国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

先住民の権利保護に関する国連総会決議に反対票を投じた米加豪NZの4カ国

2007年09月14日 | 米国
今回の決議は国際情勢から見てどの様な意義があるのだろうか?私は、「大英帝国=国際金融資本が正義であった時代、アメリカが正義であった時代の終わり」を意味していると考える。 大英帝国=国際金融資本は「新大陸」に多くの白人を入植させ、先住民族を排除しながら巨大な植民地帝国を建設してきた。そして、アフリカ大陸から多くの奴隷を新大陸に送り込んだ。20世紀後半の米国に於ける黒人解放運動はアファーマティブアクションなどの一定の成果を挙げたが、先住民族と白人の対立は白人と黒人の対立とは異なる深刻な問題を抱えている。それは、「アメリカは誰のものか?」という根元的な問いかけを通して、アメリカ合衆国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランドも同様)という国家の正統性を批判することに繋がるからである。 米国大統領選挙の有力候補である民主党のオバマ上院議員は、「黒人の米国も白人の米国もラテンアメリカ系市民のアメリカもアジア系市民のアメリカも存在しない。彼らが団結して結成した米国という一国家が存在する」と演説し、「アメリカという国家が素晴らしいのは、摩天楼の高さや、軍隊の強さや、経済の大きさにあるのではなく、『すべての人間は平等で、自由と幸福を追求する権利がある』という建国の精神に我々が誇りの基礎を置いているにことにある」と米国の偉大さを主張している。しかし、彼の主張する「団結したアメリカ」の構成員は移民の子孫ばかりであり、先住民族は含まれていないのだ。それも当然である。先住民族を虐殺し追放し土地を奪うことを前提として、移民国家米国の繁栄と国民の団結が実現されているからだ。 20世紀後半の世界では、米国が正義の代名詞であった。米国的であることが正義と同義とされ、米国文明の偉大さが全世界に喧伝された。しかし、その米国文明の裏に潜む先住民族虐殺+追放という原罪が注目されることは少なかった。今回の決議はこの原罪を国連総会の場で取り上げると共に、米国とその兄弟である加・豪・NZを糾弾したことに大きな意義があったと思われる。ひょっとすると、20世紀後半の世界では悪の象徴として「ナチスドイツや日本の軍国主義」が取り上げられてきたのと同様に、21世紀前半の世界では悪の象徴としての「米加豪NZの先住民迫害」が取り上げられ、米豪は犯罪国家の代名詞になるかもしれない。 . . . 本文を読む
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