人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

異次元緩和は景気を回復させたのか?・・・世界のインフレ率を支える原油価格

2014-07-17 04:48:00 | 時事/金融危機
 

■ 異次元緩和が景気に働きかけるプロセスは日銀も説明出来ない ■

アベノミクスで日銀の異次元緩和というリフレ政策が景気を回復させたと主張する人達が居ます。しかし、リフレ政策が景気を回復させるプロセスは日銀とて説明出来ません。

一般には次に様に説明されるでしょう。

1) 不景気によって資金需要が低調
2) 金利がゼロ付近に貼り付くので、これ以上の金利による景気刺激は不可能
3) 過剰に通貨を発行して、実質金利をゼロ以下にする(強引にインフレを発生させる)
4) 実質金利の低下によって資金需要が生まれる

確かに異次元緩和の結果、物価が上昇し始めました。しかし、その主要因は「円安」による輸入製品と輸入原材料の値上がりです。


異次元緩和によって供給された資金の多くは日銀の当座預金にブタ積されており、マネタリーベースは増えましたが、市中に流通する資金はそれ程増えていません。こう主張すると、「アベノミクスで景気は好転したじゃないか」という反論を受けますが、補正予算による強引な雇用創出と、海外投資家の日本株高による資産価値の回復がその原動力になっています。

財政出動による景気刺激は、バブル崩壊後は景気回復には繋がらず一過性のカンフル剤としての効果しか発揮していませんし、外国人の日本株買いは、彼らがいつかは株を売り抜ける事で終焉します。

■ 日銀は金利の抑制には成功している ■

異次元緩和の効果として明確なのは「金利抑制」です。
異次元緩和の直後には、確かに日本国債市場は混乱して金利が上昇しましたが、その後は金利は低く抑えられています。

新発国債の7割を日銀が買うという異常な状態が続いていますが、人々はだんだんと異常に慣れてしまいます。異次元緩和が実質的な財政ファイナンスであっても、それによって日本の財政がしばらく延命出来る事を市場は重視する様です。

現在、日本国債の金利は10年債で0.65程度と極めて低い状況ですが、政府短期証券や短期国債の売買においてはマイナス金利が発生しています。これは、多少の円高を期待する外国人投資家の買いがあった為と思われます。

現在世界は低金利の資金でジャブジャブの状態なので、安全資産と言われる国債の金利は各国で低下しています。その曲端な例として、日本の短期証券でマイナス金利が発生したのでしょう。

こうして見ると、日銀を始めとした中央銀行の緩和政策は金利抑制に成功している様です。


■ 各国ともインフレに寄与しているのは原油価格ではないか? ■



各国中央銀行の緩和政策は実質金利を下げる事で資金需要を生み出し、経済の回復からゆるやかなインフレを生み出す事を目的としています。

しかし、アメリカの消費を見ても、消費が向上して結果的にインフレが発生している様には見えません。むしろインフレの主要因は、ドルの過剰発行による原油高の様に思われます。

リーマンショック後、40ドル台まで下落した原油ですが、その後、リーマンショック前の水準である100ドルに回復しています。これは、過剰流動性が石油市場に流入した為で、原油価格は需給関係よりも過剰流動性によって高止まりしています。

石油は全ての産業の基盤とも言えるので、原油価格の上昇は結果的に物価上昇に繋がります。リーマンショック後、各国のインフレ率が辛うじてゼロ以下にならない要因に原油価格のもたらす影響は少なくありません。

■ 原油とガスに圧力を掛ける世界 ■

現在の世界は、原油とガスに絡む地域で紛争が発生しています。ウクライナ問題も中東情勢もエネルギーコストの上昇に一役買っています。

過剰な原油価格やエネルギーコストの値上がりは経済にとってブレーキになりますが、適度な価格上昇は景気を大幅に失速させる事無く、インフレを実現しているのかも知れません。

どうしてウクライナや中東で今紛争が発生するのかを考えた時、金融緩和を正当化するインフレの達成と不可分では無い様な気がしています。