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護衛艦「ふゆづき」自衛艦旗授与式~「サイドパイパーの憂鬱」

2014-03-18 | 自衛隊

2014年3月13日に行われた護衛艦「ふゆづき」の引き渡し式、並びに
護衛艦授与式への参加記をお送りしております。

この連載が始まってからコメント欄にもいろんな読者のお話が寄せられ、
楽しく会話しながらいろいろと初めて知ることもあり、
まさに値千金のイベント参加であったと幸運にしみじみ感謝しております。

そして、まさにありがたいことに、外部の者が少し調べたくらいではわからない
様々な「中の人情報」によってご教示いただいていることもありますので、
コメント欄では紹介しきれなかったそれらをまとめてみました。

まず、わたしが当初インターネットで調べて「わからない」と匙を投げた
「小さな旭日旗」について。



全部写すことができなかったのですが、実は大変尻尾の長い旗です。
一応旭日様なので「小さな旭日旗」(笑)などと書いたのですが、
これは「旭日旗」ではなく指揮官旗のひとつで、「長旗」といいます。

指揮官旗とは、連隊旗含む部隊旗と違い、部隊でなく指揮官に授与されたもので、
離着任式の際含む指揮官の移動時には、必ず同行することになっています。

つまりこれが揚げられた=艦の最先任指揮艦が艦長であること、そして
艦長が艦を指揮していることを示します。

わたしは最初自衛艦旗のwikiページを検索して見つけることができなかったのですが。
ご教授者から同じページを送っていただいたので再び見たところ

ちゃんとありました。orz

「海上自衛隊の旗」という項の各種旗写真のなかに。
でも、見ていただければわかりますが、これじゃわからんだろーWikipedia 。


旗つながりで艦首の国旗に付いても少し。

冒頭の二士水兵さん、かっこいいでしょう。
護衛艦旗掲揚は天幕に阻まれて撮ることができず残念でしたが、
この写真が撮れたのでいいとするか、というところです。

この艦首に揚げる旗は「国旗」と呼ばず「艦首旗」というそうです。
「艦首旗」について詳しい説明はこちら

このページの最後の質問に君は(笑わずに)答えられるか?!


質問・停泊中の自衛艦が艦首に揚げる旗は?

1、自衛艦旗 2、国旗 3、Z旗 4、何でもいい




もう一つ。

艦長乗艦の際吹鳴される「サイドパイプ」についてもお話ししておきます。

モノ知らずのわたしは「ぴーぴー」とか「ホイッスル」とか、
当事者からは噴飯ものの(本来の意味で)書き方をしたわけですが、
実際に聴いてもこの笛の音は「ぴー」というより「ほー」という感じです。
ホイッスルにある音の立ち上がりがない、「アクセントの無い音色」で、
これはなぜかというとこのサイドパイプという笛、ホイッスルとは機構が違い、
振動させるための「玉」が入っていないのです。



音の高低も音量も、すべて自分の口先三寸でやってしまわねばならず、
こう見えて、というか簡単な機構だからこそなかなか難しいもののようです。


送迎パイプは、1佐たる艦長、指揮系統上の1佐以上の司令(隊司令、群司令、艦隊司令
官)
の他、将官の場合は指揮系統上になくても吹鳴されます。

このパイプが吹鳴されるのを聞くと、周囲にいる者は作業を中断し、
被送迎者に向かって敬礼を行うのだそうですが、今回、海上幕僚長や呉地方総監が乗艦した際、
サイドパイプが吹鳴されていたかどうかは残念ながら確かめることはできませんでした。

このパイプの起源は、帆船時代に作業を指揮するために吹鳴された様々な奏法であり、
帆船時代、外出から戻った酔いどれ船長を畚に乗せ、それを滑車で引き揚げる
作業指揮のために吹鳴されたパイプの名残だとも言われています。

送迎パイプは

ホー……ヒー……ホー……

と間を空けて吹かれ、それゆえ他の雑令などと比べると息が続かなくて大変だそうです。


海上自衛隊 サイドパイプ舷門送迎 掃海艇


ちなみにこの映像はコメント欄で「サイドパイパー下手」とかいわれていますが(泣)
 実際難しいので、舌や息の使い方のセンスによっては、全く使いこなせないまま
退官してしまう
海上自衛官もいるとアンサイクロペディアにはあります。

出所が出所なので真偽は不明ですが、このYouTubeを見たらそんな気がしました。
このときのサイドパイパーさん、正直でごめんなさい。 

ちなみにアンサイクロペディアの「舷門送迎」の項には

” ホー……ヒー……ホー……(舷門送迎)

隊司令以上(要するにエロいエライ人)の乗退艦時に吹奏する。
なかなか息が続かなくて大変である。
ちなみに号令はなく、吹奏者以外は挙手の敬礼あるいは
「気をつけ」の姿勢で
厄介者が過ぎ去るのを待つばかりである。”


とあります。
アンサイクロペディアの「号笛(甲)」のページ、お時間がありましたらどうぞ。




 

さらに、ご指摘の中でわたしが目から鱗だったのが

「自衛艦」「護衛艦」の使い分け。

インターネット検索しても「自衛艦旗」より「護衛艦旗」の方が検索数が多く、
かつて自分で「自衛艦旗授与式」とタイトルにつけたエントリが少数派であることから
どちらでもいいのかと思っていたのですが、あの「軍艦旗」は「護衛艦旗」ではなく
「自衛艦旗」と称します。

よく考えたら潜水艦にも掃海艇にも、タグボートやゴムボートにも(!)
揚げるものですから、「護衛艦」に揚げるときも「護衛艦旗」とはならないのだそうです。



さて、式次第に戻りましょう。
自衛艦旗授与者の訓示からです。



これは内部カメラでモニターに写し出されたリアルタイム映像。
場所は後甲板に繋がるヘリ格納庫です。

「あきづき」型は格納庫内に2機のSH-60を収納することができます。
床面にいろいろあって「足元がお悪い」感じがしますが、この部分には
ヘリの拘束装置が設置してあり、溝があったりするからです。

ついでに書くと、甲板はゆるやかに傾斜がついており、昔はこのことを
「オランダ坂」と称しました。
オランダ坂のように「なんとなく」傾斜があるのが護衛艦の特徴でもあるそうです。 



若宮政務次官の訓示は映像とともに流されました。
内容には最近の中国の動きを指して「尖閣」という言葉、
そして「竹島」という言葉がはっきりと
盛り込まれていました。

つまり日本の国防の現状を述べるにごく当たり前の訓示だったと思いますが、
これ、民主政権だったらどんな内容だったんでしょう。
「竹島」はもちろん「尖閣」という言葉は出たでしょうか。


初代首相は自衛隊の観閲を拒否し(これ、今考えたら凄いことですよね。
自衛隊関係者はどんな気持ちだったかと思うと、胸が痛くすらなります)
第二代首相は一応形だけ観閲したものの、官僚作成の文章の丸読みで観客からの拍手なし。

官房長官は「日本は中国の属国だ」と公言し、歴代大臣の誰ひとりとして国会質疑で
「竹島は不法占拠されている」
という言葉を頑として口にしようとしない政権だったわけですが、
あの間、現場の自衛官たちはどのように感じていたのでしょうか。

さすがの民主党もそれまでの流れを無理筋で廃止することは出来なかったらしく、
たとえば「いずも」に国会で予算がつけられたのは福島みずほが内閣にいたとき
(ありましたねえそんな瞬間が)だと言いますが、
もし護衛艦の引き渡し式があの時期行われていたとしたら、民主党の政務次官は
果たしてそこでいったいどんな訓示をしたことやら・・・。

ちなみに本日の授与訓示者である若宮健嗣代議士ですが、
外国人参政権については

誰の為に日本国民の貴重な税金を使っているのか、
もしも、とある地方自治体で外国人が多数を占めてしまったら、
そこはもう日本国内であっても日本ではなくなってしまいます。
外国人に参政権を付与するなんて全く有り得ません。

という、日本の政治家としてごくごく当たり前の考えをお持ちのようです。
そして、ソーシャルネットワークの発言を追ってみるかぎり、自衛隊に対しては
理解だけでなく大変思い入れをお持ちのようでした。

本日そんな政治家の訓示を受けたことは「ふゆづき」にとって
たいへん幸先の良い出だしとなったのではないでしょうか。

民主党政権が終わり、あちこちから「観閲が安倍首相でよかった」みたいな
「中の人」からの心の声を聞いたこともあって(笑)よけいにそう思うのですが。



「ふゆづき」の左舷側から見て右手に設えられた「撮影用足場」。
黄色い旗を持った2曹をご覧ください。
この日、自衛官たちはレインコートなしで全員が雨の中立ち続けていたわけですが、
自衛隊といえども濡れることを必要以上に強制しているわけではないので、
写真員や誘導係などの任務に就く隊員はちゃんとコートを着て仕事していました。

黄色い腕章は「報道」とありますので、ほぼ全員がマスコミのカメラマンだと思われます。

しかし、カメラマンだけは腐る程来ていても、めったに自衛隊イベントは報道されません。
今回のこの式典の様子はちなみにどこのメディアが実際に伝えたんだろうと思って調べたら、
産經新聞は勿論、朝日も報じていたんですね。

朝日はまあ、国民にではなく中国に日本の国防についての実情を報告するという
大事な使命がありますから(もちろんイヤミです)当然かもしれませんが。



舷門近くで艦長始め式執行者を迎えていた面々。
先頭女性尉官(三尉)、士、曹、一尉と上甲板を歩いていきます。
このまるで「各階級一人ずつ選抜」みたいな顔ぶれは何だったんでしょうか。
前から三番目の曹は、艦長乗艦のときのサイドパイパーであることから、
彼らは「舷門当番」グループではないかと予想してみる。


ついでにここに写っている装備について触れておくと、
画面右側の黒い巨大なホース状のもの。
これはプローブレシーバーといい、海上給油用のホースです。
全く同じものが右舷にもあり、やはり同じように周囲の壁面には
目立つように白く塗装されたリングプレートやクリートがあります。

ちょっとだけ上部に写っているのは作業灯で、これは蓋がしめられるそうです。
彼らの足元の赤いものは消火ホースで、ホースは消火栓につながっています。



装備説明ついでにもう少し。
これは

N-AS-299空中線

といい、短波受信のためのアンテナです。
上部構造物には
二本ついています。



こちらは艦橋両舷にある同じ空中線。
赤い「浮き輪」は救急浮標といい、各壁面ごとに備えられています。
グレーの護衛艦に赤いアクセントが映えて美しいですね。

三脚のように見えているのが

12.7ミリ機銃

の銃架で、架台は固定式で備え付けてありますが、
銃身は通常艦内に保管されているのだそうです。
ただしこれは「搭載武器」としてはスペックに上がってきません。
その理由は、海上自衛隊の場合、これは個艦設備ではなく拳銃や小銃のように
『搭載品』扱いになるためだとか。




アンテナつながりでもう一つ。
これは艦橋の前面(艦首側)なのですが、このR2D2の頭みたいな丸いのは
だいたいどこにあっても「通信関係」の装備だと思っていただければ
まず間違いは無いと思います。
(CIWSだけはこれと酷似していますが武器ですので念のため)

ここにあるのはヘリコプター用のデータリンク装置で

ORQ-1C-2 ヘリコプター用データリンク装置

といいます。
「あきづき」型に搭載されているヘリ用データリンクは最新のもので、
中身は極秘扱いのため?公開されていないそうです。

丸いのの上に槍のように見えているのはただいまぐるぐる回転中。

OPS-20C 航海用レーダー

です。



航して右舷が見えてから初めて見えてきたものもあります。

これは後部甲板のヘリ格納庫の上部構造物ですが、右側の小さくて丸い「きのこ」。
これも衛星通信アンテナで、

NORC-4B インマルサット衛生通信アンテナ

と言います。
赤道上空の軌道上に静止している4機の静止衛星から、
電話、テレックス、データ通信サービスを受け取るアンテナです。

赤道上にある衛星なので、北極と南極に近づくとサービス圏外(!)になるそうです。

左がファランクスCIWS
高性能20ミリ多銃身機関砲です。





この「あきづき」型の大きな特徴の一つは、まるでイージス艦のような
四角い(正確には8角形ですが)「多機能レーダー」、

FCS−3A 多機能レーダー

を搭載していることです。
「ひゅうが」にもおなじ四角いのがついていたのを説明したことがありますが、
汎用DDとしてはこの「あきづき」型に初めて搭載されることになりました。

イージス艦がミサイル防衛の任務で手一杯になったとき
このシステムを備えた「あきづき」型は「僚艦防空」をすることができます。

これまで「個別防空」であった防衛システムですがこのレーダーシステムによって
ローカル・エリア・ディフェンス、つまり艦隊全体を防御できるようになったのです。

たとえばイージス艦は、ミサイル防衛作戦中には通常の航空脅威、たとえば
低空でやってくる低空ミサイルなどに対しては防衛がお留守になってしまいます。
「あきづき」型は、そのイージス艦を守ることができ、イージス艦が防空任務で
抜けてしまった後の艦隊も守ってくれる頼もしい奴なのですね。



ところで、本文中の「サイドパイプ」のYouTube画面ですが、
二人の青虫ジャージ着用の男性が舷門送迎のときに起立しています。
そのことから彼らはおそらく自衛官であろうと思われますが、
それにしてもどうしてこんな格好でここにいたのでしょうか。


自衛隊 外から見ると謎多く げに探求のネタは尽きまじ



(続く)