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無邪気な善意は時に悪意よりも危険である・・・「正義」が強いる犠牲

2014-07-06 06:39:00 | 福島原発事故
 



■ 線引きによって生じた悲劇 ■

福島第一原発の20Km圏内、強制避難地域に一人残って生活している男性が居ます。
彼は残された動物達の世話をしながら日々を送っています。

上の映像は福島の強制避難区域のリアルを伝えるものとして大変貴重なものです。野山も川も、大地も基本的には事故前と何ら変りません。ただ、目に見えない放射性物質が加わっただけです。

問題は、その放射性物質が人間やその他の生き物に害を成すかと言うことです。20(mSv/年)以上が福島の強制避難区域の放射線量です。現在確認されている広島や長崎の放射線による被害の閾値は100mSvですが、これは一瞬に被曝しています。年間20mSvと、一瞬の100mSvの間には大変な差がありますが、福島の強制避難地域は害があるかどうか、科学的に判別出来ないので危険とされています。(発生確率の誤差の中に入ってしまう)

多くの方がこの映像を見て、「目に見えない放射線は怖い」と思われるでしょう。しかし、地域のコミュニテイーを破壊し、牛を餓死させた直接の原因は放射線による被害では無く、20(mSv/年)以上を強制避難区域に指定した「単なる線引き」なのです。

もし、仮に20(mSv/年)が人体に全く無害だった場合、強制避難区域の人々の生活を破壊したのは、ICRPの定める厳しすぎる防護基準だった事になります。

彼は放射性物質で汚染された福島の地に住み、淡々と現実を伝えています。ある意味、彼自身は放射線に無頓着の様にも見えます。「癌になるとしても、その頃はオレは生きていないし・・・」


■ 時として危険な「善意」と「正義」 ■

身に見えない放射線の恐怖とある部分折り合いを付けて生きている彼と、この映像を制作した人たちの意識には大きな隔たりがある様に私には思えてなりません。

この映像を作成したのは原発反対派の方達ですが、皮肉な事に、彼が将来に渡って健康である事が、放射線の安全性を将来的に証明する事になると私は考えています。

1(mSv/年)の放射線も危険とする国際放射線防護委員会(ICRP、NPOです)の防護基準は、「放射線は微量でもとても危険」とする事で、「核の抑止力」を最大化し、世界の平和に貢献して来ました。

一方で、過剰な防護基準によって避難生活を余儀なくされる福島の原発周辺の方達は、世界平和の為の犠牲者だとも言えます。

これは、ある部分仕方の無い事かと私も思いますが、一部の方達の「善意」が福島の方達の不幸を拡大している事に私は憤りを覚えます。

人は己の「善意」を疑いません。「善意」は「正義」であると信じています。
しかし、間違った認識によって生じた「善意」は、「悪意」にも増して厄介なものです。

かつて「宗教的善意」がどれだけの人たちを戦争で殺して来たでしょうか・・・。

人は「善意」や「正義」を振りかざす時こそ、それが「真実の正義」なのかを慎重に検討すべきですが、「善意」や「正義」は時として人々を盲目にします。



■ 安倍首相が愛用するラドン吸入器 ■


安倍首相は持病の潰瘍性胃腸炎の治療として、永年「ラドン吸入器」を愛用しているそうです。

「ラドンは放射性物質の一種です。首相が使っている装置は、200万円という高額なもの。装置から発生するミスト状のラドンを口から吸い込み、血液を介して全身に行き渡らせる。通常は、1日6回、1回10分を目安に吸入するそうです」(官邸事情通)

http://www.radon-medical.com/device/index.html

上のURLでラドンミスとの発生装置の概要が分かります。


この装置によるラドンの吸入量は最大20,000Bq/6ℓ・分の様です。1回10分吸引するので200,0000Bqを吸引する事になります。さらに1日10回この吸引を繰り返します
このうちの1%が体に吸収されるようです。

天然のラドン鉱泉でラドンの量が多いとされるバート・ガスタインのラドン泉ではラドン222の濃度が110 Bq/Lですから、この装置の発生するラドンの濃度は天然のラドン鉱泉の300倍にもなります。但し、吸引時間が10分と短いので、最終的に吸引するラドンの量は天然鉱泉と同等となるのかも知れません。

ラドン(Rn222)の半減期は3.8日でアルファー線1個とベータ線2個を発生します。半減期が長い為に「史上最凶の毒物」とされるプルトニウムの半減期は2万4千年なので、同一Bqから発生する放射線の強さ(被放射能)は、ラドンの方がプルトニウムよりも圧倒的に高くなります。

この様に「最凶」とされるプルトニウムなど比較にならない程の量のアルファー線を発するラドンですが、現在でもラドン温泉の治療は医療として認められています。WHOはラドン吸引による発癌性の上昇を警告していますが、世界に点在する天然ラドンによる高放射線地域では、むしろ住民は健康だとの研究もあります。

建材に使われた石材がラドンを発して、ラドン濃度の高い住宅や地下室が存在した場合、問題となるラドン濃度は1000Bq/1㎥程度の様です。これは365日、何年もこの中で暮らしている人に健康被害(発癌)が発生する可能性があるという事で、安倍首相がラドン吸入器によって吸入するラドンの量は、これよりもずっと少なくなります。

「一国の首相がこんな危ない物を使うなんてクレイジーだ」という論調でマスコミにも取上げられていますが、低線量率の放射線が免疫系疾患に有効だという事を、国家レベルで証明しているのか、或いはこんな危険な治療を必要とする程、安倍首相の病状は深刻なのか・・・。

何れにしても一国の首相が放射線源となる様な装置が医療用として販売されているのは興味深い事実です。確かにアルファー線は到達距離が短いので対外に放射線を発する危険性はほとんど有りませんが、オバマ大統領が安倍首相を避ける原因は、案外こんな所にあるのではと妄想してしまします。

ICRPの防護基準は1(mSv/年)も危険かも知れないと定めているのに、一方ではラジウムを大量に吸引する様な医療機器が普通に販売され、さらに一国の首相が愛用している。放射線を巡る科学的な見解の虚実は、こんな所にも現れているのかも知れません。

私の記事もCTスキャンの記事などが多くネットに引用されていますが、そのほとんどが「CTスキャンだって危険だ」的な取上げられ方です。こうして、ネット社会は恐怖というバイアスに支配され易く、意外にも真実は片隅に追いやられてしまいます。

「正義」の名の下に、「真実を知る努力」を別の方向に捻じ曲げてしまった多くの方達が、もう一度ニュートラルな視点で、放射線について色々と調べる事を期待して止みません。