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米利上げのブースター・・・円安・ユーロ安

2014-07-31 10:36:00 | 時事/金融危機
 

■ 米テーパリングの後の世界 ■

FRBはテーパリングを順調に進め、今年10月頃には米国債やMBSの直接購入を停止する見込みです。市場は、その後の金利上昇時期を2015年前半と見ています。

金利はグローバルな資金移動のポンプの役割を果たします。日米金利差が2%以上広がると、円キャリー-トレードのポンプが周り始め、円売り、ドル買いが発生する事から円安に拍車が掛かります。ユーロも同様にドルとの金利差が開けば、キャリートレードの調達通貨となり、ユーロはドルに対して下落します。

■ 出口戦略を成功させる為には ■

ゼロ金利に支えれたいる現在の市場で金利が上昇すれば、当然リスクオフや信用収縮の動きが生まれます。大規模な金融緩和の出口戦略が難しいのは、金利を正常化する局面で、これらの動きをどう抑制するか、具体的な方法が明確では無いからです。

確かに実体経済が上向いていれば、資金需要の高まりが金利上昇の影響を相殺してくれます。しかし、現状、アメリカの実体経済は力強くは回復しておらず、雇用も低賃金化によって拡大している為に消費の拡大も限定的です。

結局、現在のアメリカの経済も金融市場もゼロ金利の資金に支えられており、実体経済の回復が限定的な中で、資金需要は主に金融市場で発生しています。金利が高まれば、マネーゲームに投じられた資金の回収が始まる事は必至と言えます。

アメリカが出口戦略を成功あせる為には、FRBに変わって低金利の資金の供給先が求められます。要は、円とユーロに期待が高まります。

この時、日本経済やヨーロッパ経済が活況を呈していれば日銀やECBは緩和政策を停止せざるを得ません。ですから、2015年前半頃、ヨーロッパ経済や日本経済が低調である必要があります。

■ 消費税の10%アップとウクライナ危機 ■

日本においては消費税10%アップで景気は低迷しているはずです。このタイミングで多分日銀は追加緩和に踏み込まざるを得ない状況に追い込まれます。

ヨーロッパ経済も減速していますが、ウクライナ危機がロシアからのガス供給問題の発展すればヨーロッパ経済の足を引っ張る事は必至です。この為にもウクライナ問題は長期化し、ロシアとヨーロッパの表面的対立は徐々に深まって行くものと思われます。

■ 年金積立金運用基金GPIFは外債の比率を高めるのでは? ■

アメリカの出口戦略を成功させる為には、現在FRBが購入しているアメリカ国債を新たな相手に売却する必要が生じます。円キャリートレードが進めば円安が進行するので、為替介入の様な手法で日本に強引に買わせる事は出来ません。

金利の正常化に伴って米国債金利も上昇しますが、国債発行に伴う財政負担も拡大するので、米国債金利の上限は10年債で4%、30年債で5%位かと思われます。一方、米国債金利が上昇するという事は、大量に米国債を保有している機関で含み損が発生するという事になるので、需給が不安定化して、金利上昇の圧力も高まります。

FRBに変わる米国債の受け皿として中国や日本が注目されまますが、米ロ対立が高まっていれば、中国も大っぴらに米国債の保有高を高める事は出来ません。さらに、中国は国内経済の減速と言う問題が拡大しているはずです。(米国の消費回復は限定的なので)

そこで期待が集まる日本ですが、国内の資金がどの程度日米金利差に炙りだされて来るかに注目です。老人達もリーマンショックで懲りているので、投資信託を信用しなくなっています。個人の投資資金がどの程度アメリカに流れるかは未知数です。

次に注目されるのは年金資金でしょう。麻生発言によって年金積立金の日本株の運用比率が高まる事が期待されていますが、前回の見直し同様に、日本国債の枠を減らして日本株、外国株、外国債の比率がそれぞれ上昇すると思われます。日本国債は日銀が完全に買い支えていますから、年金の比重を軽くしても国債金利に影響は有りません。

■ ゆうちょ資金が使われるだろう ■

最もアメリカが注目しているのはゆうちょ資金でしょう。日本国債金利で金利が稼げない以上、ゆうちょ銀行は安全で安定した金利が得られる投資先を探さざるを得ません。

米国債ならば信用力も高く、流動性も高いので、ゆうちょ銀行の様に運用ノウハウの低い金融機関は米国債運用の比率を高めるはずです。

実際にリーマンショック直後、米国債を支える為に小沢一郎はゆうちょ資金で米国債を大量に購入しています。今回もアメリカの利上げをサポートする為にゆうちょ資金が使われる可用性は低くありません。

■ ドルの安定は世界の金融の安定に利するが、結局バブル化して自壊する ■

米国の出口戦略が日本やユーロに先駆けて成功すれば、アメリカの一人勝ちの時代が始まり、金利差に引かれて世界の投資マネーがアメリカに集まります。

株価も債権価格も上昇し、再びリーマンショック前の様な状況が生まれるでしょう。一方で、市場はその好景気の継続性に疑問も抱いくはずです。リーマンショックの教訓は、簡単には忘れ去られはしません。誰もが、「今度の宴はいつまで続くのだろう」という思いを抱きながら踊り続ける事になります。

「勝ち逃げ」を狙う投資家達は、過度のリスクを取り、人よりも早く稼いで撤退しようと考えるはずです。こうして、過剰なリスクが拡大して行き、バブルの拡大が始まります。そして何かの切っ掛けで崩壊する・・・。

■ 中東やウクライナ、東アジアの仕込みが意味を持つのはその後では? ■

もし仮に再びリーマンショックの様な金融危機が発生した場合、ドルを始めとした通貨や、米国債や日本国債を始めとした多くの国債の信用問題に発展する可能性は低くありません。

世界的な金融緩和前に起きた危機と、緩和を経験した後に起きる危機とではその性質が異なるからです。金融緩和が金融危機の抜本的解決にならない事が明らかになれば、次の金融緩和の効果も限定的になり、一方で通貨や国債の信用は大きく揺らぎます。

現在、世界では中東、ウクライナ、そして東アジアと紛争の種がまかれています。これらの種が芽吹くのは、通貨の信用が揺らいだ時では無いかと思われます。

この時、世界は有事のドル買いでドルを支えるのか、あるいは紛争という危機を利用してガラガラポンが発動されるのか?

例えば、中国との交戦が発生したとすれば、米国政府は中国が保有する米国債を凍結するはずです。これだけで巨大な債務が帳消しになります。こうして、危機を利用して世界はブロック経済に移行し、ドルやユーロや元は地域覇権通貨に姿を変えて行くのかも知れません。


円はどうなるのか?
現在の財政状況と人口動態を鑑みれば、おのずと円や日本国債の末路は予測出来るかと。


尤も、これは最悪のシナリオで、米経済の回復が世界経済を刺激して、世界経済も復活。日本はオリンピック景気で復活なんてハッピーな予測も出来る訳で、いずれにしても市場は「極端な予測」は無視して淡々と利益の機会を探し続けるのでしょう。