残業をして、私の住む建物(公団住宅なのでマンションとは呼べない。なん
か自然な表現じゃないな)についたのが8時半。私は、いつもエレベーターの
ボタンを押して(なぜか私が帰るとき、いつもエレベーターは4、5階にいら
っしゃる)コンコースにある郵便受けのものを取り出し、降りてくるエレベー
ターに乗り込む。
郵便受けに入ってるものは、たいがいはダイレクトメールか、この辺の不動
産屋、食べ物屋、車のディーラーか宅配ビデオ、テレクラなどの風俗関係のチ
ラシがほとんどだ。
いつもその辺に捨ててしまおうと思うのだが、捨てるところがないので部屋
まで持って帰る。これがすごいゴミなんだな。まったく、紙がもったいない。
でも、ナンバーキーをはずして郵便受けの扉を開けるとき、中に何があるか
な? と楽しみな気分は毎日ある。
今日は…。
ありました。いつものチラシの中に、封筒が。
誰へのかな? と興味津々なのだがのんびり見ていると、降りてきたエレベ
ーターの扉が閉まってしまう。私は、郵便受けの中のものをわしづかみにして、
従順に私を待っているエレベ様に飛び乗る。扉の閉まったハコの中でチラシに
挟まった封筒の宛名を見ると、「** U様」と書いてあった、ちぃっちゃな字で。
この文字には見覚えがある。3週間ほど前だったか、見たことのある文字だった。
*****子と、同じ名前が書いてあった。
家に入り、Uの部屋の襖をノックし、出てきたUに、
「U、手紙だよ」
と、さりげなく渡した。
私は、その手紙の差出人のこと、いろいろ訊きたいんだけど、訊かない。女
房にも訊くな、といってる。Uの大切な青春、今はそっとしておく。
Kは、共学の高校でこれまで何人かの女の子と付き合ってる。彼はくわしく
ではないがそれなりに話してくれる。
Uは男子校で、そんなことはないのでは…、と女房と勝手に思いこんでいた。
さて、*****子さんは、Uの青春をどうしてくれるのか…。