美しき運命の傷跡(L' Enfer Hell)
2005年 フランス=イタリア=ベルギー=日本
監督:ダニス・タノヴィッチ
製作:マルク・バシェ、マリオン・ヘンセル、セドミール・コラール、定井勇二、ロザンナ・セレーニ
脚本:クシシュトフ・ピエシェヴィッチ
出演::エマニュエル・ベアール、カリン・ヴィアール、マリー・ジラン、キャロル・ブーケ、ジャック・ペラン、
ジャック・ガンブラン、ジャン・ロシュフォール、ミキ・マノイロヴィッチ、ギョーム・カネ、マリアム・ダボ、ガエル・ボナ
ポーランドの巨匠クシシュトフ・キェシロフスキ監督の遺稿を元に脚色された、ある三姉妹にまつわる地獄の物語。
冒頭で、カッコーが他の鳥の巣に卵を産み、孵った雛が他の卵をすべて下に落としてしまうところが大写しになる。
話に聞いたことはあっても、映像として見ると思わず身を竦めてしまうようなシーンが、重々しい影を落とす。
三姉妹の長女ソフィは夫の浮気に悩み、浮気相手を調べ上げてベットまで侵入するような執着ぶりをみせる。次女のセリーヌは、
人との距離の取り方がわからず、恋人がつくれない。また姉妹たちにも自分の居場所を教えることなく、ひとり体の不自由な母の
世話をしている。三女のアンヌは、父親の面影を追いかけてか、妻子ある大学教授との不倫に溺れている。
彼女達は家族が崩壊した過去の悲劇に囚われて彷徨っているのだ、というのは後から明らかになってくる。ひたすらに愛を求め、
苦しむ三姉妹の表情が映しだされる。キーとなる人物であるセバスチャンは自分の罪を告白するため、セリーヌを探して近づいて
いく。セリーヌは何も知らないまま、そんな彼に惹かれていく。
長女エマニュエル・ベアール、次女カリン・ヴィアール、三女マリー・ジランという名女優たちがそれぞれの悲劇を余す事なく
みせており、その母には圧倒的な存在感を持つキャロル・ブーケ。
世間には「トラウマなんて無い」という説(過去に負った傷を現在の自分の言い訳にしている)もあるが、傷跡そのものより
この母がいるからこそ三姉妹は運命に囚われてしまったのだろう。
ラストシーンで母が突き放した未来の先が気になってしかたない。