長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

2012年最初の映画はあえてこれだ  『源氏物語 千年の謎』 ぞ之帖

2012年01月07日 15時25分19秒 | ふつうじゃない映画
 わお~、今日も乾燥してるぜぇ~!! どうもこんにちは、そうだいでっす。
 ホンットに毎日毎日、判で押したように青空に寒風が吹きわたる好天が続いてねぇ。悪いことじゃないんですけど、くれぐれも火の元と流行り病には気をつけましょう。


 さてさて前回は、私が2012年お初の映画鑑賞に選んだ『源氏物語 千年の謎』(原作・高山由紀子 監督・鶴橋康夫)についてのあれこれを語っていたのですが、特に「不満」の部分が爆発しかけたところで文量が尽きてしまいました。まぁ、前半で関係のない「初もうでサプライズ」を長くやってしまったせいなんですけど。今年もいい年になりそうだわ!

 すでにふれたのは、この『千年の謎』が平安時代の古典文学『源氏物語』をそのまま映像化したというものなのではなく、そこと、その『源氏物語』を執筆する宮廷女官・紫式部のいる現実の世界とが並行して展開されていく、作者の高山由紀子さんオリジナルの作品なのだということでした。そして、本来は1人の小説家の創作したキャラクターにすぎなかったはずの「光源氏」や「おんなたち」が、誰もが予想だにしなかった絶大な影響力をもって現実の世界に浸出していく流れがこの作品の真骨頂であるはずだったのです。

 ところが! この映画はそのへんの「2つの世界」をちゃんと描きわけていないんです。そのせいで、それらが融合しかねない状態になることの恐ろしさからくるスリルがきいてこないのよねェ。 もったいない!

 で、その責任はやはりなんといっても、映画の製作スタッフの「平安時代を2時間ちょい再現させることで手一杯で、作品のおもしろさを尊重して2つの世界を描き分けるまでの余裕がまったくなかった。」という部分が大きいんじゃないかと思うんですけど、それと同じかそれ以上に、

「『源氏物語』の世界の登場人物と、現実の世界の登場人物との違いがまったくわからないキャスティング&演出」

 という問題も実にデカかったんじゃないかと思うんだなぁ、あたしゃ!
 つまり、作品を作る以前での役者さんがたの人選の段階でも、製作中の演技指導でも、「架空」と「現実」の違いを楽しむという冒険がまったくなされていなかったというところこそが、『源氏物語 千年の謎』がいまいち脚本の良さを活かせていない最大の原因だったんじゃないかと。

 ただし、私はこの『千年の謎』に出演した役者さん全員をいちがいにけなすつもりは1ミクロンもありません。むしろ、「素晴らしい!!」とおしみない賞賛を与えたい女優さんもいらっしゃったのです。

 まずはちょっと、この作品に登場した「架空」と「現実」の両面での登場人物と俳優陣をご覧いただきましょう。
 例によって、すてきなレディのみなさんのご年齢をあけすけに記載してしまうことをご容赦ください。
 あと、一覧のうち、左側にあげた平安時代の人物の年齢は「数え年」で、右側にあげた現在ご活躍の俳優陣の年齢は「満年齢」になっています。つまり、両者で「1歳ほどの年齢差(数え年のほうが多い)」があることもご容赦ください。歴史上の人物は誕生日がはっきりしていない方々が多いんです……


『源氏物語』の世界での登場人物

光源氏(17~25歳)             …… 生田 斗真(27歳)
 ※光源氏は50代中盤で天寿を全うする
桐壺更衣(光源氏の生母)          …… 真木 よう子(29歳)
 ※桐壺更衣は光源氏が3歳の時に早世している
藤壺中宮(光源氏のあこがれのひと)    …… 真木 よう子(二役)
 ※光源氏の5歳年上で、義母にあたる
六条御息所(光源氏の愛人)         …… 田中 麗奈(31歳)
 ※光源氏の7歳か17歳年上で、義理の姉にあたる?
葵の上(光源氏の正妻)            …… 多部 未華子(22歳)
 ※のちに光源氏のライヴァルとなる頭中将(とうのちゅうじょう)の妹
夕顔のきみ(光源氏の愛人)          …… 芦名 星(28歳)
 ※光源氏より年上で、頭中将の側室でもある
桐壺の帝(光源氏の父)            …… 榎木 孝明(55歳)
 ※実在した醍醐天皇(だいごてんのう 885~930年)がモデルだと言われる
頭中将(光源氏の義兄)            …… 二世 尾上 松也(26歳)
 ※『源氏物語』の中での藤原家の貴公子
左大臣(光源氏のしゅうと)           …… 竹嶋 康成(43歳)
 ※『源氏物語』の中での藤原家の当主
惟光(これみつ 光源氏の乳兄弟で腹心)  …… 若葉 竜也(22歳)
 ※光源氏とほぼ同年代
弘徽殿女御(こきでんのにょうご 光源氏の義母)…… 室井 滋(53歳)
 ※光源氏の最大の政敵
王命婦(おうみょうぶ 藤壺中宮の侍女)    …… 佐久間 良子(72歳)
 ※光源氏と藤壺中宮との密会をとりついでしまう


現実の世界での登場人物

紫式部(『源氏物語』の作者、本名不明)     …… 中谷 美紀(35歳)
 ※藤原道長の長女・彰子(しょうし)の家庭教師
藤原 道長(左大臣、藤原家当主)        …… 東山 紀之(45歳)
 ※一条天皇の中宮・彰子の父
中宮彰子(一条天皇の正妻)           …… 蓮佛 美沙子(20歳)
 ※紫式部の直接の主人
一条天皇(時の帝、中宮彰子の夫)        …… 東儀 秀樹(52歳)
 ※「桐壺の帝」のモデルと言われる醍醐天皇のひ孫にあたる
藤原 行成(ゆきなり 参議)            …… 甲本 雅裕(46歳)
 ※道長の腹心で、一条天皇の信頼も得ている
安倍 晴明(いわずと知れた日本一の陰陽師)  …… 窪塚 洋介(32歳)
 ※道長の未来を予言したり怨霊を退散させたりする謎の男
晴明の式神(2人の美女の姿をした使い魔)    …… Mari & Eri (28歳 双子デュオ)
 ※宴席で晴明の客に酒をついだり「キャハ☆ キャハ☆」と笑ったりしてキャバ嬢の機能を果たす
藤原 伊周(これちか 准大臣、道長の最大の政敵)…… 佐藤 祐基(27歳)
 ※おどろおどろしい怨霊となって道長に襲いかかるが、実は!?


 まぁ~、こういった豪華なラインナップとなっているわけです。

 前にも触れたように、『源氏物語』のほうは長大な全編のうちのごくごく前半、主人公・光源氏の若き日々をたどるにとどまっているため、『源氏物語』最大のヒロインともいえる「紫の上」は登場すらしていません。

 おおむね『源氏物語』パートは、ストーリーラインも波瀾万丈だし、キャラクターもきわだった個性派ぞろいだったしで、非常におもしろかったです。というか、さすがにこっちの光源氏とそのおんなたちに魅力がなかったらイカンですよ。

 いや~、なんと言っても田中麗奈さんは素晴らしかったねェ~!

 最初、キャスティングを知った時に、

「えぇ~、童顔の麗奈さんが年上の愛人をやるの? しかも、あの六条御息所? 大丈夫かいな~。」

 といらぬ心配をいだいてしまったのですが、田中さん、たいっへんにご無礼いたしました!!
 確かにお顔こそ、若い頃からいささかも変わらず「むきたまご」のようにつるっとした田中さんなのですが、そこをおぎなってあまりありまくりの、その大人な演技!! 女優とはこのことだ。

 まさしく『源氏物語』前半の最重要ヒロインとも言える六条御息所を、この上ない気品と情念をもって演じきられていたと思います。田中さんの出ているシーンはすべて良かったですね。
 欲を言えば、「生き霊」となった六条御息所を描写する時の CG技術中心の VFXがちょっと邪魔だったということでしょうか。ああいった恐ろしさは田中さんのたたずまいと演技だけで充分。

 そんな感じで、私の中での『千年の謎』MVP はダントツで田中麗奈さんだったのですが、

「あぁ、わたくしはなんという不幸な運命のもとに生まれたのだ……」

 という、60億の生きとし生ける地球人全員が吉本新喜劇のようにズッコケる必殺ギャグを平然とのたまう光源氏役の斗真くんも素晴らしかったですね。色男の「愛すべきアホっぽさ」を見事に体現していたと思います。


 さて、と……『源氏物語』パートについてはここまでにしておきまして。

 問題は「現実の世界」パートなのよね。

 ちょっとですね、私が調べてみた下の情報をご覧いただきたい。


『源氏物語 千年の謎』の時代設定

紫式部の家庭教師着任(1005年1月?)から退任(1014年6月?)まで

この時期の各人物の年齢
 紫式部  …… 28?~45?歳
 藤原道長 …… 40~49歳
 中宮彰子 …… 18~27歳
 一条天皇 …… 26~32歳(1011年7月に崩御)
 藤原行成 …… 34~43歳
 安倍晴明 …… 85歳(1005年10月に死去)
 藤原伊周 …… 32~37歳(1010年2月に死去)


 ここで、なにはともあれ最初にまず注意しておきたいのは、上にあげた歴史上の実在人物たちのうち、紫式部だけが正確な生没年も、いちばん肝心な『源氏物語』の執筆時期も確定していない「?」だらけのままになっていることです。
 これはやはり、それ以外の人々が男女、政治家であるなしに関わらず、当時の公式資料に頻繁に取りあげられる国家にとっての最重要級人物であったのにたいして、「中宮彰子サロンの家来のひとり」に過ぎなかった紫式部が公的な場の主人公になることがまったくと言っていいほど無かったことが大きいのではないかと思います。
 そういうこともあるから、上の一覧もいちおう「10年間」という範囲を決めているのに、紫式部の年齢だけに大きなふれ幅があるんですね。

 とにかく、紫式部の生涯は具体的な時系列がはっきりしていない部分が多すぎて、生まれた年も亡くなった年も、彰子に仕えていた期間さえもボンヤリしているという現状。そんなことなので、ましてやあの大長編小説『源氏物語』を彼女が「いつごろから書きはじめて、どのくらいの時間をかけて完成させたのか」などという問題は、まったく新しい歴史的発見がないかぎりは薮の中という感じになっているのです。極端な話、「『源氏物語』の作者は紫式部ではない」っていう説も出ているくらいなんですからね!

 つまり、忘れてならないのは、この高山由紀子さんの作品『源氏物語 千年の謎』の中でいう「紫式部が中宮彰子の家庭教師をつとめていた時期に、藤原道長の命によって『源氏物語』を執筆した。」という設定が歴史的事実であるわけでは決してない、つまりは、高山さんの創作だということなのです。
 もちろん、将来に何かの史料の新発見によって否定されない限り「そうだった可能性」はあるのですが、現在主流となっている考え方では、少なくともこの『千年の謎』であつかわれているような『源氏物語』の前半部分は、彰子に仕える以前に書き上げられていたのではないかと予想されているようです。道長さんの命令じゃなかったのか。


 前置きはここまでにしておきまして、私がやっぱり触れずにおられないのは、この時間設定に間に合わせるために生きていたとしか思えない、かんなりギリギリな顔の見せ方をしているこのお方ね。

「安倍晴明、85歳!! しかも、紫式部の宮廷入りの年に死去!?」

 ここを映画で堂々と窪塚さんがやってるってことなのよ……あの若々しさで。

 これはダメだろう!!

 いやいや、なにも私は、映画が歴史的事実とかけ離れた演出をしている、ということに腹を立てているのではありません。
 そういったことを堂々とやっていても、黒澤明監督の時代劇のように「おもしろいから、いい!!」と感動してしまう作品はあるのです。映画はどうしたってフィクションですから。特にコスチューム・プレイなんてね。

 私が腹を立てているのは、「現実の世界らしさを強調したほうがいい陣営に、『源氏物語』以上に架空なやつがいる。」っていう、その作品の根幹部分のおもしろさを踏みにじったトチ狂い具合なんです。

 計算違いもはなはだしい!! 「話題的においしいから晴明をイケメンの窪塚くんにしよう。」っていう打算しか見えないんですよ。

 もう、どっちらけ。
 だって、現実の世界にいる晴明は、のっけから道長に襲いかかる政敵・伊周の怨念をわけのわかんない呪文で退散させちゃうんですからね。こいつ、なんでもアリか!?

 この、晴明の「なんでもアリ」っていうところをのっけから出オチでだしちゃったんだから目も当てられません。
 最終的に、晴明はこの『千年の謎』の後半部分で『源氏物語』の世界と現実の世界との「橋渡し」をするという驚きの役割を果たすのですが、最初っからスーパーマンなんですからじぇ~んじぇん驚けません。ダメだこりゃ!

 とどめに「ダメだこりゃ!」なのが、窪塚晴明の「お前が式神なんじゃないか? 早く本物出せ!」って言いたくなるくらいの棒読み演技ね。まぁ~魂ぬけまくり。

 私、思うんですけど、窪塚洋介という人はたぶん、自分にものすっごく正直な生き方をし続けることのできる希有な才能の持ち主なんですよ。並の人間だったらすぐに、自分が傷つきたくないがゆえに環境に慣れさせて、鈍感になって流してしまう部分を大切にしている人なんだと思う。それはおそらく「スター」や「天才」の証明でもあると感じますし、そう思わない人も多いかも知れませんが、少なくとも私は、スクリーンのどこかに窪塚さんがいると、どうしてもそっちに目がいって「何か」を期待してしまいます。

 つまり、『千年の謎』における窪塚晴明の救いようのないダメダメ感は、「窪塚洋介に火をつけられなかった現場」が悪い。
 私たちは、スクリーンの中にいる「窪塚洋介」という名の磨き上げられた「鏡」を通して、そこに映っている撮影現場のレベルを手に取るように観ることができるわけなのです。

 でもまぁ、映画を観ている最中に「あ~、この窪塚さんじゃダメだな。」ってわかっても、料金はもう払ったあとなんですけどね……アフター・ザ・フェスティボー。


 ほんとにまぁ、『源氏物語 千年の謎』における「窪塚晴明」の責任は甚大ですよ。他の役者さんがたの名演どころか、作品のおもしろささえをもかき消してしまうひどさです。
 しかも、本当にひどいのは、その責任が窪塚さんの演技がどうこういうレベルにとどまらずに、そういう造形とも言えない造形の安倍晴明を「GO」にしちゃった製作スタッフに帰結しちゃうってことなんですよね。それじゃあ致命的な欠陥になって当然です。

 まった、ミステリアスな白皙の美形貴族が妖しげな美女式神をしたがえているっていう、今さら腐女子のアンテナにもひっかからないような安倍晴明像の「手あか感」ね。ふりーんだよ!!

 実は私、今回この映画を観ていて、

「なんだよ、あの笑ってるだけの式神。やっすいホステスか!! 『晴明十二神将』の名が泣くわ!」

 などと、かなりひどい悪感情を式神役の2人にいだいていたのですが、今回この話題を『長岡京エイリアン』にのせるにあたって双子デュオであるお2人のブログをのぞいてみたら、誇張表現じゃなく涙が出るくらいにいい人たちであると感服してしまいましたので、怒りの矛先はお2人には向けないようにします。現役看護士でいらっしゃるとは……

 そうそう、怒りといえば、エンドロールを眺めていたら、こんなお名前が出てきてました。

「special thanks 夢枕獏」

 公認かよ!!

 夢枕先生は「映画などの他の媒体がどうあろうが、自分の小説がしっかりおもしろいのだったらいいじゃないか。」という寛大さと、小説家としての自分にたいする絶大な自信をもっておられるのかも知れませんが、さすがにあの安倍晴明をここまでおとしめている作品に名を連ねるのは……百害あって一利無しかと思いますよ。


 恨み節が長くなりましたけど、それくらいに惜しい「窪塚晴明采配」だったというわけなんですよ。

 これは私という完全なるしろうとの浅知恵なんですが、せっかくギリギリで史実の安倍晴明が亡くなっておられるんですから、こうすれば良かったんじゃない?


そうだい素案

・1005年に紫式部が中宮彰子の家庭教師に着任し、藤原道長の命を受けて『源氏物語』の執筆に取りかかる

・そのころ、おん年85歳でさすがに全身にもガタがきまくっていた老貴族の安倍晴明(演・大滝秀治)は、かつての神通力もすっかり衰え、過去の栄光を知る家来も少なくなっており、もっぱら息子たちを相手に「早くお迎えに来てほしい。」とグチの日々を送っていた

・がしかし、突如としてそんなジジイ晴明の眼に鋭い光がかえってくる! 中宮彰子のサロンに不吉な予兆が!?

・往年の元気を取り戻す晴明! 「博雅くん、事件だ……あれ、おらんの?」

・残念ながら、ワトスン役の源博雅は25年前の980年に冥界の人となっていた……口をあけてしばし虚空を見つめる晴明

・晴明の見立てによると、その凶兆の気は紫式部からはなたれていたのだが、すでに彼女は一条帝もハマる『源氏物語』の作者としてすっかり人気者となっていて、パトロンの道長も晴明の進言をまるで信じようとしない

・だが、晴明の予感は正しかった! 「六条御息所」というキャラクターの度を過ぎたこわさにドン引きする読者たち

・ついにわしの花道がやってきたか……晴明は老体にかすかに残った全呪力をふりしぼって現実の世界を飛び出し、紫式部の『源氏物語』の世界に潜入して六条御息所との最終決戦にいどまんとする

・「がんばれ晴明!! 負けるな晴明!!」という全宮廷の声援を受けて、50年前の若き姿(演・窪塚洋介)にもどったスーパー晴明が、何十年かぶりに召喚した十二神将たち(演・照英とか杏とか)を駆って六条御息所を一網打尽にする。大勝利だ!!

・「こっちのほうがいいわぁ。俺もう現実には戻りません。これからはフィクションの世界のカリスマにのぼりつめてくんで、よろ~。」晴明は若い姿のまま、人々のこころの世界のスーパーヒーローになったのでしたとさ。ちゃんちゃん。



 うん……私個人はだんぜんこっちのストーリーのほうが好きなんですけど、これもう、『源氏物語 千年の謎』じゃないよね。

 まぁとにかく、「安倍晴明」という歴史人物を使いこなすのは相当な慎重さが必要だってことなんですよ! 『千年の謎』はいろんなことをナメすぎ!!


 もうずいぶんと長くつづってきてしまったので、他のことは軽くふれるだけにしておきますが、『千年の謎』における「現実の世界」パートは、藤原道長が典型的な英雄になっていたり藤原行成が道長の単なる従順なロボットになっていたりと、本来もっと生々しくておもしろいはずの人間関係を『源氏物語』以上に単純化しているきらいがあります。

 いっぽうの世界で斗真くんがストレートな色男の光源氏を演じているのだったら、現実世界のヒガシ演じる道長はもっと人間的なあぶらぎった政治家の色を出しても良かったのではないかと思うのですが……
 これは人の資質の問題なので非常に難しいのですが、東山さんはいい意味でも悪い意味でも非常に「人間離れした清潔感と色気」のある方で、ちょっと今回のような「オヤジくささと汚さ」のある人物を演じるのは苦手だったのではないかと。窪塚晴明ほどじゃないですけど、ここでも「現実っぽさ」が希薄になっていたんです。

 あと、映画の中でかなり意図的に「過去の人」、とりようによっては「死んだ人」にも見えかねない偏った描かれ方をしていた道長の政敵の藤原伊周は、『千年の謎』の中でその怨念が道長と戦っていた時期(1008年9月の中宮彰子の第1子出産以前)にはちゃ~んと生きていておんなじ都に住んでいます!! なんだったら、その数時間前にあったという朝議(ちょうぎ 現在でいう内閣の閣議みたいなもの)で、ご本人が道長といっしょにいたかも知れないんですよ!? 別れた数時間後にあんな怨霊に化けて出るかね、しかし!? どんだけ道長に会いたいんだって話ですよ。

 歴史上の藤原伊周は、道長の孫にして一条天皇の皇子でもある男子を彰子が出産するという、道長陣営にとってのチェックメイトが決まるぎりぎりまで、道長がおびえる最大の脅威であり続けていたはずです。そんな存在がいたのに、道長が映画の中のヒガシのように堂々とした「唯我独尊感」をふりまいていたとは思えないんだなぁ。
 映画の流れをシンプルにするためとはいえ、歴史上の人物たちを出しているくせにさまざまな形でヘタなウソをつく態度がゆるしがたい。


 もう、きりがないんでいい加減にしめましょうか。

 いろいろうだうだ言ってきましたが、要約すれば、私の『源氏物語 千年の謎』を観た感想は以下の2つでした。


久しぶりに歴史ネタで体温をポッカポカさせることができました。本当にありがとう!!

 あ~んど、

俳優としての東儀秀樹、とりあげる価値すらなし。だぁ~いっきらい☆


 ……あー、すっきりした。みなさま、よい連休を~。

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