現在・・・。
不吉なくらい漆黒の夕だ。
私はライフ紙を手に黒革の椅子に身をもたせている。
私の名はアライアス。
私はあまりに多くのものを見た。
黄金。悪人。狂った男。そして殺人だ。
私はこの街にもうすぐ起こる最悪な出来事を知っている。
二十年前私は探偵だった。
二十。きりのいい数字だ。
そういや二十分前には私は夕食をとったな。
二十年前の私は幸福に満ちていた。
二十年前私は最後の事件を扱った。それが最後だった。
私はまるで狂った子羊のようにドアをぶち破って飛び込んできた男のことをよく覚えている。
彼の名はマクシミリアン・ドイルといった。
ハードボイルド小説です。
これ、何を隠そうエリス中尉の十歳になる愚息の英作文の宿題です。
(画像)
朝内緒でバックパックから抜き取ってコピーしてやりました。
まさかブログで宿題をさらされているとは夢にも思うまい。
これまで継続してこのブログを読んでくださっていた方は、いったいうちの豚児は何人(なにじん)なのか、とふと思われたかと思います。
かれはれっきとした日本人なのですが、半分日本語、半分英語教育を受けています。
まあ、その理由については今日はご勘弁いただくとして、昨日手伝わされた冒頭の宿題があまりにおもしろく、翻訳しながら噴き出してしまったので息子には内緒でここに紹介することにしました。
昨夜、「今日はコンピュータのタイピングがあるから公文(塾)早く切り上げる」
と言って早く帰ってきたのはいいのですが、パソコンの前でため息をつきながら遅々として進まない様子。
そりゃ指一本打法では進むまいよ。
「原稿読んであげるからタイピングしたら?」
といってエリス中尉が下書きを読み上げ、息子はそれをタイピングし始めたのですが、
え、ちょっと、こんな言い回しどこで覚えてきたの、という文章の宝庫。
冒頭はチャプター1ですが、チャプター2の出だしは1と対比させて
二十年前・・・。
午後だ。それは暖かい午後だった。
私はペンを口にくわえたまま黒革の椅子に座って二匹のネズミが追いかけっこするのを見て楽しんでいた。(爆笑)
という出だしになります。
で、ストーリーなのですが、探偵アライアスの事務所に「黒コートに白シャツ、長い首にグレーのネクタイをした男」が「娘のティナが誰かに殺された」という依頼でやってくるのですが、因みにこの探偵
「いつもデザート・イーグル・ハンドガンをコートに携帯し、いつでも戦闘可能、なぜなら私はかつてアメリカ海兵隊(U・S マリーン・コーア((^_^;) にいたことがあり(マジかよ)ブリティッシュ・シークレット・サービス(МIB)にも所属してハンドガンの扱いはお茶のこさいさいなのだ」
どわっははは。
いや、笑っちゃいけません。息子大真面目です。
ストーリーは・・・
まあ、ストーリーがどういう謎解きなのか、知りたいという方もおられますまい。
エリス中尉、小学生の時、「画家である父親のフランス留学時代の友人の娘と言葉無しで通じあう小学生の女の子の話」を書いたことがありますが、息子は当時のエリス中尉よりさらに二歳年下、読んでいる本と観ている映画の影響とはいえ、この「それらしい展開」「どこかで聞いたような言い回し」はいつの間に・・・、と驚かされました。
そのうち、母親の方も面白くなってきて、
「えー、"It's enough son, time to say good bye"」
「ちょっと待ってママ、そんなこと書いてないよ」
「こっちの方がいいって」
「話作んないでくれる?」
などと叱られながら深夜までかかってタイピングを終えました。
その中で、なかなか秀逸だと思われる部分をもう少しお付き合いください。
(探偵の謎解きの場面で)
「Lightninng sparks the sky.
Great droplets fall to the ground.
Death is sure to happen.」
マックスは朗唱した。
「俳句の時間じゃねえぜ、マックス」
私は言った。
「そもそも最後のセンテンスが6シラブルじゃないか、その句は」
(犯人を追いつめなぞ解きを順番にしていくシーン。理由は五つあった)
「四つ。
血まみれのカードキーから、犯人は指を切ってけがをしたと俺は踏んだ。
あんたの指の切り傷、それはあんたがここに来た時からあったものだ。
最後に」
「まだあるのか」
マックスはうんざりしたように訊ねた。
「もうすぐ終わる。我慢して聞け(後略)」
息子というものに大きな期待もせず、時として馬鹿親でこそあれ親ばかでは全くないと自負しているエリス中尉ですが、今回は「こいつ、早熟てるなあ」とかなり驚いたのも事実です。
そういえば、先日まで大評判だった映画「インセプション」を劇場で見たとき広い映画館、子供は彼だけ。
デートで来ていた女の子が彼氏に「よくわかんなかったー」と言っている中で
「今まで見た映画で一番おもしろかった」
と言いきっていましたな。
なんだか独自路線を突っ走って行きそうな予感ありありの愚息ですが、せいぜい突っ走りすぎてヘンなヤローにならないように親としては見守るしかなさそうです。
そうそう、この小説?の最後の場面です。
現在・・・。
そう、これが私とアライアスに起こったことだ。
アライアスは一度ここに私を訪ねてきて、かれのストーリーを語った。
私はいまだにかれを憎んでいるがこのごみため(ムショ)を出次第、復讐にとりかかるつもりだ。
私の名前はマキシミリアン・ドイル。
終
不吉なくらい漆黒の夕だ。
私はライフ紙を手に黒革の椅子に身をもたせている。
私の名はアライアス。
私はあまりに多くのものを見た。
黄金。悪人。狂った男。そして殺人だ。
私はこの街にもうすぐ起こる最悪な出来事を知っている。
二十年前私は探偵だった。
二十。きりのいい数字だ。
そういや二十分前には私は夕食をとったな。
二十年前の私は幸福に満ちていた。
二十年前私は最後の事件を扱った。それが最後だった。
私はまるで狂った子羊のようにドアをぶち破って飛び込んできた男のことをよく覚えている。
彼の名はマクシミリアン・ドイルといった。
ハードボイルド小説です。
これ、何を隠そうエリス中尉の十歳になる愚息の英作文の宿題です。
(画像)
朝内緒でバックパックから抜き取ってコピーしてやりました。
まさかブログで宿題をさらされているとは夢にも思うまい。
これまで継続してこのブログを読んでくださっていた方は、いったいうちの豚児は何人(なにじん)なのか、とふと思われたかと思います。
かれはれっきとした日本人なのですが、半分日本語、半分英語教育を受けています。
まあ、その理由については今日はご勘弁いただくとして、昨日手伝わされた冒頭の宿題があまりにおもしろく、翻訳しながら噴き出してしまったので息子には内緒でここに紹介することにしました。
昨夜、「今日はコンピュータのタイピングがあるから公文(塾)早く切り上げる」
と言って早く帰ってきたのはいいのですが、パソコンの前でため息をつきながら遅々として進まない様子。
そりゃ指一本打法では進むまいよ。
「原稿読んであげるからタイピングしたら?」
といってエリス中尉が下書きを読み上げ、息子はそれをタイピングし始めたのですが、
え、ちょっと、こんな言い回しどこで覚えてきたの、という文章の宝庫。
冒頭はチャプター1ですが、チャプター2の出だしは1と対比させて
二十年前・・・。
午後だ。それは暖かい午後だった。
私はペンを口にくわえたまま黒革の椅子に座って二匹のネズミが追いかけっこするのを見て楽しんでいた。(爆笑)
という出だしになります。
で、ストーリーなのですが、探偵アライアスの事務所に「黒コートに白シャツ、長い首にグレーのネクタイをした男」が「娘のティナが誰かに殺された」という依頼でやってくるのですが、因みにこの探偵
「いつもデザート・イーグル・ハンドガンをコートに携帯し、いつでも戦闘可能、なぜなら私はかつてアメリカ海兵隊(U・S マリーン・コーア((^_^;) にいたことがあり(マジかよ)ブリティッシュ・シークレット・サービス(МIB)にも所属してハンドガンの扱いはお茶のこさいさいなのだ」
どわっははは。
いや、笑っちゃいけません。息子大真面目です。
ストーリーは・・・
まあ、ストーリーがどういう謎解きなのか、知りたいという方もおられますまい。
エリス中尉、小学生の時、「画家である父親のフランス留学時代の友人の娘と言葉無しで通じあう小学生の女の子の話」を書いたことがありますが、息子は当時のエリス中尉よりさらに二歳年下、読んでいる本と観ている映画の影響とはいえ、この「それらしい展開」「どこかで聞いたような言い回し」はいつの間に・・・、と驚かされました。
そのうち、母親の方も面白くなってきて、
「えー、"It's enough son, time to say good bye"」
「ちょっと待ってママ、そんなこと書いてないよ」
「こっちの方がいいって」
「話作んないでくれる?」
などと叱られながら深夜までかかってタイピングを終えました。
その中で、なかなか秀逸だと思われる部分をもう少しお付き合いください。
(探偵の謎解きの場面で)
「Lightninng sparks the sky.
Great droplets fall to the ground.
Death is sure to happen.」
マックスは朗唱した。
「俳句の時間じゃねえぜ、マックス」
私は言った。
「そもそも最後のセンテンスが6シラブルじゃないか、その句は」
(犯人を追いつめなぞ解きを順番にしていくシーン。理由は五つあった)
「四つ。
血まみれのカードキーから、犯人は指を切ってけがをしたと俺は踏んだ。
あんたの指の切り傷、それはあんたがここに来た時からあったものだ。
最後に」
「まだあるのか」
マックスはうんざりしたように訊ねた。
「もうすぐ終わる。我慢して聞け(後略)」
息子というものに大きな期待もせず、時として馬鹿親でこそあれ親ばかでは全くないと自負しているエリス中尉ですが、今回は「こいつ、早熟てるなあ」とかなり驚いたのも事実です。
そういえば、先日まで大評判だった映画「インセプション」を劇場で見たとき広い映画館、子供は彼だけ。
デートで来ていた女の子が彼氏に「よくわかんなかったー」と言っている中で
「今まで見た映画で一番おもしろかった」
と言いきっていましたな。
なんだか独自路線を突っ走って行きそうな予感ありありの愚息ですが、せいぜい突っ走りすぎてヘンなヤローにならないように親としては見守るしかなさそうです。
そうそう、この小説?の最後の場面です。
現在・・・。
そう、これが私とアライアスに起こったことだ。
アライアスは一度ここに私を訪ねてきて、かれのストーリーを語った。
私はいまだにかれを憎んでいるがこのごみため(ムショ)を出次第、復讐にとりかかるつもりだ。
私の名前はマキシミリアン・ドイル。
終