人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

意外と良作揃いだった・・・今期アニメベスト

2014-07-01 04:13:00 | アニメ
 

■ 意外にも良作が多かったが・・・ ■

「のんロス」状態(『のんのん日和』の喪失状態)でアニメに今一つ身が入りませんでしたが、実は結構良作が多かった気がします。ただ、如何せん小粒な作品が多く、10年後、20年後にファンが覚えている様な作品はほとんどありませんでした。

そんな中、確実に10年後も語り継がれる唯一の作品はこちらではないでしょうか?


第1位 『健全ロボダイミダラー』


これぞアニメ!!・・・『健全ロボ ダイミダラー』(人力でGO 2014.04.26)

最終回の「又吉長官」の語りが、この作品のスタッフの本音を語っています。「エロとは本来健全なリビドーの発露なのだ!!」と・・・。「女子化」が進む現代の男子にとって、この作品の持つ意味は決して小さくは無いとかと。

都議会のセクハラ・ヤジが問題になっていますが、「性が淫らなもの」という発想は本来日本にはありませんでした。明治維新にキリスト教の貞操観念が日本に伝わり、それがいつのまにか社会に浸透します。一方、明治以前の日本の性風俗はもっと大らかなものでした。売春婦である花魁は現代で言うアイドル的存在でしたし、当時のもう一方のアイドルであった歌舞伎役者は「河原乞食」と呼ばれるなど身分は低く遊郭には出入り禁止だったとか・・。こちらもタニマチとの関係は大らかなものでした。

地方に至っては、性は楽しみの一つであると同時に、ムラ社会の秩序を維持する重要な役割を担っていました。「子孫を増やす」事がムラの共同体維持には不可欠でしたから、その為のシステムはかなり発展していた様です。(これ、柳田国男の「民俗学」が完全に無視し、あるいは意図的に封殺した日本の本来の姿です。)

まあ、都議会のヤジは確かに品位が有りませんが、人口減少が問題となる社会で、「生まない選択」はゲーム理論における「裏切りによる利益」に相当します。子供を産み育てる事は経済的にも時間的にも大きな負担となりますが、社会と共同体維持の為に多くの人達は「当然」として子供を産み育てます。一方、経済的に豊であっても子供を産まない自由を選択したした場合は、社会の暗黙の約束から逸脱する事によって個人的利益を獲得する事になります。日本は従来ムラ社会の規範はこれらの「裏切りの利益」を許さなかったのですが、ムラ社会的秩序や規律が崩壊する一方で、キリスト教やイスラム教の様な社会規範は生まれませんでした。規範の無い社会においては「生まない自由」を阻害する要因も少なくなり、少子化に歯止めが掛からなくなりました。

もちろん、子供が欲しくても子供が出来ない方も多いかと思います。晩婚化によって不妊治療を受ける方達が増えています。一方で多くの若者が経済的理由から子供を創れない状況も無視できません。

色々問題があるのを承知で書くならば、都議会のヤジは都議会という場所的な問題はあるものの、従来の日本の村社会が女性に対して持っていた「女性は子供を産んでナンボ」という暗黙の規範が露骨に現れたものです。メディアが女性議員の過去を暴き始めるなど、被害者である女性議員に冷たいのも、ムラ社会の規範の名残が働いているのかも知れません。

性に対する問題や、女性に対するセクハラが非常にデリケートな問題となった現代において、「エロの何が悪いんだ」と開き直るダイミダラーは、抑圧された社会のリビドーの発露なのかも知れません。(そんなバカな・・・)

リビドーに忠実な我が家では、『健全ロボ・ダイミダラー』は家族全員のお気に入り作品になりました。「前シッポ」が我が家の流行語に!!


第2位 『一週間フレンズ』



小学校時代の出来事がトラウマになって、友達との記憶が一週間でリセットされる女子高生と、彼女に恋をした男子の交流を描く作品。「一週間で記憶がリセットされる」という設定だけで、どれだけ話を膨らめられるかに挑戦するかの様な作品ですが(原作)、細かなエピソードの積み上げで単調になりそうなストーリーをディテールが見事に補う最適な例ではないでしょうか。肌合いとしては『うさぎドロップ』に似た作品。これも家族枠。


第3位 『僕らはみんな河合荘』


こちらも家族枠の作品。本好きで人付き合いが苦手な女子高生と彼女に恋した男子が住むのは変人の巣窟「河合荘」。住人はドMのスランプ作家。ダメンズな美人OL。小悪魔な女子大生。現代版『めぞん一刻』という設定ではありますが、それぞれのキャラ立ちが良く、テンプレートで無い所が評価の対象。コメディーとしても独特の雰囲気を持っていて、ドギツイ笑を強要される現代において「やさしい笑い」に癒されます。


第4位 『ソールイーター・ノット』


『ソールイータ』のスピンオフ作品ですが、日常アニメとしての原作に、魔女の陰謀というオリジナル要素を加えたアニメ化えす。監督は『TARI TARI』で素晴らしい演出を見せた橋本昌和。又くノーマークの作品でしたが、BONSの今期の作品としては『アースエンジン』とは比べものにならない位の良作です。とにかく橋本の描く少女は可愛らしい。そして、本編ではエッジの効いたキャラ達が、ちょっとリアルな造形(画では無く、性格付けや演出的に)をしているのが嬉しい。脚本が必ず橋本監督と女性の組み合わせなのは『TARI TARI』の4話目以降と同様で、これが作品にホンワカとした質感を生んでいるのだと思います。


第5位 『極黒のブリュンヒルデ』


一話を見た感想は「こりゃ無いわ・・・」でしたが、2話目以降はグイグイと面白くなりました。宇宙生命体を寄生させる事で超能力を与えられた少女達は「魔女」と呼ばれています。サイコキネシスや未来予知、ハッキングやテレポーテーションなどオリジナルの能力を持つ「魔女」が「組織」から逃げ出しますが彼女達は能力の劣る下級の魔女。そして、彼女達は薬が切れると全身が崩壊して死に至ります。どうにかして「組織」から薬を手に入れて生き延びようとする彼女達に手を貸すのは村上という男子高校生。彼は抜群の記憶力と頭脳の持ち主です。圧倒的な力を持つ上位の魔女に対抗するために、村上は仲間の能力を上手く組み合わせて窮地を切り抜けて行きます。薬切れで死ぬまでのほんのわずかな時間、普通の女の子として暮らしたいというささやかな願いは、村上によって生きる希望に変わって行きます。

テンプレキャラのありきたりの作品ではありますが、チート能力のオンパレードを上手く組み合わせて意外な展開をさせる点は高く評価されます。特に、村上が自身の死をどう克服するかがご都合主義ではありますが、スリリングでもあります。ただ、最後はヒネリが無さすぎて・・・・。


第6位 『selector infected WIXOSS(セレクター)』


カードゲーム「WIXOSS」の販促アニメでありながら、ゲーム自体を肯定的に描かないという異例の展開。岡田 麿里の暗黒面が炸裂する作品です。ゲームバトルはオマケ程度で、「叶わない願い」を叶えようとする少女達の心の葛藤を克明に描いて行きます。どう見ても主人公の祖母がラスボスに思えて仕方が無いのですが・・・。OP主題歌は今期では最高の出来ですが、これ、音大出のチェリスト&ボーカルの作品ってなってますが、どう聞いても手練れの作曲家が提供しているとしか・・・・。





第7位 『シドニアの騎士』



緻密なSF描写が魅力の作品ですが、本編のストーリーや人物造形が非常に弱い。『モーレツ宇宙海賊』とは正反対の作品ですが、アニメにおけるリアリティを考える上で、この二つの作品の比較は面白いかと思います。



敢闘賞 『マンガ家さんとアシスタントさんと』


10分の短い時間に3話ずつの短編。こういう作品ではテンプレートなキャラが使い易いという好例かと思います。結構楽しませて頂いたので敢闘賞。



こうしてまとめてみると、「家族枠」の丁寧な作品が多かったシーズンでした。

この他に少女マンガの王道的な『それでも世界は美しい』や、主人公が正論を語り過ぎてウザい『魔法科高校の劣等生』が次点かな。


なんだかんだ言って、今期も楽しませて頂きました。来季は2期目の大型作品もあって楽しみですね。