Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

LONDON CALLING/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー

2012年08月10日 | ロック映画、映像

LONDON CALLING/ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー
(原題:JOE STRUMMER:THE FUTURE IS UNWRITTEN)

2006年 アイルランド=イギリス
監督:ジュリアン・テンプル

BBCワールド・サービスのラジオ番組「Joe Strummer's London Calling」で
DJを務めるジョー・ストラマーが曲を紹介する。
キャンプファイヤーの片隅に置かれたラジオから音楽が流れはじめる。
火を囲んでいる人々はそれに合わせて唄ったり、話したり、微笑みあったり。

彼らは、ジョーの家族や元メンバーたち、友人やジョーに魅せられ慕ってきた人々、
歴代の恋人たちもが顔を揃えている。

外交官の父、看護師の母の間に生まれたジョー。
父の海外転勤にともない、幼少期は各地を転々としていたらしい。
学校にあがるようになると、兄弟2人で寄宿舎で暮らすが
兄は在学中に自殺してしまう。

当時の仲間たちが口々に若き日のジョーの姿を描き出す。
1975年に通名をジョー・ストラマーに改め、バンド「The 101'ers」 で精力的に活動していた頃は
傲慢で独善的。熱情的に誰もを惹きつけ、撥ねつけ、また惹き寄せた。
翌年にはセックス・ピストルズのパフォーマンスに強い衝撃を受け「ザ・クラッシュ」を結成し
新たな衝撃と影響を世界中へと与えていく。

U2 のボノ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー、ジョニー・デップ、マット・ディロン等々
錚々たるメンツがその衝撃について振り返る。
キャンプファイヤーの炎がつくりだす光と影に揺らされながら。

1985年のクラッシュ解散後は、数々の映画への楽曲提供や、他ミュージシャンのプロデュースを務めた。
商業的な成功はなく、レコード会社の契約に縛られ、彼自身「荒野の数年間」と評した時代を経て、
90年代半ばに「ザ・メスカレロス」を結成。
再び水を得て泳ぎだした彼が迎える2002年の突然の死まで。写真や映像、近しい人たちの言葉を
つづれ織りに、彼の姿を浮かび上がらせる。

ジョーがグラストンベリーで始めたキャンプファイヤー・イベントは、立場を超えて誰もが集える。
彼は集まった人の食べ物や寝る場所を心配してばかりいたという。
社会の矛盾を若者たちに突きつけ、叱咤し、ぐわんぐわんと世界中を揺り動かしたジョーは、その実
そこにいる人々の幸せを誰よりも強く願っていた。

ジョーの親しい友人であった監督のジュリアン・テンプルが描くのは、失われた物語ではない。
ジョー・ストラマーという唯一無二のロックンローラーが紬ぎだした世界と燃え続ける炎。
今も、彼の音楽を聴く世界中の人の胸をちりちりと熱く、焦がし続けている。