Kimama Cinema

観た映画の気ままな覚え書き

黄金のメロディ~マッスル・ショールズ~

2014年08月24日 | ロック映画、映像

黄金のメロディ~マッスル・ショールズ~(MUSCLE SHOALS)


2013年 アメリカ
監督:グレッグ・フレディ・キャマリア
製作:ステファン・バッガー 、グレッグ・フレディ・キャマリア
出演:リック・ホール 、アレサ・フランクリン、ミック・ジャガー 、キース・リチャーズ、ボノ、
スティーブ・ウィンウッド、グレッグ・オールマン


 アメリカの片田舎マッスルショールズに建てられた小さな2つのスタジオが60年代から70年代にかけての
ソウルミュージック黄金期を産み出していった舞台裏をひも解くドキュメンタリー。

 プロデューサーのリック・ホールは1961年にテネシー川沿いに「フェイム・スタジオ」を建て、
リズム隊のバンドを入れて、ヒット曲を次々に録音していく。その音に魅せられ、大物アーティスト達が
スタジオを訪れ、スタジオミュージシャンが白人だったことに驚きを隠せなかったという。

 都会のスタジオでは、アーティストが曲をすべて仕上げて持っていき、スタジオミュージシャンは楽譜を
前に録音するというのが一般的なスタイルに対して、フェイムでは即興でセッションを繰り返しながら
一緒に曲を練り上げていく。形式に囚われず、思いっきり音楽をやる!というバンドの情熱と、
アーティスト達が負けじと放つパワーにさまざまな化学反応が起こり、名演奏が引き出されていく。

 フェイム・スタジオで鳴らしたリズム隊はいつしか成長し、独立して自分たちのスタジオを建てる
までになるが、リックとは戦争状態に。裏切られた気持ちの強いリックはあの手この手で新人を発掘し
更なる濃密なスタジオを作っていこうと躍起になる。このリックが極貧の中で育って来た環境も描かれるが
家族との別れを語るシーンが辛くって、それに伴う孤独感は堪え難い。

 一方、自分たちのマッスル・ショールズ・サウンドスタジオを造ったスワンパーズは
ザ・ローリング・ストーンズの名盤「スティッキー・フィンガーズ」収録の3曲「ブラウン・シュガー」
「ワイルド・ホース」「ユー・ガッタ・ムーヴ」を収録するなど、ファンキーな演奏を繰り出していく。

 このドキュメンタリーで数々のアーティストがインタビューに応えている様子は、みんな目をキラキラと
輝かせていて、マッスル・ショールズにかかるボルテージは他のものとは違うなという印象。
 ミックは満面の笑みで(いい子バージョンじゃないやつ)、キースも話が止まらないといった感だ。

 特に、私が気になったのは、後にオールマン・ブラザーズ・バンドを結成する故デュアン・オールマンに
まつわるインタビュー。
 彼がフェイムでスタジオミュージシャンをしていたのは、ウィルソン・ピケットの録音のためにリックから
アプローチしてデュアンを雇い入れたという呈だったのが、今回のインタビューの中でリックは「変な奴が
スタジオの扉に座り込んでて」仕方ないから、的な感じで話している。
 
 こんな格好で、ギター1本を裸で抱えて、ぐでんぐでんに酔っぱらって座り込んでてほしい、というかイメージ。

 グレッグ・オールマンが語る、デュアンが「俺が抜けてやるよ」と言って、弟から離れていった話も泣けるし、
人種差別が当たり前の時代にあってどんなに批判されても黒人と同じ釜の飯を食べて来た同僚たちにさえ、
「黒人といるより、長髪のヒッピーと一緒に居る方が変な目で見られるよ」とさんざんに言われてて。
 踏んだりけったりのデュアン。もう母性本能どんだけくすぐるんだって、話ですよ。

 貴重なインタビューや映像、写真が見れて、興奮しきりのドキュメンタリーだった。
 幾多の名盤をプロデュースしてきた魔法使いリック・ホールが、最後に種明かしをしてくれる。
 最終的には、人間らしさが力になるってこと。人間らしさっていうのは、不完全な部分を含んでいて、音楽には
それが必要なんだって。その考え方に深く頷いた。
 そして、完璧主義者の目指す不完全さは終わりがないわけだ、と思った。


ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987

2014年01月21日 | ロック映画、映像

「ベイビー大丈夫かっ BEATCHILD1987」

2013年 日本
監督:佐藤輝


1987年8月、熊本県阿蘇で開催された日本初のオールナイト・ロックフェスティバルを追ったドキュメンタリー。
しかし収められているのは、ただのライブ画像ではない。
これを観ると、日本って凄いなと色んな意味で感じられる。

THE BLUE HEARTS、RED WARRIERS、岡村靖幸、HOUND DOG、BOØWY 、尾崎豊、佐野元春・・・
と蒼々たるロックスターが出演した「BEAT CHILD」には、予定数を遥かに超える約7万2千人の観客が集まった。
その開演前に突然の豪雨が襲い、草地の会場をぬかるみにし、ライブ前の興奮に包まれた観客たちをひどい勢いで打ち付けていった。
イベントが中止になってしまうのではないか、不安な表情の人々も少なくない。
スタッフも雨の中での機材搬入や送り迎えに時間をとられ、てんやわんやだった。

そんな中、会場に到着した甲本ヒロトは「おい、最高だな♪」と満面の笑顔。
間違いなく会場の誰よりもテンションが高く、この人がすべての雰囲気を変えていく。
楽屋でも「うわあ、すごい雨だな!」「今日は盛り上がるな!!」と本当に嬉しそうだ。
まだオープニングだからとか、この後の記録的豪雨を知らないからとか、そういう問題じゃない。
たとえば世界中がどしゃぶりの雨だろうとゲラゲラ笑えるんだ。 
ヒロトの盛り上がるな!の言葉通り、THE BLUE HEARTSのステージが始まると7万人が息を吹き返し、踊り狂った。

しかし雨はさらに強さを増し、岡村靖幸がステージに立つ頃には、歓声をあげる観客の姿も、雨と雷と闇に紛れて目では見ることができなくなってしまう。

豪雨によって何度となく機材のセッティングが立ち往生し、約1時間半遅れの状態で白井貴子がステージに立った。
こわばる表情を隠して、必死の笑顔を振りまく。
ギターがイカれて鳴らなくなっても、バンドが奥に引っ込んでも、一人きりで広いステージを走り回り、笑顔、笑顔、笑顔。
渡辺美里のような圧倒的なパワーではない。けれど、気迫のこもったステージだった。
なんていうか、奮い立たされずにはいられない。

雨粒まみれの映像をずっと観ているうちに、自分自身も雨に打たれているような感覚に陥る。
身体は冷え、心は燃えている。
HOUND DOGもBOØWYも渾身のパフォーマンスだった!
どしゃ降りの雨ゆえに引き出され、むき出しになる。

大雨警報が出され、記録的な豪雨の中で始まった尾崎豊のステージも凄まじかった。
体調不良で倒れる人が続出し、救急車がひっきりなしに病人を搬送している。
混沌を極める中で、雨にまみれ、水たまりに突っ伏していく尾崎の姿。
激しい歌声に胸をうたれるが、それとは全く逆に好天で行われた前日リハーサルの際のくだけた表情も印象的。

そして、やっとやっと雨は止み、大雨と泥濘とロックンロールに包まれた長い夜が明ける。
佐野元春の「SOMEDAY」が会場一帯に、みんなの心に響き渡る。
なんていう泥の中の大団円!
しかもプロデューサーの春名さんのオチ!つき。

いやあ、凄いなあ。
過酷を極める状態だったとは思うけど、そこに居た人たちを羨ましくも思う。
音楽はやっぱり魂で聴くもんだなあ。

バックコーラスの歌姫たち

2014年01月12日 | ロック映画、映像

バックコーラスの歌姫たち(原題:20 Feet from Stardom)

2013年 アメリカ
監督:モーガン・ネビル
製作:ギル・フリーゼン、ケイトリン・ロジャース
出演:ダーレン・ラブ、メリー・クレイトン、ジュディス・ヒル、リサ・フィッシャー、クラウディア・リニア、タタ・ヴェガ

冒頭で、ブルース・スプリングスティーンが言う。
「メインシンガーとバックコーラスとの距離は短いようだけど、長い。
それを縮めるのは、数歩の距離だけど難しい。」
そこから、つけられたであろうタイトルは「20 Feet from Stardom」
名だたるロックスター達のバックコーラスを務めてきた女性達のインタビュー&過去映像のドキュメンタリー。

ミック・ジャガー、スティング、シェリル・クロウ、ベット・ミドラー等、といったトップミュージシャン達から見た
バックシンガーへのコメントも寄せられ、レコーディング風景や往年の秘蔵画像などもあり、わくわくしながら見た。

エルビス・プレスリー、フランク・シナトラ、サム・クックらのバックコーラスを務めた大ベテラン、
ダーレン・ラヴは、別の歌手がリリースする歌をスタジオで録音させられる不当な扱いが続き、
一時は音楽の世界を諦めて、ハウスキーパーとして働いていたことも。
掃除中にラジオから流れてきた自分の曲「クリスマス」を耳にして「世界は私を待ってるんだわ」と復帰を決める!

レイ・チャールズのバックコーラス隊として活躍したメリー・クレイトンは、その孤高の存在感で、
キャロル・キングのアルバム「つづれおり」、レーナード・スキナードの「スウィート・ホーム・アラバマ」等
名作を彩ってきた。
なかでもローリング・ストーンズ「ギミー・シェルター」でのコーラスパートが印象的。
録音当時は、真夜中に急に呼び出されて、パジャマ姿にコート羽織って、カーラー巻いた頭をスカーフで
隠して向かったらしい。
スタジオで手渡されたのは「強姦、殺人、目の前で始ろうとしている」という扇情的な歌詞。
何よ、コレ! こんなのワンオクターブ高い声で唄ってやるわよ、とブッ放った歌声が、
現在の彼女のインタビューにかぶって、「どう?」というメリー・クレイトンの満足げな表情といったら。

80年代からずっと、今も第一線で活躍し続けるリサ・フィッシャーは、充分な実力を持ち
91年にはソロとしてグラミー賞に輝き、どの道でも選べるとされながらも、バックシンガーとして生きることを選んだ。
確かにリサ・フィッシャーの技量は、素晴らしい以外無い。
ただ「メインステージに立てるかどうかは、技術じゃなく、強さだ」と言うブルースの言葉は
彼女にピッタリじゃないかと思う。
ずっとソロでやっていくには、彼女は優しすぎる、でもだからこそ、人と寄り添えるのだ。

マイケル・ジャクソン追悼式典で「ヒール・ザ・ワールド」を唄い、一躍世界から注目を集めた
ジュディス・ヒルは、バックシンガーからソロ歌手へと変貌を遂げる。
しかしそれ以降に、カイリー・ミノーグやスティーヴィー・ワンダーのバックコーラスを務めたところ、
ファンの一部から非難されるも「ばれちゃった?」とツイート。
バックコーラスは今の副業と言いきる彼女のしたたかさは見事。

これほどにバックシンガー達がメイン歌手との差を感じ、辛酸をなめてきたなんて、意外だった。
今まであえてフューチャーはされてこなかったけど、光の当たらない道だなんて。
同性の私からしたら、特に感受性の強い中高生の頃には
大好きなバンドの曲に、女の人の声が絡んでくると、それはジェラシーの対象だった。
コーラス部分はとにかく妬ましくて、痛いくらいの想いで、全身を耳にして聞いていた。

メインステージから約6mの距離、そこからの物語の数々を感じることができた。
ラストに、ダーレン・ラヴがメインヴォーカルで、リサ・フィッシャーやジュディス・ヒル、ジョー・ローリーが
バックコーラスを入れる「リーン・オン・ミー」のスタジオライブが流れ、胸が熱くなる。
見て良かったぁと思ってると・・・
エンドロールで、ブルース・スプリングスティーンがバックコーラスにまわってるのがまた、かっこいい!
最後に持ってくんだもんなあ。

ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト

2014年01月07日 | ロック映画、映像

ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト(原題:SHINE A LIGHT)

2008年 アメリカ
監督:マーティン・スコセッシ

2006年の秋にニューヨークのビーゴン・シアターで行われたザ・ローリング・ストーンズのライブを収めたドキュメンタリー。

冒頭には、ロンドンで打ち合わせ中のミック・ジャガー。
ニューヨークで現地調査をしているプロデューサー。
ライブのセッティングにまつわる細々が映し出される。
セットリストがなかなか決まってこないとか、カメラ位置がどうとか。
そんなことより早くライブを見せろよっと思うのだけどなかなかライブシーンに行きません。
正直言ってウザい(笑)。監督も某大統領もいらないよ、と思います。

このナンダカンダを乗り越えて、ステージに走り出て来たミック・ジャガーの
登場っぷりったらないです。すべてを撥ね除けてグンと迫ってくる! かっこいい!!
これも演出なのかな。
ダンプカーの豪快な走りを魅せるために砂利道に大きめの石を敷いておくみたいな?

相当こだわってるだけあって、カメラアングルもなかなかのもの。
臨場感があって、まるでステージの上に立ってライブを見ているみたい!
ストーンズの演奏はもちろん、ジャック・ホワイト、バディ・ガイ、クリスティーナ・アギレラといったゲスト陣もむちゃくちゃ良いです。

パフォーマンスの途中では、前後脈略無くインタビューが差し込まれます。
雑多すぎる印象もあるのだけどキースとロニーのやり取りは秀逸☆
インタビュアー「どっちが上手?」
ロニー「当然、僕だよ!!」
キース「奴はそう言うのはわかってたよ」
「でも事実としては、2人とも下手だが一緒なら、最強!」
キースのコメントの決め台詞は、いつだってかっこ良すぎる(涙)。

なんといっても素晴らしいのは、疎外感が無いこと。
普通ライブビデオには、「これを実際に生で観たかった」という印象がつきまとうものなのに、
この1本を見終わっての感想は満足しかない!!
その場に居た観客たちとも、感動を分かち合いたい気持ちでいっぱいになる。

ロックンロール・ハイスクール

2013年11月13日 | ロック映画、映像

ロックンロール・ハイスクール(原題:ROCK'N ROLL HIGH SCHOOL)

1979年 アメリカ
監督:アラン・アーカッシュ
製作:マイケル・フィネル
製作総指揮:ロジャー・コーマン
脚本:ジョセフ・マクブライド
出演:P・J・ソールズ、ヴィンセント・ヴァン・パタン、メアリー・ウォロノフ、ポール・バーテル
クリント・ハワード、ディック・ミラー、デイ・ヤング、
&ラモーンズ!

ラモーンズ好きにはたまらない、爆裂ライブ映像も入った学園コメディ。
はじめっからスタンディングでノリノリで観ても楽しいかも!!

ラモーンズの大ファンの女子高生と、ロックを諸悪の根源とする女校長が学園中を巻き込んで
上へ下へと大騒ぎ。
ま、女子高生・・・というか、この時すでに27~28歳のP・J・ソールズ。
年齢は、はじけんばかりの笑顔でぶっ飛ばしてます☆
ラモーンズが最高!ラモーンズがすべて!!っていうのをバッチリ体現。

そんな彼女に答えて、ラモーンズのメンバーも学園にも乗り込み、大活躍します。
学生闘争としては過激な場面もありますが、B級映画としてはアリ。
コネタもたっぷり挟んでいて面白いです。
わたしとしては、女校長の手先の2人組小太りのおっちゃん達がヘンデルとグレーテルという
名前だということがグッジョブでした♪