Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

北ホテル

2014年12月07日 | 1930年代 欧州

北ホテル(原題:Hotel du Nord)

1938年 フランス
監督・脚本:マルセル・カルネ
台詞:アンリ・ジャンソン、ジャン・オーランシュ
出演:アナベラ、ジャン・ピエール・オーモン、ルイ・ジューヴェ、アルレッティ、アンドレ・ブリュノ、
フランソワ・ペリエ、ポーレット・デュボスト、ベルナール・ブリエ、ジャーヌ・マルカン、シモーヌ

パリの運河のほとりに建つ北ホテル。
その一室で、ピエールとルネは心中を図る。
が、男は彼女をピストルで撃った後で怖くなって逃げてしまった。

すぐに手当されて命をとりとめたルネは、そのまま北ホテルでメイドとして働き始め、
常連客の男たちは何かと言えば彼女に声をかけ、チャチャを入れ、放っておかなかった。

それもそのはず。ルネを演じるアナベラの常人離れした可愛さ、というか、
この頃の女優さんって・・・同じ人間とは思えない。
妖精にちがいないって惑うくらいの軽やかさでフロアをターンするのです。

ルネは、刑務所に入れられた心中の相手・ピエールに面会し、待っていることを伝えるも
返って来たのは、すげない返事。そこで、ホテル常連客のエドモンに知らない土地へいって
一緒に人生をやり直そうと駆け落ちを持ちかける。
エドモンが昔の仲間に狙われていることを知りながら。

うむむむむ、悪い男だと認識してて、選ぶなんて愚かすぎると思うけど
現代の感覚とは違うのですよね。
さらに自分を撃った男を忘れられないなんて、愚の骨頂だよ。
北ホテルで働き続けるのが良いと思うけれど、ルネの情動はそうさせてはくれません。

ホテルでは、ベッドの金網をバーナーで焼いて南京虫対策をしていたり、お湯を沸かして
大タライに入れ行水の準備をしたりと、往時のライフスタイルも垣間見ることができ、
1コマ1コマが面白い。

そして、誰もが恋に走り、恋に生き、恋のうちに死ぬ。
愚かで愛おしい、そんな時代があったのだと知る。