国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ドイツの主要紙に、EUは米国との同盟をやめてロシアと同盟すべき、と言う記事が掲載された

2009年11月14日 | 欧州
●東半球と西半球 2009/10/29 BERLIN/MOSCOW(Own report) -

EUはアメリカを向くのをやめて東に向きを変え、ロシアと同盟すべきである。このような主張は、ドイツのある主要紙の宣伝係によってなされている。ヨーロッパが自らを西側世界の一員であると考えるのは間違っている、とその著者はドイツ「地政学」の古いイデオロギー信奉者に基づいて説明している。事実、ドイツは「ユーラシアエネルギー地域」に所属しており、米国との協力は「誤った方向」に基づいている事を理解しなければならない。「ユーラシア中西部の国」であるドイツは、大西洋に浮かぶガレー船ではないのだ、とフランクフルターアルゲマイネ紙日曜版がこの週末に掲載した記事は述べている。この新聞自体はドイツの体制の西側指向の領域に固定されているが、強力な米国に対する非難を公開討論の場で用いる時が来たと明らかに認識している。これは、ますます東向きで特にロシアのエネルギー資源を目指すドイツの経済的拡張の長期的変容によるものである。「ユーラシア」の論争は、かつては禁忌とされた極右主義のイデオロギー信奉者を公開討論の焦点に引き寄せている。

より大きな地域の機構

申し立てを説明するために、この傑出して位置づけられた記事の著者は、ドイツ「地政学」の古いイデオロギー信奉者とともに、禁忌とされた極右のイデオロギー信奉者を参考にしている。ドイツ地政学の創始者であるKarl Haushoferは、既に過去において、欧州から東アジアに拡がる大陸政策を提唱した、と記事は述べている。1920年代から1930年代にかけて、Haushofer はナチスに貢献し、その地政学の著作はナチスの膨張の重要な基礎となった。今日では、著者によると、ユーラシア運動の指導者であるAlexander Duginは、カディスからウラジオストクに至るより大きな地域の機構について慎重に作業しているという。Dugin はロシアの指導的極右イデオロギー信奉者の一人と見なされている。彼の「ユーラシア」と言う概念はドイツの極右によって注意深く研究されている。ロシアでは、Duginの著作である「地政学の基礎」は重要性が増加し、「未来の一般幕僚たちの教科書の地位」に達したと著者は述べている。また、Duginの提案する"Pax Eurasiatica"の概念を推奨し、ドイツの憲法学者である Carl Schmitに隠喩している。SchmittはKarl Haushoferと同様にナチスのファシズムの先駆者であった。


限定された主権

Alexander Duginの「Pax Eurasiatica」の概念(それは「延長されたユーラシア地域」のルールを説明する)を使いながら、フランクフルターアルゲマイネ紙の記事はEUの成り行きを描いている。記事によれば、「もし全ての国家が自己決定権を維持するならば、地域外の覇権国と自由に交渉することが可能となり、この平和的な秩序からはみ出すことになる」。これは例えば、ポーランドやチェコがドイツやロシアから放射される潜在的脅威に対抗するためにアメリカとの同盟を通じて安全を確保しようと企てていることを示している。その様な努力に関連し、また「Pax Eurasiatica」に言及しつつ、記事は『覇権国は「地域外の国家」による干渉を禁止し、より大きな地域の中の他国の主権を制限する』と述べている。
http://www.german-foreign-policy.com/en/fulltext/56296?PHPSESSID=iivnc6jdqefk4bi062pm8dshi0




●日米同盟は解消の方向で、日本は中露を重視するようになるだろう。 - 株式日記と経済展望
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/e8db91ad74396cfc790647e4301d922b




●【日々是世界 国際情勢分析】親密な関係続くドイツとロシア 産経新聞2009.11.3

 4年前、ドイツでメルケル首相が就任したとき、対ロシア関係についてこう予測した専門家は少なくなかった。

 「人権保護などの観点から、プーチンの権威主義政治と距離をとる」

 プーチン露前大統領(現首相)と蜜月時代を築いたドイツのシュレーダー氏が首相を退任後、露政府系・ガスプロム関連会社の会長に就任したことへの反発が、メルケル首相にはあるとの観測からだった。しかし、ふたを開けてみると、その分析はどうやら見込み違いだったようだ。

 10月26日付の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)アジア版は「新東方政策」との見出しを掲げ、特集で独露関係の現状を分析した。

 2期目のメルケル政権が発足した今、「ドイツとロシアは想像を超えた規模でビジネスを展開している。ロシアびいきの状況でさえある」というのだ。

 ドイツはロシアの最大の貿易相手国。両政府の後押しを受け、両国企業間の大口契約も相次いでいる。

 8月、資金繰りに窮した独造船大手ワーダンは、独首相自身の働きかけで露元エネルギー相のユスフォフ氏に売却された。独総合電機大手シーメンスは露国営原子力企業ロスアトムと提携契約を結んだ。独自動車大手オペルは、露国営銀ズベルバンクとカナダの自動車部品大手のグループへの売却計画が進んでいる。

 メルケル首相は決して、ロシアの人権問題などに目をつぶっているわけではない。しかし、FTは世界同時不況で、雇用確保などのためにむしろ、両国間の友好が進んでいるとし、専門家の声を紹介した。


 「対露投資へのドイツ世論が変わったことに注目すべきだ。経済危機の前より肯定的になっている」

 10月26日付の露紙イズベスチア(電子版)は、2期目のメルケル政権下でも対露政策に大きな変更はないと分析し、「メルケルの計画は、言葉だけでなく行動によってロシアとの戦略的関係を補強するものだ」と報じている。政権の新外相には、シュレーダー氏の転身に極めて批判的だった自民党のウェスターウェレ党首が就任したが、9月29日付、露経済紙コメルサント(電子版)は「個人が演じる役割は副次的なものだ」と、新外相が対露政策で批判的な姿勢をとったとしても大勢に影響はないとの見方を示した。
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/091103/erp0911030747000-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/091103/erp0911030747000-n2.htm





【私のコメント】
ドイツの主要紙に、EUは米国との同盟をやめてロシアと同盟すべき、と言う記事が掲載された。この記事では、ドイツ地政学の創始者であるKarl Haushoferと、ロシアの極右イデオロギー信奉者であるAlexander Duginが取り上げられており、著者はDuginの提案する"Pax Eurasiatica"の概念を推奨しているという。Duginのいうユーラシアの範囲は、スペイン南西部の港町であるカディスからロシア極東のウラジオストクまでであり、欧州大陸+ロシアが中心である。また、Duginはイランやトルコ民族、アラブ民族との同盟を打ち出している。

パックスアメリカーナの終焉と共に、世界はパックスアメリカーナ以前の世界へと戻りつつあるように思われる。しかし、単純に戻っているのではない。この百年間にドイツとフランス、ドイツとロシアが戦ったことを反省して、戦争によらない、国家連合による覇権体制が誕生しつつある。ロシアとドイツの同盟もその一例であり、将来的にはEUとロシアは統合されてゆくことになるだろう。

ユーラシアの東側でも同様の事態が起きることだろう。ペリー来航前の世界、あるいは第二次大戦前の世界へと東アジアは回帰してゆくはずである。当然、株式日記の言うように、日米同盟は解消される方向に向かうだろう。その後の東アジアは、日本・ロシア・中国・インドの四大国の同意によって全てを取り仕切るシステムになっていくと私は予想している。また、日本・中国・ASEAN・オーストラリア・ニュージーランド・インドを含む東アジア共同体が大東亜共栄圏の後継組織として結成され、その中で日本が指導的役割を果たしていくことになるだろう。ドイツ紙の記事にあるように、東アジア共同体の内部でも、小国の主権は覇権国(日本・中国・インドの三大国)によって制限される様になっていくことだろう。








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10 コメント

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Unknown (fuji)
2009-11-14 19:28:37
厄介な朝鮮人の面倒は誰が見るのだろうか?

そこが問題だ!
返信する
No Koreans Allowed (Unknown)
2009-11-14 20:09:30
このプラン実施時には、朝鮮半島は真空パックされているので、特に問題はないかと、、、
返信する
Unknown (ななし)
2009-11-15 00:36:43
歴史的に見ても中国に押し付けるのが一番イイと思いますねw
扱い方を一番知ってるのも中国だろうし。
またあそこを押しつけられた国は必ず衰退していますからね。
中国の力を削ぐ為にもそれが良いでしょう。
日本はそれを黙認すればイイだけです。
返信する
Unknown (シベリア)
2009-11-15 06:46:01
サムソン判決が出る前に、ロシアのメドベージェフ大統領が「分割統治」云々発言してたような、、、 ロシアにちょっと注目してます。
返信する
Unknown (ks)
2009-11-15 15:09:24
世界と日本の経済・金融展望
~21世紀は陸と海のたたかい

2009年9月12日
三菱UFJ証券株式会社
チーフエコノミスト 水野 和夫

http://www.sc.mufg.jp/inv_info/business_cycle/m_economy/pdf/me20090925.pdf

ここでもカール・シュミット(Carl Schmit)を援用しながら
アジア共同体を提唱していますね。
日独で共通のキャンペーンが張られてますね。

シュミットにハウスホッファー(Karl Haushofer)。ともにナチスに影響を与えたドイツ人であり、ドイツをランド・パワーと位置づけたうえで論じています。

ハウスホッファーは、マッキンダーの「ハートランド(ロシア地域)を制したものが世界島(ユーラシア)を制す」を読んで、「ソ連を倒すのは無理、ならば、ドイツとソ連のランドパワー同盟を組めば世界を支配できる」と考えたわけです。

しかし、その際に、マッキンダーの「ヨーロッパは大きな半島であり、その半島及び沿岸部から届きにくい内陸部がハートランドであり、ハートランドに半島の付け根を抑えられると、半島は重大な安全保障上の脅威にさらされる」は無視したのでした。
ドイツも半島の一部であるのに。

また、内陸部からみれば半島の付け根(中国にとっての満州)や沿岸部は、内陸への侵入経路となり、内陸部にとっても安全保障上の要地となります。
結果、両者は対立を抱え込みます。

結局、ハウスホッファーは成功しませんでした。

EUはイデオロギー的には共産主義の脅威を、地政学的にはハートランドから圧力を受ける半島国家(あるいは半島地域の一部)としての脅威を共有することで成立しました。

もちろんEUには脱米の伏流もあったでしょう。
しかし、スパイクマンのアメリカへの提言、「リムランド諸国間のアメリカ抜きの同盟をバラバラに切断するが、同時に、ハートランドの国にリムランドの国々を支配させないようにする。」がありました。

そこで、「アメリカ抜きの同盟をバラバラに切断」をさける盾として、「ハートランドの国にリムランドの国々を支配させないようにする」ための、NATOを利用したわけです。
そして、EU成立までは、アメリカに対して比較的おとなしくしていたわけです。

EU諸国が、公然とアメリカとは違うEUの独自外交を取り始めたのは、EU成立後です。資源と市場、軍事がかなりの程度、自前で賄えるようになって初めて、外交的フリーハンドを得たわけです。
自立性=自律性を担保するもの(資源と市場、軍事)がある程度なければ、アメリカにつこうが、ロシア・ソ連につこうが、ついた側の手駒でしかありえず、駒ではなく指し手を見てればいいので、バランサーにもなり得ないのです。指し手達が取り合う駒です。

さて、上の論を見れば、EU成立まで、ドイツを含むEU諸国はハウスホッファー、その後も採用してません。

今、採用させるべく、(「文明の衝突」等がそうであた様に)キャンペーンが張られてる気配ですねえ。
アレクサンドル・ドゥーギン(Alexander Dugin)は、ロシアの政治活動家 、「新ユーラシア主義」として知られる現代ロシアの地政学者 、「ユーラシア運動」の設立者 なわけで。

この記事の発信地はMOSCOWと。
つまり、発信源の戦略的意図、願望が入ってますよ。

水野和夫のシュミットの援用の仕方が、逆用に近い部分がありますもん。
返信する
Unknown (ks)
2009-11-15 15:18:03
訂正
×ドイツを含むEU諸国はハウスホッファー
○ドイツを含むEU諸国はハウスホッファーを採用してません。

長文失礼しました。

返信する
ksさんへ (princeofwales1941)
2009-11-16 00:48:31
>この記事の発信地はMOSCOWと。つまり、発信源の戦略的意図、願望が入ってますよ。

記事を書いてるのはドイツ人の様ですよ。

また、フランスの社会学者であるエマニュエル・トッドも、EUとロシアの同盟を提唱しており、それに反対するポーランドを説得していますね。
返信する
Unknown (ks)
2009-11-16 03:20:41
米欄を汚して申し訳ありません。

手島龍一の「ウルトラ・ダラー」にある北朝鮮情報を否定する、北朝鮮を代弁するかのような情報がドイツ紙に載りました。
そういうことがある国です。ので、発信源はロシア、またはロシアとの同盟推進派だろうと考えました。

トッドの同化主義と、ロシア・ユーラシア主義のモナドロジーとは相性が悪い。
また、トッドの対等な戦略的同盟とドゥーギンの帝国主義的膨張傾向とは相いれない。
同床異夢だと考えています。

そして、EUは思想、世界観ともに、ユーラシアを前提に構想、設計されているわけではありません。
ここでも齟齬が生じるでしょう。

EUが政治的にトッドを利用するときは、バランシングをしている時だと見ています。

おそらく、アメリカは衰退するでしょうし、多極化もするでしょうが、ランド・パワーの時代になるかどうかは、疑問に思ってます。

たとえばモンゴル帝国に対する、ヨーロッパ、アラビア、インド、東南アジア、日本の抵抗を思い出します。
返信する
Unknown (ナナ)
2009-11-20 18:58:39
ツラン同盟論に何となく似ています。


>厄介な朝鮮人の面倒は誰が見るのだろうか?

ツラン同盟論に於いて、朝鮮は中華の影響によってツラン性が失われているという理由で、都合よく外されています。しかし将来、新渤海国や新満州国と成って、ツラン性を回復するかもしれないとしています。
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Unknown ()
2009-11-21 07:49:48
中共があるかぎり東アジア共同体は危険
返信する

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