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太陽光発電は儲かるか?・・・官制詐欺の実体

2014-07-15 02:02:00 | 温暖化問題
 

■ 表面金利10%の太陽光発電は儲かる?! ■

最近、農村を自転車で走っていると多く見かけるのが「野立て」と言われる休耕田を利用した太陽光発電。田んぼ1枚程度の広さの土地に、太陽光パネルが並んでいます。これ、最近では「メガソーラ」に対して「プチソーラ」と呼ばれているみたいです。

太陽光パネルは中国産や台湾産が安価に輸入される様になり、初期投資が飛躍的に低価格化した結果、元々所有する土地に太陽光パネルを設置すれば、表面金利で10%を稼ぐ事が出来ると盛んに宣伝されています。

少子高齢化で住宅需要が減少する現代は、遊んでいる土地にアパートを建てても空き室が発生すれば投資を回収する事すら難しい。金利10%が稼げるのであれば、アパート経営などよりは余程儲かると、多くの人が「プチソーラ」に飛びつきました。

■ メガソーラの時代は終わった ■

現在の太陽光発電ブームは、原発事故のドサクサで孫正義氏が政府を説得して導入された「固定価格買取制度(FIT)」に支えられた官製バブルです。当時、民主党政権は太陽光発電の電力を1KWh当たり42円固定で、20年間電力会社に買い取らせる法律を制定しました。この買取額は世界で最も高い価格でした。

まとまった土地を所有(或いは低価格で確保)出来れば、儲からないはずの無い好条件に、ソフトバンクを始め、ゼネコンやハウジングメーカ、さらにはワタミまでもが飛びつきます。フライングでも事業計画を申請すれば、土地取得以前でも認可が下りたので、大量の申請が殺到しました。

しかし、実際に稼働を開始した物件は2割ほどしかありませんでした。FITは認定を受けた時点の買い取り額が採用されます。一方、太陽光パネルの価格が値下がりしすれば利益は拡大します。そこで多くの業者は認定だけ受けて実際に発電事業は開始せずに太陽光パネルの値下がりを待っています。FITには、認定から事業開始までの期間が規定されていないという、超いい加減な法律だったのです。(現在は認定取り消しが検討されています)

一方、メガソーラで採算性を上げるには、安価で広大な土地が必要です。さらには送電設備へのアクセスが容易な場所である必要があります。その様な土地は限られており、既にメガソーラの先行企業の中からは「メガソーラの時代は終わった」との声も聞かれます。

■ プチソーラの時代 ■

メガソーラの開発が下火になる一方で、小規模な太陽光発電(プチソーラ)は増えており、電力会社の送電線に接続する工事で長期間待たされる状態が続いています、

一方、破格と言える買取価格は、自民党政権になってから36円/kwh、さらには32円/Kwhまで値下げされています。

それでも、発電効率が高ければ、10年で投資が回収できるという触れ込みでプチソーラを始める農家が増えています。

■ 金利10%は本当に稼げるのか? ■

太陽光発電事業の採算性を考えた場合、投資の回収の為には次の条件が必要です。

1) 自前の土地(無料)、或いは安価で土地を調達できる
2) 日照時間が充分に確保出切る
3) 草刈など、メンテナンスが確実に出来る
4) 買取価格が充分に高い
5) 設備が利益を確保するまで故障しない

設置後経費があまり掛からないと思われている太陽項発電ですが、「野立て」の場合、除草費用が発生します。設置前に地中に除草シートを敷き詰める工法以外は、適時に除草剤の散布や人力による草刈が必要になります。

さらに、陽光発電の設備には、固定資産税や相続税、売電収益に対する所得税が掛かります。太陽光パネルは税務署の目にも留まるので、買取電力会社に問い合わせれば売り上げは直ぐに調べる事が出来ます。

この様な諸々の経費を除いて実質金利で5%以上確保できれば投資としては魅力的です。自民党政権下で買取価格が引き下げられた影響で、濡れ手に粟の大サービスこそ終了しましたが、それでも日当たりの良い遊休地を持っている人たちによとっては太陽光発電は魅力な投資です。

■ 定額買取20年で太陽光発電の事業者は損はしない ■

現在の太陽光発電の買取制度の最大の魅力は20年間の固定価格買取制度です。民主党時代の42円/kwhで申請した業者は、それこそ濡れ手に粟ですが、現状の32円/kwhで申請しても、土地が自前で発電量の多い場合は、それなりの利益が将来的にも約束されています。

将来的な空き室リスクや、老朽化によるメンテナンスがかさむアパートやマンション経営よりも太陽光発電は有利な投資とも言えます。

さらに、送電設備があって、日当たりが良い土地ならば不便な場所でも収益が変らないことは大変なメリットです。

一方で、20年間の固定価格買取はインフレの影響を受ける事も理解が必要です。例えば、アベノミクスが大成功して日本が年率2%の安定成長の軌道に乗った場合、20年後の物価は約1.5倍になっています。この他に中東情勢などによって原油価格は大きく変動するので、20年後に電力価格が現在の2倍になっている事もあり得ます。

しかし、太陽光発電事業で得られる実質金利が2%であるならば、太陽光発電の事業者は少なくとも損はしません。10年で投資が回収出来れば、その後は利益を生み続けます。

■ 電力料金負担者の負担で成り立つ詐欺ビジネス ■

実は太陽光発電の電力を割高な料金で買っているのは、私達一般の電力消費者です。電力会社は割高な電力を買ったコストを全て電力料金に価格転嫁しています。

一方、産業用の電力は安く供給されるので、一般家庭では太陽光発電など再生可能エネルギーの割合が増える程、電力料金が上積みされます。一時のドイツでは、一家庭あたりの1カ月の負担は2000円程度に達していました。

もし、仮に20年間の固定価格買取の期間に電力コストが大幅な値上がりをする様な事態が発生した場合、電力各社は私達一般ユーザーのお金で、将来的な安価な電力を確保している事になります。一見、電力会社が不利に見える電力の定額買取方式は、電力会社にもメリットの多いシステムなのかも知れません。

利用価値の無い遊休地の持ち主と、ソーラーパネルのメーカーと設置業者、そして電力各社は、私達利用者のお金で、自分達はほとんどリスクを負う事無くぼろ儲けをしているのです。

これは明らかなモラルハザードであり、電力料金の逆進性を高める詐欺ビジネスです。


■ 電力が自由化されたら淘汰されるかも知れない ■

もし、将来的に電力が自由化され、様々な業種から電力供給に参入があった場合、人々は割安な電力を求めるでしょう。当然、再生可能エネルギーの割合の少ない電力の方が安ければ、それを選ぶでしょう。

しかし、電力が自由化されても、再生可能エネルギーの構成比を法的に規定する事で、私達は誰かの儲けを負担させられる可能性は高いと思います。

■ 効率が悪いから割高な再生可能エネルギー ■

太陽光は密度の低いエネルギーなので、そこから電力を取り出す事は非常に非効率でコストが割高になります。

現在において再生可能エネルギーのコストは在来エネルギーに比べてとても割高です。電力会社の発電減価は7円/kwh程度と言われていますが、太陽光発電の買い取り価格の32円は5倍に近く割高な電力だと言えます。

原油や天然ガス価格の上昇によってこの差は徐々に縮まっていますが、中東戦争で石油ショックでも起こらない限り、価格が逆転する事はありません。


■ 再分配のシステムが良く無い ■

太陽光発電など再生可能エネルギーのコストは私達が負担していますが、売電という形で恩恵に預かっているのはソフトバンクなどの一部の企業と、遊休地を所有していた地主や農家です。

さらには中国は中国国内で資金と募って、太陽光発電ファンドを設立して、日本で発電事業を始めています。

FITによる太陽光発電事業は、投資者がほとんどリスクを取る事無く、一般の電力消費者が一方的に負担を強いられるシステムとなっています。これは、一般の人達から税金を取る事に等しいのですが、その恩恵に預かるのは社会的弱者では無く、いわゆる既得権者達です。その意味で税金よりも性質が悪いとも言えます。

「エコロジー」という見せかけのクリーンさの裏で、とんでも無い詐欺が続いているのです。