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ノーマン・ロックウェル連作「四つの自由」〜ボストン 第二次世界大戦国際博物館

2020-05-05 | 博物館・資料館・テーマパーク

Sell / Auction Norman Rockwell Four Freedoms Posters at Nate D Sanders

2019年に閉館してしまったボストンの軍事博物館、
第二次世界大戦国際博物館の展示物をご紹介しています。

このように展示品はケルビンのボールを始め、16インチの戦艦の砲弾、
日本海軍の対空砲(ホッチキス製)、爆雷(右)などが並んでいます。

アメリカ海軍の水兵がジャケットを着ているマネキンの後ろは
日米戦の舞台となった太平洋地域に絞った地図です。

大東亜戦争のことをアメリカ人が「パシフィック・ウォー」と呼ぶのがよくわかります。

海軍省検閲済みの市販の大東亜鳥瞰図定価40銭。
昭南島(シンガポール)、ハワイ、パナマ運河主要部の地図、
そして戦局写真ち米英海軍勢力一覧表がおまけについています。

これに付されている説明には

「1942年に印刷された太平洋地域のこの日本地図には、
自然資源などの採掘地が記されています。
米国とちがい、自然資源の確保は、日本が経済を近代化し
成長するという野心に不可欠でした。
この地図はゴムその他の生産地が示されています」

とあるのですが、ちょっとこの説明は?です。

こちら普通にハワイの地図ですが、アメリカから見たら、
「日本人はこのような地図を見ながら虎視淡々と以下略」
の証拠にみたいに思えるのかもしれません。

さて、ここからは戦費公債購入を呼びかけるポスターシリーズです。
アンクルサムがバールのような物を持って腕まくりをしつつ、

「ジャップ・・・次はお前の番だ!」

次、というのは第一次世界大戦の次ということでしょうかね。
アンクルサムは『Uncle Sam』つまりUSでアメリカの擬人化です。

バターンとコレヒドールで捕虜になったアメリカ軍人を取り囲む日本兵。
「忘れることのないように」「仕事をやり通せ!」とあります。
敵への怒りと復讐心を掻き立てやる気を煽る戦時高揚ポスター。

「まさか戦争終わってるんじゃないだろうな」

これも公債ポスターですが、兵士の着ている服が微妙すぎて
彼がアメリカ軍なのか日本軍なのかわかりません。

敵地に必死の思いで潜入してきたら、もう戦争は終わっていた
(もちろんアメリカの勝ちで)という意味なのか、
戦争が終わったことを知らずに戦っていた日本兵なのか・・。

こちらは志願兵募集のポスター。
肩にハクトウワシをのせたアンクルサムが上着と帽子を投げ捨て、
腕まくりしながら敵に歩み寄る様子が描かれています。

いわゆる「リメンバーパールハーバー」ポスター。
今でも米軍はヒッカム基地に揚っていた銃痕のある星条旗を保持しているそうです。

「ここでの死者の死を決して無駄にしてはなりません」

左はアメリカ海軍の潜水艦の写真、右は貶しているの褒めているのか?
メガネで出っ歯の人相の悪い日本人が勉学に励んでおります。
こんな顔して勉強するやついないっつーの(笑)

なんて書いてあるかというと

「もしあなたがジャップのように一生懸命頑張れば
私たちは東京をそれだけ早く叩くことができるのです」

ということは、アメリカはとりあえず日本人が勤勉で働き者、
ということを認めてくださっていたってことですかね。

それはいいけどこのポスターの男の顔は酷すぎない?

 American Poster: Save Freedom of Speech............. Buy War Bonds ...

公債購入を呼びかけるポスターは、人気のイラストレーター、
ノーマン・ロックウェルも手掛け、彼の最高傑作とされています。

この「言論の自由」というポスターは、1941年の
ルーズベルト大統領の一般教書演説をテーマに描かれたものです。
ロックウェルは大統領の言葉次のようにアレンジしました。

欲望から解き放たれること (Free=解き放たれる)

恐れから解き放たれること

崇拝の自由

言論の自由

1943年のサタデーイブニングポストに掲載されて以来、再版を重ね、
戦争中には400万という史上最も複製された作品の1つになりました。

戦争債権の販売は、ルーズベルト大統領とモーゲンソー財務長官ののもと、
財務省は全国ツアーで「4つの自由」をうたい、
1億3300万ドルを超える戦争債券を売りあげたといわれます。

公債を売るためにボブ・ホープ、ビング・クロスビー、そして
ジャック・ベニーなどのエンターテイナーが献身的な協力をし、
また、「四つの自由」というタイトルの交響曲も作曲されています。
(今日全く聴かれることはないようですが)

ロックウェルは戦争協力のためのさまざまなポスターを描き、
1977年にフォード大統領から大統領自由勲章を授与されました。

オリジナルはストックブリッジのノーマンロックウェル博物館にあり、
わたしはこの実物を見たことがあります。

Amazon.com: WholesaleSarong Save Freedom of Worship 1943 Buy war ...

同じくロックウェルの「四つの自由」のひとつ「信仰の自由」
ルーズベルトの演説より、ここに描かれているのは8名の祈る人で、
下段右の帽子の男性=ユダヤ人、ロザリオを持った若い女性=カトリック、
と異教であれどもアメリカ人としてその信仰の自由は保証される、
ということを表しています。

 

「四つの自由」の三つ目、「恐れからの自由」です。

絵は、両親が見守る中、この世界の恐怖に気づかずに
ベッドで安らかに眠っている子供たちをあらわしています。

子供たちの布団を整える母親、そして立っている父親の手には
現在進行中の紛争の恐怖を報じる新聞が握られています。

しかし、彼の注意は完全に彼の子供たちに向けられており、
憂慮すべき見出しには向けられていません。
この 父親は、絵画の中で鑑賞者、つまり

「古典的ないわゆる’ロックウェル・オブザーバー’」

の役割を与えられています。

手には眼鏡があることから、彼はもうすでにこの
「ベニントン・バナー」を読み終えたところでしょう。
新聞の見出しは一部が隠れているものの、

"Bombings Ki ... Horror Hit"

というもので、いずれにしても穏やかでないニュースであることは確かです。

なおこの絵はロンドンの爆撃の最中に描かれたということです。

 

「欲望からの自由」は別名「サンクスギビング・ピクチャー」、
または「I'll be home for Christmas」として知られています。
「4つの自由」シリーズの第三作目で、描かれているのは
バーモントのロックウェル自身の友人や家族で、
それぞれを撮った写真を元に作画されました。

当時も今もアメリカで大変人気のあるポスターですが、戦時中、
飢えと困難に耐えていたヨーロッパでは、ずいぶん反発されたようです。

 

オーブンから出したばかりの七面鳥に釘付けになる皆の目、
テーブルの上のフルーツ、セロリ、ピクルス、クランベリーソースなどは
アメリカ人なら誰でもノスタルジーを感じずにはいられません。

アメリカの繁栄と自由、そして伝統的な価値観を象徴する作品は
アメリカ人には熱狂的に受け入れられました。

ただ、ヨーロッパ人の反発と同じく、欲望からの自由がどうしてこのシーンなんだ、
という説は当時からあったようです><

ガスマスクの使い方に対する広報宣伝です。
絵柄と全くそぐわないのですが、

「あなたのガスマスクを手入れしてください。
ナップサックや枕にしてはいけません」

って、わざわざポスターにするようなこと?

Give 'em both Barrels (彼らにバレルを与えよ)

こちらは兵士ですが、向こうはリベットを持った民間人です。
ジーン・カールの作品で、兵士が前線で戦うことができるように
後方における産業での戦争協力を呼びかけているのです。

 お上はこれが戦争に勝つために労働が重要であることを訴える
良いポスターであると満足していたようですが、肝心の工場労働者の調査によると、
このポスターに描かれている労働者がギャングにしか見えないため、
多くの人がFBIの
戦争犯罪を喚起ポスターだと思っていたということで・・・、
つまり画力に若干の問題があったと。

ドンマイ(笑)

ニューヨークセントラル鉄道で、列車修理の仕事に
女性を募集するポスターです。

「男性を戦いにいかせてください」

実にダイレクトです。

潜水艦に爆雷を装填する水兵が、

「奴らにこいつを喰らわせてやれ!」

海軍の志願兵募集ポスターです。

アメリカで発行されたこのリーフレットは、

「わたしは抵抗をしません」

と赤字で書かれており、これを持っている日本人は人道的な扱いを
保証されるとあります。
英文では、

「この紙を持っている日本人をすぐに
最寄りの公務員に連れて行ってください」

とあり、日本語で

「上の英文の内容は、『この人はもはや敵ではなく、国際条約により
完全に身の安全が保証されるべき者なり』ということが書かれている

左図は当方に来ている諸君の戦友の一部」

として、捕虜収容所で笑っている日本兵の写真があります。

日本軍の兵士は捕虜になるのを拒んで自決する者が多く、
通訳の日系二世はその説得が大変だった、とも言われています。

 

ここからは戦時中の人種隔離政策を表す資料となります。

 

上二つの小さな看板はいずれも差別政策に法って、
白人と「カラード」でシャワー室が分けられたもの、そして
「カラード」専用の待合室の札。

下は真珠湾攻撃以降、日本人排斥の法律が正式に発令され、
地域から出ていき収容所に入ることを布告するもの(左)、
英語と日独伊三ヶ国語で書かれた「エイリアン・オブ・エネミー」
身分証明書を郵便局で申し込むこと、というお知らせ(中)
収容所への入所を勧告する公報(右)です。

 

日系人としてアメリカ軍に入隊し、ヨーロッパ戦線で負傷した
トム・カサイとその妻、ルースの写真。
手紙は、トムがフランスで負傷したことを伝えています。
パープルハート勲章はその時に授与されたものでしょう。

下のニューヨークの病院から発行された通知書によると、
カサイさんは左腿に銃弾を受けたということです。

トム・カサイという人がロスアンジェルス育ちで水泳のチャンピオンだったこと、
陸軍に入隊し、真珠湾攻撃の頃には厨房で働いていたことが書かれています。
彼が軍に入隊した後、妻と彼の両親はアリゾナの強制収容所に入所し、
そこでカサイが負傷したことを知らされ、ルースはニューヨークに駆けつけました。

実家はマーケットを経営していたようです。

左の日系人青年はフランク・マサオ(マス)・イモン。
戦争前はニュースリポーターとして働いていました。

開戦後は諜報局で語学研修を受け、通訳の任務を行いました。
右上の日記には、真珠湾攻撃の報を受けて衝撃を受けたことが記されています。

イモンさんが情報局の訓練で使った教科書には、

「NO TOUCH PROPERTY OF MAS 」(マスの所有物につき触るな)

とシールが貼ってあります。

このケースには敵に配布するためのプロパガンダ・ビラが展示してあります。

どこの国が作成したのかわかりませんが、アメリカ兵に向けて
なんのために戦っているのかとか、命を無駄にするなんて気の毒に、
みたいな言葉を投げかけ厭戦気分を書き立てようとしています。

骸骨化した兵士のイラストが妙にアニメっぽい。

オーストラリアに旗をたて、嫌がる女性を拐おうとしているアメリカ、
ニュージーランドは隣から傷だらけになりながらアメリカを攻撃しようとしています。
どうもこの比喩の意味がわからないなあと思いつつ、次のを見ると、

日本から打ち寄せてくる波に立ち向かい溺れるオーストラリア兵、
後ろで太ったアメリカ人(ルーズベルトらしい)が、
オーストラリアの領土を抱え込んでいます。

手書きの文字は

「オーストラリア人が尊い血を流している間、ルーズベルトは
彼の利己的な目的を予定通りに進めているのである」

オーストラリアは連合国に加わり太平洋における戦争で日本と戦いましたが、
そこに至るまでアメリカの戦争に参加させられることに反対する世論が
オーストラリア国内にもたくさんあったということなんですね。

そりゃ、オーストラリアにしてみれば別に日本に盗られた土地もないし、
アメリカに付き合って戦争するのはごめんだ、というひとがいたとしても
全く不思議なことではありません。

当時の反米論がこんな形でプロパガンダしてたってことになりますが、
今までこんな角度から米豪関係を見たことがなかったのでちょっと新鮮です。

 

そしてここからはどこで収集したのか、日本に関するグッズの展示。

三国同盟が締結された時に提灯行列で祝われたというその証拠、
ハーケンクロイツの印刷された提灯が展示されています(笑)

この大きさから見て戦艦級以上の中将旗でしょう。
割れた先を折りたたまないと床についてしまうくらいです。

詳しい説明はなく、博物館の人に尋ねたのですが、ただ
「長門の中将旗」ということしかわかりませんでした。

この中将旗が博物館閉鎖後どうなっているのか、そして
今後どこでどうなるのかが気になって仕方ありませんん。

 

 

続く。

 

 


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2 Comments

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ニューギニア (Unknown)
2020-05-05 16:42:39
>オーストラリアに旗をたて、嫌がる女性を拐おうとしているアメリカ、ニュージーランドは隣から傷だらけになりながらアメリカを攻撃しようとしています。

ニュージーランドではなく、ニューギニアです。日本が侵攻する前はオランダ領(現在はニューギニア島西部がインドネシア。東部がパプアニューギニア)でした。日本軍が目指した南部のポートモレスビーからオーストラリアはアラフラ海を隔てて100キロくらいだし、開戦劈頭、甲標的でダーウィン攻撃も行っているので、日本軍が侵攻して来る危機感はあったと思います。

ダーウィンに入ったことあります。砂漠気候で街の他にはカジノしかなかったです。エリマキトカゲが流行っていた時期で、実物にお目に掛かりました。浜辺は非常にきれいでしたが、刺されたらショック死するくらい毒の強いクラゲがいるとかで泳げず。博打とビールだけで終わってしまいました。あんなところはわざわざ取りに行かないような(笑)
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欲望からの自由 (ウェップス)
2020-05-05 19:23:52
 なんだアメリカだって「欲しがりません勝つまでは」じゃん(/・ω・)/
 昨今のコロナ対策に懐疑的な方々がしたり顔でこの標語を持ち出してますが、国難に当たって欲望をセーブするのはある程度やむを得ない、というのは程度の差こそあれ普遍的な価値観でしょう。(個々の政策の適否は別にして…)

 ここには出ていませんが、We can do it! のポスターはアメリカ人大好きらしく、今でもWe のところに家族等の名前を入れるのが通販で買えます。
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