リード・マイ・リップス(原題:SUR MES LEVRES)
2001年 フランス
監督:ジャック・オーディアール
製作: フィリップ・カルカソンヌジャン=ルイ・リヴィ
製作総指揮:ベルナール・マレスコ、アリックス・レイノー
脚本:ジャック・オーディアール 、トニーノ・ブナキスタ
出演:エマニュエル・ドゥヴォス、ヴァンサン・カッセル、オリヴィエ・グルメ、オリヴィエ・ペリエ、オリヴィア・ボナミー
人の唇の動きなんて、勝手に読まない方がいいと思う。
自分に向かって語りかける言葉以外は。
奥のテーブルや、他の部屋のことなんて、放っておけばいい。
でもカルラは、なまじっか、それができるばっかりに余計な陰鬱を抱えこんでしまうし、
ポールの抑えていた悪心に火をつけてしまう。
カルラは、難聴という障害を持ちながらも、土地開発の会社で忙しく働く30代半ばの女性。
これまで、さまざまな辛酸を嘗めてきただろう苦労人の顔をしている。
だからだろうか、彼女の倫理観は薄い。
職業安定所で自分のアシスタントに若い男を募集し、ムショ帰りと知りながら一存で雇い、
同僚の書類を盗むように頼みこむ。
そのアシスタントのポールが会社にこっそりと寝泊まりするのは、巻き込まれる可能性があるからノーだけど
会社絡みの建設中物件に勝手に住まわせるのは、バレないからオーケー。
一見むちゃくちゃに思えるけれど、人生の早い段階から孤独に呑み込まれてきたのだろう。
常にひとりで決め、ひとりで行動するカルラ。自分の中にしかルールは無い。
借金のかたにナイトクラブでタダ働きさせられることになったポールは、カルラのアシスタントを辞めるが
ボスの部屋が屋上から覗き込めることを知り、カルラに読唇術で会話を読み取るよう、頼む込む。
分け前はやる、というポールに対し、カルラはお金はいらないと言う。
その代わりに、出社して、とポールに条件をだす。
カルラなにやってんの、もう。痛々しいよ。
ここまで一人でやってきて、今さら男に依存していくなんて。
2人が惹かれ合っているのはわかるけど、お互いにとって利用価値があるからというのも否めない。
それでも、必死につながりを求めるカルラの姿に、希望を感じるのは、なぜだろう。