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[夏休みの読書感想文]がまだ提出できない君達に・・・短くて読みやすい本

2011-09-01 11:10:00 | 
 



■ 夏休みが終わりました。読書感想文は終わりましたか? ■

さて長かった夏休みも終わりました。

お子様方は、夏休みの宿題のボスキャラである
「読書感想文」を無事クリアーできたでしょうか?

我が家の娘は、三崎亜記の「失われた街」で提出しました。
と言っても、彼女の書き上げた感想文は稚拙でしたので、
結局、私が原稿用紙5枚分、口述してしまいました。

「エー!!そんなの違反じゃん!!」 とか、
「子供の自主性が無いじゃないか」 とか、
色々とお叱りの声も聞こえてきそうですが、
実は、日本の国語教育は「本を読んで感想を書け」とは言いますが、
では、「本をどのように読むか」は全く教えていません。

これでは教育としては片手落ちです。
本を読む苦痛を量産しこそすれ、
本を好きになるきっかけを与えるとは、とうてい思えません。

私もそれなりに読書好きの子供でしたが、
体系的に本を読む楽しさは、
大学の一般教養で選択した「文学」の授業で教わりました。

課題図書は、

「若き芸術家の肖像」  ・・・ジェームス・ジョイス
「情事の終わり」    ・・・グレアム・グリン
「1984年」       ・・・ジョージ・オーウェル
「チャタレー夫人の恋人」・・・D・H・/ロレンス
「アッシャー家の崩壊」 ・・・エドガー・アラン・ポー

どれも名だたる名著ですが、どれも工学部の学生には難解です。
ところが授業では丹念に本の背景が説明されました。

1) その本の書かれた時代背景
2) 作家の生い立ち
3) 作家の思想やトラウマ
4) その本がいかに革命的であり、後の時代に影響を与えたか
 
分からないなりにも、最後まで読む事が出来ました。
そして、「難解な読書の楽しみ」にちょっと目覚めたのでした。
(尤も、殆どの学生は、課題図書を読まなかったと思います)

私も娘に、「読書の方法」を教えたいと思っています。
たとえ、親の口述の丸写しでも、
本をどの様に読めば良いのかが伝われば、
それは、後々役立つのではないかと思っています。

尤も。娘はさらに加筆して提出した様です。
その内容は決して私には見せてくれませんでした・・・。


■ 「ミミズクと夜の王」は簡単に読める ■

さて、本日は夏休みが終わってしまったのに、
読書感想文が終わっていないというお子様達に
簡単な本を紹介します。
 
「紅玉いずき」は何年か前にデビューしたライトノベルの作家です。
その処女作「ミミズクと夜の女王」は、簡単な作品でしたが、
意外な事に読書好きの間で話題になり、
「泣ける」とか「心が表れる様だ」という感想が寄せられました。

心が真っ黒な私は、心の洗濯に読んでみましたが、
瞳の洗濯には充分役立ちました。(心は・・・)

中学の図書室に寄付してしまったので
本が手元に無いのですが、
短くて簡単な作品なので、誰でも直ぐに読めると思います。

そして、感想文が書き易い。
だって、この本を読めば、誰でも感動し、泣けるのですから。

・・・この本を読んで涙しない方は、友達になりたくありません!

■ 美しい魔王と、奴隷の少女の物語 ■

月夜の森の中、
額に「332」と刻印された奴隷の少女のミミズクは
梢に座して空を見上げる、美しい夜の王に心奪われます。

「私を食べて」とその身を差し出しミミズクを
夜の王は見守るだけです。

ミミズクは、それでも夜の王の下に通い、
人間を拒絶する彼の心に触れてゆきます。

夜の王は少しずつ少女に心を開いてゆきますが、
その時、魔物を狩る物が夜の王を捕らえてしまいます。

王宮の地下に繋がれた夜の王を
ミミズクがどう救い出すのか、
読み出したら止まりません。

■ 絵本の様な物語 ■

魔物に少女や王女が恋をする話は、
ディズニーアニメ「美女と野獣」を引き合いに出すまでも無く定番です。
魔物が実は王子だったという設定も、実にありきたりです。

こんな話は、ゲームでも子供向け小説にも溢れています。
要は、いたってステロタイプの物語とも言えます。

インターネットでも、
「泣けた」とか「感動した」という感想と共に、
「小説として未熟」とか「感情表現がなっていない」とか
「オタクの文学」などの酷評も多く見られます。

では何故40歳を過ぎたオヤジが、
こんな単純な本に泣かされてしまうのか?

それは、この本が「単純」であるが為です。

最近の「売れる本」はサービス満点です。
多くの謎がちりばめられ、
ギラギラのギャラクターが
見た事も無い世界で、
ギトギトの大活躍をします。

大人向けの本であっても、
単純な設定は影を潜め、
トラウマを抱えた大人達が、
ちょっと斜めに構えながらも、
事件を解決するなんて本が定番です。

ところが、「ミミズクと夜の王」には全く仕掛けがありません。
子供の頃、母親が読んでくれた絵本の様な世界が、
ただ、小説とというボリュームで展開しています。

魔王は強く、美しく、
少女は貧しく、心が純真で、
王は正しく国を収めんとし、
悪人は、愚劣な計略をめぐらします。

多分、小説を書きたいと作者が望んだとき、
作者のポケットの中にあは、
ゲームと絵本の様な物語が詰まっていたのでしょう。

そして稚拙あがらも心に浮ぶシーンを
文字で表現していたら、この小説が出来たのでしょう。

■ 自分だけの物語が生まれる時 ■

確かに心理描写という物は無く、
絵本の様な情景が淡々と綴られています。

過度の感情表現が排除された世界では、
森は深く静かに夜に沈み、
月は冷たく空に輝き、
湖は透明に月を写します。

ミミズクは夜の王に気に入られて、
薬草を取りに走り、
そこの雑念は存在しません。

ところが、それが故に読者は自由にこの世界を構築する事が出来ます。

森を自分の色に染め、
ミミズクの真剣な瞳を想像します。
物語が単純で、表現が単純であるからこそ、
いつしか読者は自分の作り出した世界で物語を体験し始めます。

■ ステロタイプという強さ ■

この物語を批判する言葉に「ありきたり」という評価もあります。

そかし「ありきたり」は決して悪い事ではありません。

多くの複雑な物語を解体してゆくと、
その根底にあるのは大概、物語のステロタイプです。

人間は神話の時代から、同じ物語を繰り返してきました。
これは洋の東西を問わず、同じような神話が生まれる事からも、
人間が感動し、興味を持つ物語の構造が似ている事を暗示します。

ですから「ありきたり」は決して弱点では無く、
むしろステロタイプを堂々と正面から描くと、
人はそれに感動するのかも知れません。

ヴァージニア・ウルフの「波」とい作品に一人の作家が登場します。
世紀の名作を書かんとして、彼が長い時間を掛けて書き出した一節は

「まだ明け染めし森に、白銀の甲冑をまといし一人の騎士が・・・」的な
(すみません、20年も前に読んだのでアヤフヤです)
まさに平凡の極みの一節でした。

ヴァージニア・ウルフがどのような思いを
この一節に込めたのか定かではありませんが、
小説の最後を飾るページに記されているこの一節は、
「文学とは、この単純な一節から始まるのだ」という事を暗示している様です。

■ とにかく簡単だから読んでみよう ■

「ミミズクと夜の王」は少女向きの本です。
エッチな描写も無いので、
男の子達は途中で飽きてしまうでしょう。

でも、子供に限らず、本を読む事の意味を考える時、
この単純で、それでいて清清しい一冊が教えてくれる事は
少なく無いと思います。



■ 追記 ■


高校生のちょっとエッチな君にお勧めは「朗読者」
短くて、エッチで、それでいた考えさせられる。
読書に挫折しても、DVDでフォローできます。
「歴史は変わる・・・朗読者」http://green.ap.teacup.com/pekepon/27.html

体育会系のキミに
「走れT高バスケット部」http://green.ap.teacup.com/pekepon/22.html

これこそが現代の課題図書に相応しい
「NNKにようこそ・・・文学におけるパンクとは」http://green.ap.teacup.com/pekepon/20.html


本が好きなのに、良い本が見つからなかったアナタに、
「ゆっくり読みたい・・・・象を抱いて猫と泳ぐ」
http://green.ap.teacup.com/pekepon/99.html


本日は夏休みの読書感想文が終わらない子供達の支援企画でした。

丸写しして、先生に怒られても、当方は責任を負いかねます・・あしからず。