも未来って感じの舞台装置や衣装はあんまり出てこないのですが、当然ながら携帯電話はありません。公衆電話やゴッツいパソコン、原子力で動いてるらしい高原鉄道は出てきます。そのへんの「想像しました」的近未来がいい感じ。
 その他のこの映画の特徴といえば、やはり何と言っても「男4人しかいない登場人物の役者が全員、女優」というところに尽きます。登場する4人はみんな学校の生徒なんですが、夏休みということで、寮にはそれ以外の生徒も大人の先生さえいません。そうなったら人里離れた山奥でのこと。本当の男子しかいなかったらとんでもない乱痴気騒ぎケイオスシティになりそうなもんなんですが、その4人を演じてるのが当時14~17歳の男装した短髪の美少女たちなんだから、寮はもうお耽美カラーまっしぐら。こんな映画がすでに制作されちゃってるんだから、あなどれねぇぜ1980年代。物語は基本的に愛する愛さないの3角関係に苦しむ3人の男子(見た目は完璧に女子)と、なにかとカヤの外にされることから逆にちょっかいを出そうとしてトラブルメーカーになってしまうドジっ子男子1人によってつづられていくのですが、出演している4人の女優さんの中で、2010年現在、もっとも多くの人にその美貌をたたえられている深津絵里さんが、その中でなぜかドジっ子の役を演じているんだからおもしろい。ちなみに役名は「ノリオ」です。うーん、いかにもカヤの外。
 しかしまぁ、短髪に半ズボン、男言葉の女子って……倒錯してますなぁ。しかも芸のこまかいことに、まだ男の子みたいなあどけなさの残っていた深津さん以外の3人の女優さんの声は、男子らしい発声のできる声優さんがアフレコであてています。さらに芸の細かいことに、物語のキーパーソンとなる宮島依里さん演じるキャラクターは、外見がそっくりという設定で都合3人登場する(1人3役!)のですが、もっとも出番の多い1人の声は声優さん(あの高山『名探偵コナン』みなみ!)で、それ以外の2人は宮島さん本人の声になっているというこだわりよう。でもこれ、当然ながら同じ顔の人物でも声が違ってるもんだから、不思議な違和感と同時に「さっきの人とは別人だ」という情報がすんなり伝わってくるんですよ。うまいもんだなぁ、金子監督!
 『1999年の夏休み』……まだまだ全っ然語り切れてないんですが、とにかくヘンな映画です。『トーマの心臓』でご存じの方も多いでしょうが、ストーリーもほんとにおもしろいです。でもそれ以上に、お耽美な雰囲気がとんでもない濃度で充満してるというインパクトが強いんですよね。澄んだ湖の蒼さ、夕焼けの茜色、森の朝霞……そしてそれに静かに重なるピアノの美しい旋律。
 この映画を深夜に初めて観た時、私はあまりのこっぱずかしさに前半30分はずっと自分のノドをかきむしっていたのですが、最後には素直に画面の美しさに感動してしまっていました。まだ観ていない方、観てみることをおすすめいたします。不思議なひとときを過ごせますよ。まぁ、フィクションの中の同性愛だからこそのきれいさなんでしょうね。女優さんだし。

 あんまり、未来であるということにこだわりのなかった『1999年の夏休み』だったのですが、かくいう私自身の過ごした本物の「1999年の夏休み」の実態はどうだったのかというと……

 運転免許をとるために毎日自転車で自動車学校に通ってました。

 そんなもんだろう! みなさんも、そんなもんだったでしょ!? ノストラダムスも北斗神拳もなかったよねぇ!

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