ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

ブルーインパルス・中編~平成27年度入間航空祭

2015-11-12 | 自衛隊

さて、ブルーインパルスの演技、後半です。
前回「レインフォールをやらなかったのは事故と関係あるのか」
と本文中に書いたところ、事故関連についての情報を筆不精三等兵さんからいただきました。

これについて少し調べてみたところ、まず当時のニュース映像が見つかりました。

T-2ブルーインパルス事故を伝える報道各社のニュース.mpg


わたしが前回少し触れた武田頼政著「ブルーインパルス」では、
この事故についての詳細が書かれていますが、機体の不調ではなく、
ヒューマンエラー(一言で言うとブレイクコールの遅れ)であったとされています。

しかし、下向き空中開花は、教えていただいたように「判断の遅れ」を招く
意識低下を誘発するという考えによるものか、演技そのものを禁じられました。


そこで、ブルーインパルスが使用機をT-2からT-4に変えたとき、創世期のメンバーが

どうしても「下向き空中開花」系統の技を取り入れるために、
改良を加えて開発したのが「レインフォール」だったといわれます。
その時のメンバーが

「下向き空中開花をやりたいけど、できないからレインフォールで”我慢する”」

と言っていたという証言もあります。

事故機は、ループと逆側に、つまり「C」字型にリカバリーしないといけなかったので、
他のメンバーと違い、隊長のコールの遅れ(0・9秒といわれる)が致命的だったのですが、
「レインフォール」は全機が同じ駆動を行い、「C」ではなく
「S」を描くようにループを行う、と変えられています。




つづいて6番機が単機で行う

SLOW ROLL



その名の通り、ゆっくりと右ロールしながら通過する技です。

これ、実は4ポイントのロールより難しいんだそうです。

簡単そうに見せているけど、簡単そうなのが実は番難しいんですよね。



続いて、#1、#2、#3、#4の4機による

CHANGE OVER ROLL

こちらからの角度では並列に見えますが、トレイル編隊で進入します。



綺麗にトレイル隊形になりました。



編隊を組んだまま急上昇を行います。



この時点で1番機に後続する2機のノーズがわずかに右と左に振れていることに注目してください。
ループに入ると同時にトレイルからダイヤモンド編隊に組み直すためです。



1番機だけがスモークを出さないダイヤモンド編隊で高く高く上昇していきます。



そして背面からループ。



スモーク全体を撮り損ねましたorz

頂点からあっという間に左ロールして右側に離脱。



続いて、ソロ演技専門の5番機と6番機が入ってきてピタリとひっつきました。
ハーフスローロールといって、2機で同時にロールを行う技かと思ったのですが、
正式名はわかりませんでした。



そういえば下総基地でこんなトンボ見たなあ・・・。

ハーフスローロールよりすごい!と思ってしまうのはわたしだけ?



続いて1番機から4番機までで行う

4 SHIP INVERTED

まずダイヤモンド隊形で進入してきました。



1番機と4番機が背面になります。



ぴたり。
続いて手前の2番機、向こう側の3番機がロールを行い、



4機全部が背面の姿勢になります。



このとき、4機の隊形はかなり密集となっています。



しかるのち密集隊形を崩して、間隔をあけてゆき、



全機同時に元に戻ります。
スモークがねじれているのがロールを行った場所。



続いては5番機が単機で行う、

360DEGREES TURN & LOOP(360度ターン&ループ)

左手から進入してきた5番機は、そのまま平面で旋回を行います。



その際、観客席にお腹を見せるような態勢で飛びます。



それが終わると、急上昇してループを行います。



白と青の機体の翼に真っ赤な日の丸。
ブルーインパルスはなんて美しいのかと、こういうときには特に思います。



6機全機で行う

DELTA ROLL 。

この隊形をデルタ隊形といいますが、この形を維持したままロールを行います。



全機で上昇。
この角度で見ると何かに似てる・・・・と思ったらやっぱりイルカでした。

ブルーインパルスのパイロットのユニフォームの腕には
「ドルフィン・ライダー」と書かれたパッチがつけられており、さらには
彼らの乗るT-4を整備するチームも「ドルフィン・キーパー」の名称を持ちます。



デルタロールは、全機で同時にバレルロールを行います。



バレル=樽、ということで、樽の外側をなぞるような動きのロールです。



やはり1番機はこんなときにもスモークは出しません。

「下向き空中開花」の事故映像を見るとわかりますが、当時はスモークに
各自違う色が付いています。
東京オリンピックで5色の輪を描くなど、カラースモークが主流でしたが、
1998年以降、スピンドルオイルに染料を混ぜることは中止になりました。

演技前後の整備に時間がかかることと、費用がかさむことがその理由ですが、
近隣住民の「洗濯物に色がつく」というクレームもあったと聞きます。

基地の近くに後から引っ越してきて、煩いとかスモークガーとか文句を言う
「近隣住民の皆様」は、自衛隊憎ければアメリカ軍はもっと憎いとばかり、
アメリカからはるばるやってきた「ブルーエンジェルス」にさえも煩いとクレームをいれたため、
「ブルーエンジェルス」は激怒してそれ以来日本には来なくなったという話があります。

合掌。




珍しく?会場右から6機がデルタ隊形で進入してきました。



デルタ編隊で行う

DELTA LOOP

です。
デルタ編隊は右手から正面までやってきたのち、



正面で垂直に急上昇します。



そしてループ。
このループの半径は約2キロと決まっているそうです。

そのあと全機背面で飛行していたので、もしかしたらこれは
デルタループではないかもしれません。



5番機だけが90度ロールを行い、離脱を行いました。



残る5機で行う、

UPWARD AIR BLOOM (上向き空中開花)

の始まりです。




全機がスモークを出しながら垂直に上昇して行き、



まず外側の2機が90度ロールを行い、編隊に対して腹を見せる形をとります。



続いて1番機の両側も開いてゆき、



空中に花が開花するというわけです。

レインフォールが「下向き空中開花 」へのこだわりから生まれたらしいことは
今回調べていて初めて知ったことですが、上向きであれば問題無しで、
名称もそのまま使われていることに少し不思議な気がしました。

「レインフォール」を開発したドルフィンライダーは、「下向き空中開花」が
できないことをなぜか「政治的な理由」といったそうです。 

安全性を考慮して改変した新しい技の名前を、彼らは
あくまでも「下向き空中開花 」にしたかったのではないでしょうか。

事故で殉職したT-2のブルーインパルス隊員を顕彰するためにも。


続く。