銀のデート

2013年10月19日 | 健康・病気

今日のラジオ文学館は、石田衣良の「銀のデート」という短編だった。
(2012年7月7日放送のアンコール)
原宿の表参道を散歩するのが楽しみな夫婦。
近くに小さなマンションを買ったのは20数年前だった。
美砂の手は犬の散歩に使うリードを握っている。
そのリードの先は、夫の手首につながっているのです。
夫が迷子にならないように…。
夫・朗人がショーウィンドウを見て呟く。
「この時計安いな」
美砂は、朗人の見ている時計の値札を見ると7桁だった。
夫は数年前から数字のことがよく分からなくなっていた。
記憶もおかしくなり、会社に迷惑をかけてはいけないと50代で退職した。
美砂は、日々の介護が大変になった。
朗人の症状はどんどん進行していく。
ある日散歩をしているときに「今日は何日だ」と朗人が訊く。
「11月23日勤労感謝の日よ」というと、
「今日は、デートの約束があるんだ。若い綺麗なひとなんだ」
急に家に戻るという。
朗人は家に帰り一番お気に入りのスーツを着た。
ネクタイの締め方を忘れたから美砂に締めてくれと頼む。
美砂はなんか面白くない。
いつどこでそんな若い女性と知り合ったのだろう?と思う。
ほとんど毎日2人で過ごしているのだ。
夫は、銀座の和光前で待ち合わせなんだといそいそと出かけていった。
美砂もスーツに着替え、少し遅れて出かけた。
悲しいけど後味の良い話だった。

コメント
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